2022年6月9日

アサヒコ豆腐バー、大ヒットの背景とは。サラダチキンの隣に陳列し“植物性タンパク質”をアピール

 コンビニで買える高タンパク質な食べ物といえばサラダチキン、または「SAVAS(ザバス)」。今でこそプロテインバーや高タンパク食品が多く展開されていますが、少し前まではサラダチキン一強時代が続いていました。

 そのような中で、さりげなくサラダチキンの隣に置かれ、大好評となった商品があります。株式会社アサヒコの「たんぱく質10gの豆腐バー」です。豆腐に含まれる植物性タンパク質を前面に押し出したこの商品は、発売から約1年で1000万本を突破し、コンビニプロテインの選択肢をさらに広げてくれました。

 そんなアサヒコ豆腐バーは、どのような背景から生まれた商品なのでしょうか。2022年6月7日(火)に行われた新作発表会の内容含め、開発秘話をお届けします。

縮小し続ける日本の豆腐業界

 日本のソウルフードである豆腐ですが、国内における豆腐市場は年々縮小し続けていました。その主な理由として、株式会社アサヒコ プラントフォワード事業部部長 兼 マーケティング室長の池田未央(いけだ・みお)さんは、次の3つを挙げています。

  • 調理のマンネリ化
  • 消費者の調理離れ
  • 購入層の高齢化

 まずは「調理のマンネリ化」。嗜好が多様化するなかで利用頻度が低下したこと。次に「消費者の調理離れ」。若年層は調理スキルが低く、共働き世代は調理時間がとれない、シニア層は料理をする気力・体力が低下しています。最後は「購入層の高齢化」。豆腐を購入するメイン層が高齢化し、消費量が減少していることを、豆腐市場縮小化の要因として挙げています。

 一方、アメリカなど海外では豆腐市場が伸長しており、「TOFU」は植物性タンパク質が摂取できるヘルシーフードとして確固たる地位を作り上げています。

 タンパク質市場は拡大を続けており、10年間で3倍、コロナ太りや運動不足解消で需要がさらに増加しています。拡大し続けるタンパク質市場を見た池田さんは、豆腐の持つ良質な植物性タンパク質にニーズがあると読み「提案の仕方を変えればチャンスはあるのでは」と考え、タンパク質という視点から豆腐を見直すことにしたそう。

 また、2050年ごろまでに訪れるとされる「タンパク質危機(※)」。タンパク質を摂れる人、摂れない人が出てくる“タンパク質格差社会”を危惧した池田さんは、これまで培ってきた大豆加工技術などを利用して対策できないかと考え、豆腐バーや大豆ミートといったTOFFU PROTEINシリーズの開発を行うプラントフォワード事業部がスタートしたそうです。

(※)タンパク質危機とは
タンパク質の需要と供給のバランスが崩れ始めるタイミングのこと。国際連合食糧農業機関(FAO)によると、2050年には世界人口の増加と新興国の肉食化により肉の供給不足が起こり、環境負荷の増大とタンパク質を摂取できない人の健康リスクが高まると懸念されている。

 いらないものを“OFF”しつつ、植物性タンパク質を“IN”する。アサヒコTOFFU PROTEINシリーズは、迫りくるタンパク質格差社会に備えるべく誕生しました。

大ヒットした「たんぱく質10gの豆腐バー」

 先述の通り、豆腐の持つ植物性タンパク質に着目し開発した「たんぱく質10gの豆腐バー」は、発売から約1年で1000万本を突破する大ヒット商品となりました。

 それまでの豆腐のおもな購入層は、60~70代が多く、男女比でいうと女性が多めでしたが、豆腐バーはコンビニ展開ということもあり、40代以上の男女がメイン購入層に。しかも通常の豆腐に比べると、購入者は男性比率が多くなっているとのこと。

 汁もなく、パッケージを剥くだけで食べられる利便性の高さも、幅広い層に受け入れられやすいのではと考えられます。

アサヒコの提案「タンパク質ダイバーシティ(多様性)」

 さらに同社は、開発した商品をより多くの人にとり入れてもらうために「タンパク質のダイバーシティ(多様性)」を提案しています。その内容は以下の3つ。

1.たんぱく質の選択肢を増やす

 たとえば豆腐バー。サラダチキンの隣に陳列させることでユーザーの目に留まらせ、動物性タンパク質のほかに植物性タンパク質という選択肢も提案しました。

 通常の絹ごし豆腐の2.7倍のタンパク質を含み、パッケージを剥けばすぐに食べられるという点も、ヒットの要因と考えられています。

2.メニューの選択肢を増やす

 タンパク質市場は拡大しているものの、日本人のタンパク質摂取には課題があると池田さんは語ります。

「まずは“タンパク質の量”の問題です。1日に50~60gのタンパク質を摂るのがよいということで、毎食ごとに約20gのタンパク質をコンスタントに摂ることが理想とされていますが、どうしても朝と昼は炭水化物メインでタンパク質が不足し、夜にドカッとたくさん摂るという状況になっています。“たんぱく質の質”という部分でも、動物性が6、植物性が4という割合で、少し動物性タンパク質に偏っているという摂り方になっています。こうした部分の改善の機会も提案できればと思っています」

 そのため、TOFFU PROTEINは前菜からデザートまで幅広いラインナップを展開し、メニューの選択肢を広げるお手伝いが可能となっています。

3.オケージョンの選択肢を増やす

 自宅だけではなく、外食でも気軽に植物性タンパク質を摂取できるように、選択肢を増やしたい。そんな思いから「やよい軒」とコラボメニューを開発し、やよい軒の人気メニュー3種において、普通のお肉に加えてアサヒコの大豆ミートを選べるようになっています。

TOFFU PROTEINの今後の展開

 勢いを増すTOFFU PROTEIN、豆腐バーの新フレーバーや新商品開発が続きます。

豆腐バーに新味が登場

 製造ライン強化にともない、2022年6月1日より新フレーバーも登場しています。『旨み昆布』と『バジルソルト風味』は味つけにも動物性原料を使用していないため、ヴィーガンなど食の多様性にも対応できます。

 なお、今までの豆腐バーもセブンプレミアムから販売を行いつつ、今回2商品はナショナルブランドということで、コンビニ以外でもスーパーなど販路拡大が予定されているそう。

生ハム巻き。水切りの必要がないためアレンジもしやすい

中華グルメも開発。第一弾は餃子とシュウマイ

 中華グルメも新開発されています。日本食研食未来研究室の調査によると、食卓に出る頻度は高いものの、植物化が進んでいないメニューが「餃子」と「シュウマイ」でした。選択肢として提案できていないその部分に着目した同社は、“豆腐のお肉”を使って商品開発を行い、ほとんどお肉と変わらない味と食感、香りを実現したといいます。

 新作発表会にてシュウマイを試食してみたのですが、普通のものとまったく変わりなく、大変驚きました。新商品の『豆腐のお肉 餃子』と『豆腐のお肉 焼売』は2022年秋に全国発売を予定しています。

関連:「やよい軒」、 “次世代肉”を使った定食発売へ。大豆ミートで食の選択肢を増やす狙い

<Text&Photo:編集部>