サウナの効果と入り方、守ってほしいマナーとは。日本サウナ学会の医学博士に聞いてみた(前編) (3/4)
サウナの正しい入り方
──ここからは、サウナの入り方と注意したいポイントなどを聞いていきます。まずは、サウナに入る前に行うとよいこととは。
「水分補給と自分の体調を把握することです」(加藤先生)
──基本の入り方は。
「サウナに入って、水風呂に入って、休憩をする。これを大体3周ぐらい行うというのが一般的なやり方です」(加藤先生)
──どのくらいサウナ室に入っていればよいのでしょうか。また水風呂は。
「とくに決まりはなくて、暑ければ出ればよいです。水風呂はだいたい20~30秒から最大1分ぐらいで、休憩はたっぷりという感じでしょうか。少なくともサウナ室に入っている時間よりも長くという感じです。サウナは個人差が大きいんですよね。その人やその日の体調、サウナ室の形式によって大きく変わるので、あまり一概には言えないかなと思います。やっぱり暑くなったら無理せずに出るというのが基本的な入り方かなと」(加藤先生)
──そういえば、サウナ室のどこに座ればいいのでしょうか。施設によっては段差などもあります。
「基本的には上に行けば行くほど暑くて、下に行けば行くほど温度が下がっていくので、その日の体調や好みに応じて、あまりつらくないところを選択するのがよいと思います。段差がなくてもサウナストーブが近いところは輻射熱で少し暑かったり、吸気と排気のところで空気の気流ができるので、排気口のところはやや暑かったりします」(加藤先生)
──サウナから出た後に行うとよいこととは。
「水分補給を行う、体が落ち着くまできちんと休むことです」(加藤先生)
──ちなみに『こんな状態になったらサウナ室から出たほうがいい』という基準はありますか?
「基準はなく、暑かったら出てくださいということですね。あとは身体に変調をきたしたら、もちろんすぐ出たほうがいいですね」(加藤先生)
──ちなみに私の場合ですと、サウナ室に入ると1分後にはもう耐えがたく感じてしまうのですが、1分ぐらいで出ても大丈夫でしょうか。
「なぜそう感じるかというと、とくに女性の場合だと顕著なのですが、女性のほうが熱を感じやすいんですね。体に暑さを感じるセンサーの感度が違っていまして。顔とか手とか足というのはすごく敏感で、暑さを感じやすいところなんです。サウナ室って、顔が一番熱い部分にあるじゃないですか、一番上なので。一番暑く感じやすい部位が暑い場所にあるので顔がほてってしまうんですね。なので、顔を乾いたタオルで覆うことがオススメです。髪の毛だけではなくて、顔の面の部分です。ここを乾いたタオルで覆うと、ストレスホルモンの上昇が抑えられるという論文があるので、とくに女性にはオススメです」(加藤先生)
──顔にタオルをかけている人は上級者なのかと思っていました。余計に暑くなるのかなと。
「めちゃくちゃ楽です。濡れタオルだと、最初はいいのですがだんだんと余計に暑くなってきます。なので乾いているタオルがよいです。よく絞ったほうがいいですね。濡れているタオルだと、最初は冷たくて気持ちいいのですが、どんどん暑くなってきます」(加藤先生)
──あと、水風呂が冷たすぎて入れないのですが、なにか対策方法はありますか?
「多分、体が温まってないのだと思います。さっき1分くらいで暑くて出てしまうとのことでしたが、体がきちんと温まってないうえ一番温まってない足から水風呂に入るので、しんどく感じてしまう。体をじっくり温めるといいですよ。いかにやさしく、しんどく感じずに体全体を温められるかというのが大事です。体全体を温められると、水風呂がありがたいものになってきますよ」(加藤先生)
──先ほど聞いた、顔にドライタオルを乗せて試してみます。
「あと、身体を慣らすというのも大事ですね。最初は温度調節ができるシャワーとかで体を慣らして、次はちょっと膝まで、次は胸までとか、だんだん冷水に体を慣らしながら入ると良いと思います」(加藤先生)
サウナは1日何回まで? 毎日入ってもOK?
──サウナは1日何回までが適切でしょうか。また、毎日入っても問題ありませんか?
「先ほどお伝えした、女性のストレスホルモン上昇の研究では、1日2回、1回あたり1時間、毎日入ると、7人中5人が月経不順になるという結果が出ています。毎日1日2回は明らかに入りすぎなので、1日1回でいいんじゃないかなと思います。朝サウナと夜サウナをやる人もいるかと思いますが、朝サウナはフルセット入らず1セット短めという入り方が基本なので、そういうどちらか片方がすごく短いという入り方でやるのはいいかなと思います。朝晩フルセットで毎日入ってしまうのは明らかに入りすぎですね。ちなみに病気の予防効果という面で一番恩恵が大きいのが、週に4~7回でした。つまり1日1回までなら体にいいというデータが出ているという状況です」(加藤先生)
──やる人は少ないと思いますが、女性の場合、生理中にタンポンを入れてサウナに入るというのもNGでしょうか。
「生理中はやめた方がいいですね。衛生的によくないですし、100%防げるわけでもないと思いますので。体調的にも不安定な時期なので、そういうときに入ると失神する危険性もあります」(加藤先生)
──ちなみに意識が飛んでしまった人を見た場合、まず何をすればよいでしょうか。
「暑いところから出し、呼吸をしているかどうか確認します。呼吸をしていなかったら、すぐに心肺蘇生をします。まわりの人を呼び、救急車を呼んでください。その間にAED(自動体外式除細動器)を持ってきてもらい、使うという感じですね」(加藤先生)
──ちなみに男性は月経がないのですが、入りすぎによる男性ならではの不具合とかはあるのでしょうか。
「男性は、基本的に症状としては現れづらいですね。精子の数が減るとかそういうことを想像するかもしれませんが、実際にはそれほど減らないです。ちょっとだけ減りますけれど。実際、毎日サウナに入るフィンランド人男性も多いですが、フィンランド人の人口は減っていませんし、さほどの影響はないと考えられます。日常生活のいろいろなパラメーターと精子の数や質を比較した論文がありまして、その中でもっとも精子への影響が大きかったのは、ピチピチのパンツを履いていたときです。風通しが悪いパンツを履くと精巣の温度が上がってしまい、そちらのほうがサウナよりよほど精子に対するダメージが大きいという結果でした。男性はサウナによる悪影響が現れにくいので、自分で調整しないと体に悪いということに気づきにくくなります。そのため、より深刻というか、注意しないといけない」(加藤先生)