インタビュー
2022年9月29日

サウナの「ととのう」ってどういう状態?ととのうためのポイントとは。日本サウナ学会の医学博士に聞いてみた(後編)

 前編では、サウナで期待できる効果と入り方について解説しました。引き続き、サウナ学会理事をつとめる医師・医学博士の加藤容崇(かとう・やすたか)先生にお話を伺い、いよいよサウナの「ととのう」についてくわしく聞いていきます。また、ととのわない人へのアドバイスや、空いているサウナ施設の探し方なども解説していきます。


[教えてくれたのは]
加藤 容崇(かとう・やすたか)
日本サウナ学会代表理事、医師・医学博士 専門は癌ゲノム医療と癌研究。予防医療の重要性から、第二の専門として、サウナをはじめとする世界中の健康習慣を最新の科学で解析し、発信していく「日本サウナ学会」を設立し、代表理事として活動している。

話題のワード『ととのう』とは

──サウナ用語でよく聞く『ととのう』とは、どのような状態を指すのでしょうか。

「感覚的な言葉でいうと、深くリラックスしているにも関わらず、眠いわけではなくて頭がすっきりしている、優れているような状態ですね。普通、リラックスすると眠くなる、いわゆるまったりするという状態になると思うのですが、サウナ後というのはあまりそういう感じではなくて、わりとシャキッとした感じになります」(加藤先生)

──サウナに入らず、『ととのう』に似た状態を体験することはできますか?

「日常ではほぼなくて、だからこそサウナでととのうという状態が特殊なのですが、強いて挙げるとするなら、瞑想状態、あるいはアスリートの『ゾーン』に近い状態でしょうか」(加藤先生)

──サウナでしか体験できない特殊な状態。これはぜひ体験してみたい。ちなみに『ととのう』と、どういうメリットがあるのでしょうか。

「ただ気持ちいいというだけですね。『ととのう』という言葉の定義がまだ明確にされていないのでその定義にもよりますが、たとえば危険な『ととのう』、失神前のふらふらの状態みたいなものを『ととのう』と言っている人もいて、それは結構危ないと思っています。それ以上追い込むと倒れてしまいますので」(加藤先生)

──たしかに、『ととのう』の定義は各自で異なりそうです。他者の感覚は共有できませんしね。

「『ととのう』というのがどういう状態かというと、自律神経の機能がすごく活性化しているような状態、倒れるのと逆の状態というのが、一番いい状態なんじゃないかなと思っています。要するに『ととのう』と何がいいかというと、自律神経がすごく元気になります。快適に日常生活が送れるようになるということに繋がります」(加藤先生)

──ちなみに、サウナに入っても『ととのう』体験を実感したことがない人もいるようです。『ととのう』ためのポイントというものはあるのでしょうか。

「今のところ大きいファクターとしては、空いている施設に行くというのがおすすめです。混み過ぎているといろいろと気にしなければいけないポイントが増え、リラックスどころではなくなってしまうんですね。座るところがなかったり、水風呂が混んでいたり。サウナ室が空くのをずっと待っていて、お風呂の中でゆだってしまうとか。そういう事態を防ぐためにも、やはり空いている施設を選ぶのがいいのかなと思います。僕も空いているサウナしか行きません。よくサウナ好きがやってしまうのが、お気に入りの施設に電話をかけちゃうんですよね。今の時間どうですかと。でも、それをやってしまうと施設側は人員がとられて困ります。ホームページとかに混雑具合を載せている施設もありますが、ホームページを見るのもちょっとめんどくさいし、Twitterでいま空いているから来てくださいとツイートする施設もありますが、みんな一斉にそれを見て行くと、結局ものすごく混んでたりとか、最悪なことが起こったりします」(加藤先生)

──非常にわかります。結局、混雑を避けたくて有給をとって行ったり、朝イチで向かったり。

「そこで、サウナの混雑状況がリアルタイムで分かる『サの国』というアプリを作って無料公開しています。サウナ室内にセンサーを置いて、混み具合がリアルタイムでわかるというアプリです。こういうのを参考にしていただいて、空いているところを狙って行けばゆっくりできるので、ととのえるんじゃないかなと」(加藤先生)

加藤先生が監修した『サの国』

──神アプリが無料で! これはダウンロードしているサウナ民も多そうですね。

「空いている施設に行くというのは、コロナ対策という面でもすごく大事ですね。混んでいる施設ですと、やっぱりくしゃみやおしゃべりをする人もいるため、不安に思う人も多いと思います。適切な密度といいますか、あまり混んでいないところに行くというのがまずは大事かなと思います」(加藤先生)

──ほかに『ととのう』ために意識したいポイントはありますか?

「2点目としては、激しすぎる温度設定の施設に行かないということです。激しすぎる水風呂というのは、たとえば『シングル(グルシン)』と呼ばれる一桁台の水温のサウナを指します。これは玄人向けのセッティングで、普通のサウナで飽き足らなくなった人が行くところで、初心者がいきなり行くと体の負担が大きすぎます。フラフラになってしまい、誤ったととのうに繋がります」(加藤先生)

──やはり施設によって、初心者にもおすすめ、玄人向けなどの傾向があるのですね。

「玄人の先輩にいいところがあるからって連れて行かれて、すごくしんどい思いをして、逆に行きたくなくなってしまうという人もいます。なので、初心者はマイルドな温度、少なくとも16度以上の水温のところがよいでしょう。だいたい17~18度ぐらいがビギナーにもおすすめです。あとは、サウナ室の温度。120度、130度みたいな暑すぎるドライサウナとか、激しくロウリュしてブロワーで空気を送り込まれるとか、そういう施設は最初はおすすめできないですね。初心者は、ある程度の湿度があり、男性であれば85度~90度、女性であれば80度~85度ぐらいで、ある程度湿度のあるサウナ室を選ぶのがいいかなと思います」(加藤先生)

──はじめてのサウナでしんどい思いをしたら、トラウマになってしまいそうです。ほかに意識したい点はありますか?

「休憩する椅子がきちんと置いてある施設に行くというのも、ポイントのひとつです」(加藤先生)

──サウナのイス(休憩場所)がない施設もあるのですか?

「はい、結構多いですね。とくにジムについているサウナとかだと、水風呂や休憩する椅子がないことも。そういう施設かどうかというのも、先ほど紹介したアプリ『サの国』ですべて確認できるので、事前に確認してから行くのも大事です」(加藤先生)

──サウナがついているのが決め手でジムに入会したものの、いつもまあまあ混んでいるし、休憩するところはないか、あるいは脱衣場のベンチも空いていないということは体験しました。空いている施設に行く、激しい温度の施設は避ける、そして休憩スペースがある施設を選ぶ。行動としてはこの3点ですが、『ととのう』ための精神的なアドバイスがあればお願いします。

「リラックスするとよいですね。無理やりととのえにいく必要はありません。僕は『ととのう』を数値化していまして、自律神経をリアルタイムで測り、一番ととのう入り方、安全で気持ちいい入り方というのを自動判定するシステムを開発しています。自分の自律神経の状態を確認し、ととのう実感値と自律神経の活性化具合を見てみると、実際にととのわない日もあるんですよね。無理やりととのいに行かないで、まずは自分の体の状態をじっくり把握する。そして行った施設の温度や湿度も併せて考えて適切な入りかたを調整する。無理にしんどい入り方をすると逆にととのわなくなってくるので、やはり適切な安全な入り方、体をいじめない入り方というのを心がけると、自然とととのってくるのではないかなと思います」(加藤先生)

 最後に、ウラ話として、先生が普段通っているサウナについて聞いてみました。

どんなサウナ施設に通ってる?

「サウナに目覚めた最初のころはいろいろこだわっていたのですが、やっぱり家の近くの空いているサウナが一番いいです。サウナ後は家帰ってビールとか、おいしいものを食べてそのままゆっくりしたいので、家の近くの空いている施設が一番好きですね。なんだかんだ言って」(加藤先生)

──いいですね! サウナでいい気分になった後に電車に乗ると、もう現実が押し寄せてきて、家に帰るころにはすっかりいつも通りって感じなんです。

「そう。女性だったらメイク落としたまま、フードとかで隠してすぐに家に帰れるぐらいの、ちゃちゃっと行けて、ちゃちゃっと帰れる場所のほうが気持ちよかったりしますよね。とはいえ、家の近くであればあるほど会いたくない人がいることもある。隣の人とか知り合いとか。そういう阻害要因が多いというのはあるかもしれません」(加藤先生)

前編:サウナの効果と入り方、守ってほしいマナーとは。日本サウナ学会の医学博士に聞いてみた(前編)

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<Text:編集部>