生殖能力を高めたいなら「骨の健康」を意識せよ。骨から出る若返りホルモン“オステオカルシン”に注目する理由 (1/2)
骨の健康が生殖能力に影響を与えるという話があります。とくに最近注目されている骨から分泌されるホルモン『オステオカルシン』が、それに大きく影響しているのだとか。このオステオカルシンの働きについて、ゆりクリニック院長・「骨太な未来プロジェクト」 アドバイザーである矢吹有里先生に、くわしくお話を伺いました。
骨と生殖能力の関係性。なぜ骨が健康的だと生殖能力が高まるのか
──骨が健康だと生殖能力にもよい影響があると伺いましたが、本当でしょうか。メカニズムを教えてください。
骨形成を担う骨芽細胞によって産生されるホルモン「オステオカルシン(osteocalcin)」は、おもに骨代謝(古くなった骨を壊して新しい骨を作ること=リモデリング)に関与していることで知られていますが、近年の研究では男性生殖機能にも重要な役割を果たしていることが示されています。
このオステオカルシンは、精巣のライディッヒ細胞に作用し、テストステロンの分泌を促進することが報告されています。
テストステロンは、男性の生殖能力において重要なホルモンであり、精子の形成や性欲の維持に関わっています。
骨代謝で分泌される若返りホルモン「オステオカルシン」とは
──オステオカルシンとはどのようなホルモンなのでしょうか。その働きについて教えてください。
オステオカルシンは骨代謝回転(特に骨形成)と密接な関係があります。骨の石灰化とカルシウムイオンを一定に維持させる機能があり、 骨を作ることがおもな機能と考えられています。
他にホルモンとしての作用もあり、膵臓のβ細胞に働いてインスリン分泌を促したり、脂肪細胞に働きインスリン感受性を高めるタンパク質であるアディポネクチンの分泌を促進したりするとの報告もあります。
また 筋細胞のエネルギーを高めてエネルギー利用に作用し、運動能力を高める効果があると考えられています。
急性ストレス反応が起きたときには、ストレスを受けて数分以内に骨から放出され、興奮を抑える副交感神経系の活動を抑えて体を戦闘モードにします。副腎が機能不全になると、オステオカルシンが増加し、急性ストレス反応を引き起こします。
──オステオカルシンの分泌が多いと、なぜ生殖能力にもよい影響があるのでしょうか。
先述の通り、オステオカルシンは、精巣のライディッヒ細胞に作用し、テストステロンの分泌を促進することが報告されています。テストステロンは、男性の生殖能力において重要なホルモンであり、精子の形成や性欲の維持に関わっています。
オステオカルシンがテストステロンの分泌を高めることで、精子の産生と質の向上にも寄与する可能性があります。これにより、男性の生殖能力が改善されるという仮説があります。
──オステオカルシン分泌により、生殖能力向上のほか、どんなメリットが期待できるでしょうか。
オステオカルシンの働きは以下のようなものがあります。
- 骨代謝の調整
骨芽細胞によって分泌され、骨の石灰化や骨形成を促進させる - インスリン分泌の調整
膵臓に作用し、インスリン分泌を促進して血糖値を低下させる - エネルギー代謝の調整
脂肪細胞に作用し、インスリン感受性を向上させることで、エネルギー代謝を促進させる - テストステロンの分泌促進
精巣のライディッヒ細胞に作用し、テストステロンの分泌を促進させる - 男性生殖機能のサポート
テストステロン分泌を通じて、精子の形成と質の向上に寄与する - 筋肉機能の向上
骨と筋肉の相互作用を通じて、筋肉の強度や耐久性を向上させる可能性がある - 記憶力の向上(動物実験)
オステオカルシンが脳に作用し、認知機能や記憶力を向上させる可能性が報告されている