アルコールは胃腸や肝臓にどんな害を及ぼす?「少量でもがんリスク高める」と消化器内科医も警告 (2/2)
アルコールが原因となる『がん』の種類
食道がん
毎年10万人あたり35人(男性30人、女性5人)が新たに診断されるがんの一つが「食道がん」です。
食道がんは、男性に多く見られることが特徴で、日本では主に「扁平上皮がん」と「腺がん」の2つに分類されます。日本人の食道がんの90%以上は扁平上皮がんが占めています。
食道扁平上皮がんとは
食道扁平上皮がんは、口腔から食道まで連続する扁平上皮細胞ががん化したものです。そのため、食道がんはしばしば頭頸部がん(咽頭がんや喉頭がんなど)と重複して発生することがあります。
さらに胃がんや大腸がんとの重複も珍しくありません。
このような背景から、当院では胃カメラ検査の際、内視鏡スコープが通過する喉の粘膜も念入りに観察し、食道がんの早期発見に努めています。
食道腺がんとは
一方で、食道腺がんは、逆流性食道炎などの慢性的な炎症の発生に関与しているとされています。
逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流することで起こる炎症であり、これを繰り返すことで腺がんのリスクが高まると考えられています。
欧米では、食道がんの半数以上が腺がんで占められていますが、日本でも近年、逆流性食道炎の患者数が増加しており、それに伴い食道腺がんの発症も増加傾向にあります。
そのため、食道の早期の検査や胃カメラ検査による予防対策が重要とされています。
大腸がん
大腸がんは、盲腸、結腸、直腸に発生するがんを指します。
国立がん研究センターによると、1日のアルコール摂取量の平均が23グラムを超えると大腸がんになりやすく、さらには男性の大腸がん患者さんの約1/4が、適量を超えるアルコール摂取(1日あたり23グラム以上)が原因で大腸がんになったと考えられるそうです。
ビールの中ジョッキ2杯でアルコール26グラムとなり、『23グラム』というのは決してすごく多い印象ではありません。
大腸がんの多くは、放置された大腸ポリープから発生するとされています。とくに、大腸ポリープはサイズが大きくなるほどがん化のリスクが高まります。
中でも、将来的にがん化する可能性が高いポリープは前がん病変と呼ばれ、小さいポリープの段階で切除することが大腸がんの予防に繋がります。
アルコールによる脳の障害
長期にわたってアルコールの摂取をつづけると、食事のバランスの悪さやビタミン消耗などの原因で脳が委縮することがあります。
その結果、認知症や手足のしびれ、ふらつきなどの症状が出現します。
アルコール過多が引き起こす病気はまだまだある
アルコールは上記以外にも慢性膵炎や糖尿病、脂質異常症、貧血、特発性大腿骨頭壊死症など多くの病気を引き起こします。
アルコールは遺伝的な体質の違いで、より少量のアルコールで害の出やすい方もいます。以前言われていた「少量のアルコールは体に良い」という通説を否定する研究結果も多くあります(※1)。
「これくらいは大丈夫」と毎日飲み続けず、楽しむときは楽しむが普段は禁酒するなどメリハリをつけて節酒するように心がけるのがポイントです。
(※1)
国立がん研究センターがん対策研究所 飲酒とがん全体の発生率との関係について
国立がん研究センターがん対策研究所 飲酒とがんリスクについて
解説者プロフィール
船越真木子(ふなこし・まきこ)
まきこ胃と大腸の消化器内視鏡クリニック院長
まきこ胃と大腸の消化器内視鏡クリニック(京都)院長2005年神戸大学医学部卒。京都大学医学部附属病院等の勤務を経て、2021年に「まきこ胃と大腸の消化器・内視鏡クリニック」(京都市伏見区)を開院。がん罹患数の第一位である大腸がん、第三位である胃がんを早期発見するため、苦痛の少ない高精度な内視鏡検査を提供している。ミッションは『人生を最高に楽しめる体と心を支える』。総合内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医。
まきこ胃と大腸の消化器内視鏡クリニック(https://www.makikoclinic.com/)。
<Edit:編集部>