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「ビールを毎日飲んでも運動効果は落ちない。筋肉量も減らない」ってホント?

 体脂肪を減らしたい、引き締まった筋肉をつけたい。理想の体作りには日々のトレーニングが欠かせません。同時に食事制限や食欲のコントロールも大切です。いくら運動をしても、ビールを飲んでしまったらトレーニング効果が台無し……とも限りません。

 日常的にビールを飲む人でも、HIIT(ヒット/ヒート)と呼ばれる高強度インターバルトレーニングの効果に影響はないという、スペインの研究論文が栄養学会で発表されたのです。

ビールがフィットネス界から目の敵にされてきた理由

 この研究を紹介する前に、「なぜ、ビールがフィットネス関係者から目に敵にされてきたか」を簡単におさらいしてみます。

 これについては、まずダイエットへの悪影響が挙げられるでしょう。摂取カロリーに目を向けると、種類にもよりますが、缶ビール350mlのカロリーは約150~180kcal。平均的な体重の人が20~30分くらいジョギングしたときの消費カロリーと同じ程度です。つまり、せっかく20~30分くらい一生懸命に走っても、たったの缶ビール1本でカロリーの収支バランスはゼロに等しくなってしまいます。

 そもそも缶ビール1本だけで我慢できないから、ビール好きと呼ばれるのです。2本、3本と飲み続けてしまう人は、よほど激しい運動をしない限りトレーニングで体重を減らすことはできない計算になります。さらに糖質制限ダイエット理論では、ビールや日本酒などの醸造酒は糖質を多く含むという理由で悪ものにされ、焼酎や赤ワイン、ウイスキーなどの蒸留酒はOKとされることが多いようです。

 また、ビールには筋肉作りの面でもデメリットがあります。ビールに含まれるアルコールを摂取すると、筋肉を作る作用に影響するホルモン・テストステロンの分泌量が減少することがわかっているからです。つまりお酒を飲むと、筋肉の成長が阻害されてしまうのです。

 その他にも、ビールには利尿作用があるので脱水状態になりやすいこと、就寝前のアルコール摂取は睡眠を妨害することなど、ビールに関してはあらゆる面での身体への悪影響が科学的に証明されているのです。

関連記事:アルコールは筋肉にどんな影響を及ぼすのか?筋トレとお酒の関係性

ビールを毎日飲んでも、適量であれば運動効果に影響しない

 ところが2019年に発表された下の研究論文(*1)では、10週間のHIITトレーニング期間中にビールを毎日飲む被験者グループと飲まない被験者グループを比較検討した結果、両グループの間でトレーニングが身体に与えた効果には有意の差が生じなかったことを報告しています。適度な量さえ守れば、ビールを日常的に飲んでもHIITトレーニングの効果にさして影響はないと、論文著者らは結論で述べているのです。

 筆者のようなビール好きにとってはなんともうれしい結論です。内容を少しくわしく、客観的なデータとともに見ていきましょう。

<被験者>
72人の健康な若い男女(うち女性は35人、年齢は18歳から40歳まで)

<観察期間>
10週間

<研究方法>
被験者はまず、HIITトレーニングを行うグループと、行わないグループに分けられた。トレーニングを行わないグループは、研究のために毎日アルコールを摂取。トレーニングを行うグループは、さらにビールを飲むグループと飲まないグループに分けられた。

期間中は1週間のうち5日、ビールを飲むグループのうち男性は約325mlのビール(アルコール度5.4%のラガー、あるいはウォッカのソーダ水割り)を昼食と夕食時に飲み、女性は同じ量のビールを夕食時だけに飲んだ。

HIITトレーニングは、1回40~65分のかなり激しいメニューを週2回行った。

<研究結果>
研究期間の前後に、被験者全員の体組成数値(体重、胴囲、ウエスト/ヒップ比、腹部脂肪、骨密度)を測定すると、HIITトレーニングを行ったグループは、ビールを飲むと飲まないにかかわらず数値にネガティブな変化はなかった。どちらのグループも体脂肪が減り、筋肉量が増大するポジティブな効果が同程度にあった。

<この研究から考えられること>
「結論として、私たちの実験結果が示すことは、健康な成人は10週間のHIITプログラムによって体脂肪率の減少と筋肉量の増大を含む体組成指数が向上する。そしてそのポジティブな効果は、継続的なビールあるいは代替アルコール飲料の適量摂取による影響は受けない」

アルコールの適量摂取ってどれくらい?

 上記の研究はスペインで行われましたが、彼らの「適量」は、日本人とどれだけ違うのでしょうか。日本の厚生労働省では、「節度ある適度な飲酒」を以下のように定義しています(*2)。

「通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度である」

 アルコール20gとは、大体「ビール中ビン(500ml)1本」にあたるとのこと。研究で使われたビール(約325ml、5.4%)を計算するとアルコール量は約17.6gになりますので、男性被験者のように昼食と夕食の1日2回飲むと、厚生労働省が定義する適量をやや越えてしまいます。女性被験者は1日1回の飲酒だったので、摂取アルコール量はそれを下回ります。それでもアルコール代謝に個人差があることを考慮に入れると、誤差の範囲と言ってよいのではないでしょうか。トレーニング効果を損なわないアルコール量と、健康に害がないとされるアルコール量は、さほどかけ離れてはいないようです。

関連記事:糖質ゼロ/オフビール飲み比べ12選。効果的な飲み方や筋トレとの関係を栄養士に聞いてみた

参考文献:
*1.
BeerorEthanolEffectsontheBodyCompositionResponsetoHigh-IntensityIntervalTraining.TheBEER-HIITStudy
https://www.mdpi.com/2072-6643/11/4/909

*2.
厚生労働省 e-ヘルスネット 飲酒のガイドライン
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-003.html

[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani

<Text:角谷剛/Photo:Getty Images>

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