ウェルネスフード
2024年6月11日

カルシウム・鉄分の栄養を台無しにする「もったいない食べ方」とは

栄養を効果的に体内に取り入れるには、効果的な食べ合わせというものがあります。

栄養素同士の吸収を促進・阻害させる関係性を知ることで、食材の組み合わせといった視点から料理にも活かすことができますし、栄養摂取の効率を高めることも可能です。

今回は、カルシウムと鉄分の吸収率を高める食材の食べ合わせについて、プロスポーツトレーナーが紹介します。

なぜ「食べ合わせ」が大切なのか

健康バランスを考え、ビタミン、鉄分、カルシウムなどを集中して摂取しようとした経験はないでしょうか。

しかし、これらを単独で摂取するよりも、他の栄養素と一緒に摂取することで吸収を促進させることができます。

逆に吸収を阻害させてしまう食べ合わせは「合食禁(がっしょくきん)」と呼ばれ、うなぎと梅干し、てんぷらとスイカなどの組み合わせはよく知られているところです。

うなぎと梅干しは迷信!

ちなみに、うなぎと梅干しは栄養素的に見るとまったく問題はなく、実は迷信であるとされています。

梅干しの酸味によって、脂分の多いうなぎを食べ過ぎないようにと考えられていたのではないでしょうか。

今回はこれらの迷信としての食べ合わせではなく、栄養素という視点から解説。一般の人でも不足しやすく、意識して摂取することが多いカルシウムと鉄分にターゲットを絞って紹介していきます。

カルシウムの吸収をよくする食べ合わせ

カルシウムは「マグネシウム」「ビタミンD」と一緒に摂取する

カルシウムは、「マグネシウム」や「ビタミンD」を一緒に摂取することで吸収率を増やすことができます。

カルシウムが骨を形成する大事な栄養素であることは、誰もが知っている通りです。しかし、カルシウムが多く含まれている牛乳や乳製品、小魚などを食べても、そのすべてを体内に吸収することはできません。

牛乳・乳製品で摂取した量の50%程度、小魚は30%程度しか体内に吸収されないのです。

カルシウムを体内に効果的に摂取させる栄養素が、マグネシウムとビタミンDです。

マグネシウム

マグネシウムは、酵素の働きを保つ働きを持っており、体内の代謝に重要な栄養素です。

そのマグネシウムは骨を作る骨芽細胞に働きかけ、骨の中に入るカルシウム量の吸収を促進させ、骨の形成を助ける働きも持っています。

ビタミンD

ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、血液に入ったカルシウムを骨まで運ぶ働きがある栄養素です。

ビタミンDは日光に当たることにより体内でも生成できます。しかし不足しやすい栄養素なので、カルシウムの吸収率を高めるためにも積極的に摂取したいところです。

鉄分の吸収をよくする食べ合わせ

鉄分は「ビタミンC」「動物性たんぱく質」と一緒に摂取する

アスリートの中には、貧血が起こりやすいとお悩みの選手もいるでしょう。

とくに若い女性アスリートには、貧血によって病院から鉄剤を処方してもらわないといけないくらい、鉄分が不足しているという選手も少なくありません。

鉄分は赤血球に含まれるヘモグロビンを作るための原料となる栄養素です。

体内の鉄分が減ってヘモグロビンの量が少なくなることで、全身に運べる酸素の量が低下して貧血が起こります。これが鉄欠乏性貧血です。

それを防ぐためにも鉄分を積極的に摂取したいところですが、他の栄養素と同じく、多く摂取しても体内に吸収されなければ意味がありません。

鉄分を効果的に吸収させるためには、「ビタミンC」と「動物性たんぱく質」を同時に摂取しましょう。

ビタミンC

ビタミンCは、摂取した鉄を吸収しやすい形に変えてくれる働きを持っています。

動物性たんぱく質

また、動物性たんぱく質は、摂取した鉄分と結びつきヘモグロビンを作るために必要な原料となるのです。

鉄分を効率よく摂取したい場合は、これらの栄養素を含む食材と一緒に鉄分を補給するようにしましょう。

カルシウム・鉄分の吸収を悪くする、避けたい食べ合わせ

逆に、吸収を阻害する食べ合わせも学んでおきましょう。

カルシウムと「リン・カフェイン・アルコール」を一緒に摂るのは避ける

カルシウムの吸収を増やしたい場合、「リン」・「カフェイン」・「アルコール」はカルシウムの吸収を阻害する働きを持ちます。

リンはインスタント食品やスナック菓子に、カフェインはコーヒーや紅茶に多く含まれています。

また、コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれている「タンニン」も、吸収を阻害する働きがあるので注意しましょう。

鉄分とタンニンを一緒に摂るのは避ける

カルシウム同様、タンニンには鉄分の吸収も阻害する働きがあります。鉄分の吸収を意識するのであれば、食事中や食後にコーヒーや紅茶を飲むのは控えた方がよいといえるでしょう。

栄養素はすべて体内に取り入れられるわけではない

今回ご紹介したように、摂取した栄養素はすべて体内に吸収されるわけではありません。ほかの栄養素との相性によって吸収率が高まったり、逆に吸収されなくなるのです。

これ以外にも、栄養素の吸収に影響を与える食べ合わせはあります。この機会に、カラダを作る重要な栄養素を逃すことなく摂取できるように、栄養素同士の関係性を調べてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。​医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。運営協力メディア「#トレラブ(https://tr-lv.com/)」などで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。日本トレーニング指導者協会 JATI-ATI

<Text:和田拓巳>