インタビュー
ウェルネスフード
2023年11月13日

プロテイン、“マズイ、溶けにくい”を払拭し、進化できた理由とは。「SAVAS(ザバス)」を展開する明治に聞いてみた (1/2)

ここ数年、プロテイン熱が高まっていることを感じませんか? プロテイン飲料、プロテインバーなど、新商品が次々と発売され本格的な筋トレユーザーではなく、トレーニングライトユーザーやダイエット目的の人たちにまで広がり、興味を持ち始めています。

そこで、プロテインの代名詞的存在となった「SAVAS(ザバス)」を40年前(1980年)に開発した明治にプロテインの歴史や、おすすめの飲み方などプロテインについての疑問をいろいろ聞いてみました!(※本記事の初出は2020年10月です)

たんぱく質(プロテイン)への注目度がすごい

最初にプロテインとはどんなもので、どれだけ人気なのかを知っておきましょう。大きくまとめるとプロテインは、たんぱく質のサプリメントといえます。たんぱく質は、脂質・炭水化物(糖質)と並び、ヒトの生命維持や身体活動に欠かせない3大栄養素のひとつです。

たんぱく質は、骨格、内臓、皮膚、髪の毛、爪などカラダを形成する重要な役割を担っていますが、常に分解され消費されています。また、運動により壊された筋肉を再び作るために必須の材料でもあります。そのため、たんぱく質が主成分のプロテインがアスリート、トレーニングを楽しむ一般人、筋肉を落とさず効率的にダイエットしたい人などに注目されています。

富士経済が昨年9月に発表した国内市場調査をみても2015年比較で約173%、2020年において前年比約107%と驚異的な拡大率をみせています(※出典:富士経済「プロテインブームにより拡大続くたんぱく補給食品の今後と新カテゴリーの可能性」より)。

さらにコロナ禍によるリモートや巣ごもりが増え、運動不足による筋力の低下や、体重の増加が話題に上がることが増えてきました。そこで積極的に運動に取り組む人や、栄養を気にする人のなかで、筋肉の材料となるたんぱく質=プロテインへの注目度が高くなっています。たんぱく質はヒトが生きて行くうえで、絶対に必要なもの。効率よくたんぱく質を補い、低脂肪でそのほかの栄養素もコントロールされている「プロテイン」がクローズアップされ、ムーブメントを巻き起こしているのです。

明治が40年前にプロテインを発売したワケ

今や大ブームを引き起こしているプロテイン製品の先駆けとなった明治の「SAVAS」ブランドは、1980年に発売されました。当時の明治といえば社名も「明治製菓」で、お菓子のメーカーのイメージが強いなか、なぜプロテインの開発・販売に乗り出したのでしょうか。

この疑問を株式会社 明治 マーケティング本部 栄養マーケティング二部 スポーツGの外崎将昭さんに聞いてみましょう。

―― 明治製菓(当時)がお菓子などに加えて、プロテインを扱うようになったきっかけは何だったのでしょうか。

明治製菓の時代に健康食品の部署があったんですけど、健康食品というと当時は病気予防とか、病気につながるネガティブなイメージが強かったんです。身体に良いものなので、もっと明るいイメージにできないかと思案した結果、「明るいイメージのスポーツ食品ブランド」を立ち上げようとしたのが、きっかけです。

―― 発売ターゲット層は、やはりアスリートですか。

基本方針は、そうでした。しかし当時は、アスリートにもプロテインが浸透していませんでしたので、国体(国民体育大会)やマラソン大会で普及活動やサンプリングをして着実に普及していくことにしました。それでも認知度は上がらず、1980年~1990年前半は苦しみ、試行錯誤した時期だったといえます。

―― そこだけ聞くと失敗したと思えますが、プロテイン事業をやめる選択肢はなかったのですか。

その選択肢はなかったと聞いています。それを裏付けるかのように、1995年には「パワー系のタイプ1」「スピード系のタイプ2」「持久系のタイプ3」とターゲットを詳細化し、アスリート向けに打ち出したプロテインを発売しています。この施策が上手くつながり、徐々にアスリートの方々に広まっていきました。90年代後半には、ドラッグストアに「SAVAS」を置いていただけるようになりましたが、それでも一般の方までは、今のように浸透したわけではありませんでした。

―― 今の「SAVAS」を見ると、その苦労は感じられませんね。その「SAVAS」が苦境を抜けだし業界トップに駆け上るきっかけはいつでしたか。

2006年ですね。クリアでスポーツドリンクのように飲める「アクア ホエイプロテイン100」、おいしさを重視した「ホエイプロテイン100」、女性向けの「シェイプ&ビューティ」などの一般向け商品が発売された年です。従来のアスリート向けと2本立てで展開して、「SAVAS」が世間に広まったと手応えを感じられるようになりました。

さらに急激に伸びてきたのが、2014年~2015年のパーソナルトレーニングブームでした。自身のトレーニングやプロテインを飲んでいる写真がSNSにアップされるようになると、筋肉をつけてビルドアップしてカッコよくなりたいという人が非常に増えてきました。「SAVAS」だけでなく、プロテイン市場全体が盛り上がった時期といえます。

マズイ、溶けにくいを払拭できた経緯とは

―― 昔のプロテインは「美味しくない」というイメージが強かったみたいですが、味はどう改良したのですか。

確かに当時展開していたアスリート向けプロテインは、成分や含有量などを追求していたので味は二の次でした。そこは、健康食品開発の流れも強かったんだと思います。でもアスリートも同じ人間ですから、やはり「マズイものでは続けれられない」という声が多くありました。アスリートだって美味しいものを飲みたいですよね。その反響は、一般向けへの展開でさらに大きくなっていましたね。

―― 今ではとても多くのフレーバーが出ていますが、開発で大変だったことはありますか。

味の開発は、本当にトライ&エラーでした。原料に合うフレーバーの研究・調査、試行錯誤を何度となく重ねて……。数々の失敗から生まれたのが、美味しいプロテインです。美味しさの追求に加えて、溶けにくさや飲みづらさの改良もしてきました。2020年のリニューアルでは、SAVAS独自の造粒技術「均質顆粒化製法」で、短いシェイク時間やコップでも溶けるプロテインが完成しました。これ、みてください。

写真の左が従来品。右がリニューアルした「均質顆粒化製法」の製品です。それぞれコップに入れ、10回かき混ぜたものです。従来品はダマが残ったままですが、リニューアルした製品は、粉がほとんど溶けています。製法を検討していく研究のなかで、ユーザーが気になる「溶け」について新たな製法を生み出し、従来よりも簡単に溶けるように改良されています。

市場拡大にともなって、栄養面、飲みやすさ、美味しさの3つが、しっかり一般の方まで伝わると、さらに動向が良くなるのではないかと考えています。

「SAVAS」担当者に聞いた、効果的なプロテインの摂り方

 さて、ここからはプロテインをとるときに迷う点を聞いていこうと思います。飲むタイミングとか分量とか、何気なく疑問に思うことに答えていだきます!

―― 飲みやすさと、美味しさがわかったところで、プロテインはいつ飲むのが効果的なんでしょうか。

答えに対して多くのエビデンスがありますが、おすすめできるのは「運動後30分以内が目安」です。このタイミングは、ゴールデンタイムと言われていて、運動後に壊れた筋肉が回復(超回復)していくタイミングのなかでも最も栄養吸収効率が高い時間帯といわれているんです。このとき、しっかりプロテインを摂取して血液のなかのアミノ酸の濃度を上げていくことが超回復にはいちばん効率的と言えます。

―― 栄養価が高いから朝食代わりにしてもいいのでしょうか。

朝食の代わりに飲んでいる方が増えているようですが、プロテインは食事代替用には作っていません。食事をしっかり食べたうえで、プロテインで不足を補うことが基本的な使用方法と捉えています。どうしても食事を摂れないときに、手軽に栄養補給という意味だと少なからず役割は果たしてくれると思います。

―― 1日にどのくらい飲むのが効果的でしょうか。

摂取量は体重×1~2gが目安。たとえば、体重80kgの人が、アスリートなら体重×2gで160g、一般の人なら体重×1gで80gが1日の目安量です。1回に吸収できるたんぱく質は20g程度なので、一度にたくさんではなく、少しずつ時間をおいて摂るといいですね。

―― たまにプロテインを飲むと太るという意見を聞きますが、本当のところどうなんでしょうか。

プロテインの栄養成分は1回分80kcal前後です。実はカロリーは低く、脂質や糖質も非常に低いです。ただ、プロテインを牛乳と一緒に飲むと、牛乳200mlで約137kcal分カロリーが増えてしまいます。プロテインが直接太る原因になるとは考えにくいことですが、食事にただプロテインを追加するだけだとカロリー過多になり、結果として太ってしまう人もいると思います。基本的に運動と合わせて摂っていただくのがベストです。

40年という長い時間のなかで、ユーザーと向き合い、本当に必要なものを開発してきたことで「SAVAS」は進化し続けてきました。「プロテインってよくわからない」という人にも、気軽に手にしやすくなったことが「SAVAS」の一番の魅力ではないでしょうか。

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