8~7級に挑戦!体をウォールに近づけることがカギ【ボルダリング体験レポ〜初心者が一人前になるまで〜 #4】
3回にわたってボルダリングの基礎知識から準備、そして前回初めて課題を制覇するところまでお伝えしました。実践編として2回目となる今回は、前回より一段難しい課題8~7級に挑戦です。
「自分にも登れるだろうか?」と不安だったボルダリング初心者も10~9級をクリアすると、「よーし、次に行こう!」と思っている自分に気が付きます。ボルダリングの不思議な魅力は、こうして瞬く間に始めた人を虜にしてしまうところかもしれませんね。この「達成感」をより多くの人に味わってほしいと、各ボルダリングスタジオは8~7級辺りのウォールを多めに用意しています。
さて今回、取材先のクライミングジムRISEさんにお願いし、同スタジオに通う名津美さん(27)にご協力いただきました。名津美さんは現在、アパレル関係の仕事をしているそうですが、毎日遅くまで仕事をしている関係でなかなか運動する機会がなかったそうです。そんな折「1人でも気軽にできるし体幹が鍛えられる」ということで白羽の矢を立てたのがこのボルダリングでした。もともと中学生時代にバスケットボールの選手だったこともあり、運動神経には自信があり、筋力もあったので、ある意味うってつけのスポーツに出会ったのかもしれませんね。
ストレッチとルート確認を忘れずに
▲ストレッチを忘れずに!
今までお伝えしたように、まずやる前には軽いストレッチをお忘れなく。
また、いきなり課題に取り組むのではなく、事前にどの課題なら自分はクリアできるのか、そしてどういうルートで行けばいいのかをイメージします。なにせウォールにはさまざまなホールドが縦横無尽に配置されているのですから、ホールドの見落としもありがちです。やりたい課題のホールドがどれなのか、慣れるまでは気軽にスタジオのスタッフに聞いてみるといいでしょう。
10~9級はエントリーの課題なので、下から上に真っすぐ登っていくルートでしたが、この8~7級辺りからは斜めに進む課題も増えてきます。斜めに進む場合、筋力がある人はその筋力で体を持ち上げていくことも可能ですが、筋力がない人はなかなか体が安定せず、ふらふらしたり、バランスを崩して落ちてしまうこともしばしば。第1回からお伝えしているように、ボルダリングでは重要なファクターである「体幹」を意識してカラダの重心を安定させることが重要です。
また、10~9級までは「ガバ」でつかむホールドが多いのですが、このクラスから「ピンチ」や「カチ」などのテクニックも使うようになってきます。このホールドのつかみ方については第2回目の「ボルダリングの正しいホールドの握り方を学ぶ! ボルダリング体験レポ〜初心者が一人前になるまで〜 #2」を参照してください。
体をウォールに近づけると無駄な力を軽減できる
ボルダリングは第一人者でさえ、難易度が高い課題だと途中で疲れてきてしまいます。適格なルートを選択し、どれだけ体力、筋力を温存するかがポイントになります。斜めに進む課題だと、どうしても力で体を持ち上げようとしますが、体を疲れさせないためにもコツやテクニックを多用するとより簡単にクリアできます。
▲体幹力が身に付くとウォールにこれだけ近づけられる
体幹力が身に付くと自然に体がウォールに近づいてきます。体を疲れさせないために「体をウォールに近づける」動作を知らず知らずのうちにしているわけですね。最初はなかなか自然にできませんが、初心者は体の軸を意識することにより、この姿勢を保てるようになります。ただし、あまりウォールに近すぎると逆に力を入れにくくなりますので、ウォールと体の距離感は練習して体に染み込ませると良いでしょう。
8~7級辺りから斜めに配置されるホールドが増えていく
▲斜めにホールドが配置された「E」の課題
この写真を見てください。「E」と書かれている課題は左下から右上にホールドが進んでいます。この課題は7つホールドが配置されています。途中にある③や④のホールドは小さくなっているので「ピンチ」や「カチ」「オープン」といったテクニックを要求されます。こうして課題が難しくなるに従って新しいテクニックでクリアしていかなくてはならなくなります。10~9級では「ガバ」だけで登れましたが、このクラス辺りからはホールドの種類もさまざまで、いろいろなテクニックを駆使していかないと登れなくなっていきます。
体幹を意識し常にウォールに正対する形を作る
左右に動くということは、それだけ体幹も大切になっていきます。例えば「E」の課題の①→②、②→③、④→⑤のように比較的長い距離を動く際、体を斜めにしてしまうとバランスを崩しやすくなり、体勢を維持できなくなってしまいます。先ほどもお伝えしましたが、難易度が上がるにつれて、できるだけ体を真っすぐに保ち、ウォールに近づけて体を安定させる必要があります。
もちろん、この時の足の動きも大切です。体が安定する体勢を作るためにはその土台となる下半身のポジションが重要となります。特に足が伸び切ってしまったら、上に登るパワーを作ることはできません。手の何倍もの力のある足は、余裕を持たせることでパワーを溜め込み、上半身を押し上げることができるのです。安定した下半身を作れれば、あとは次のホールドをつかみにいくだけ。そして、つかんだら一気に体を持ち上げ、足のポジションを決めれば、次のアクションへの準備が完成します。こうして、常に中心軸をブレさせずにウォールに正対できていれば、それほど苦労せずにこのクラスをクリアできるでしょう。
「手足を残せれば」より高い課題もクリアできる
体幹について補足します。体幹が強く、体がウォールから近いと有利な点があります。「手足を残せる」のです。体がウォールから遠いということは、手足が伸びている状況で難しい課題になるにつれ、次へのステップに繋がりにくくなります。「手足を残す」ことができれば、多少難しい課題もなんなくクリアできるケースも出てきます。
また、体幹を使えない人の特徴は腰が引けてしまうところです。こうなると何とか力で登ろうとするため、ガチガチに上半身に力が入ってしまうという悪循環に陥りやすくなります。また、筋力に自信のある人はコツやテクニックを覚える前に、無意識に「力で捻じ伏せよう」とするので、なかなかクリアできない課題も出てきます。
柔軟性も鍛えると、より上達の早道に
ボルダリングの奥深さ、おもしろさはこうした「パワー」だけでなく、体の機能を総動員して行うところ。一見非力そうな人が、マッチョな人が苦戦する課題を簡単にクリアしてしまうケースを何度も見てきました。でも、もともと筋力のある人が体幹力を付ければ“鬼に金棒”。初めての方でも5級をクリアする人がいますが、こういう人は筋力も体幹力も高いバランスを持っている人です。加えて柔軟性があれば、より難しい課題も克服できる可能性が高くなります。柔軟性と体幹力をアップさせるのが上達の早道と言えそうです。
「下半身の動き」で次のホールドを攻めていける
では注意点を踏まえて、名津美さんの挑戦がスタートしました。
▲スタートポジションについた名津美さん
運動神経抜群で、手足も長い名津美さん、非常に上手に登っていますね。名津美さんの良いところは、やはり体がウォールに近い点。ホールドに対しても常に安定した体制を維持しています。練習の成果もありますが、上手に体の位置を入れ替えて、次のアクションをしやすくなるようにポジションを保てています。
▲姿勢をしっかり維持している名津美さん
写真のように姿勢をしっかり維持できているので、体がブレずに登ることができています。体幹が強くない人は体がブレて無駄な力を使うため、すぐに疲れてしまいます。名津美さんは「足が残っている」ので安定して、腰が壁から離れず、ホールドを掴んだときの負荷も減らせることができていますね。「下半身からの動き」でホールドを取りにいけているわけです。そうするとさらにボルダリングが長い時間楽しめるようになり、長い間登れるということはさらに強く、上手くなるという好循環を生み出します。「あれ? 今日は何だか簡単に登れちゃったな」と思う時は、体幹力がアップしている証拠。そういう意味でもボルダリングの上達は、やはり体幹力アップがキーポイントと言えるでしょう。
▲課題をクリアして思わず満面の笑みがこぼれる名津美さん
次は最終回、6~5級に挑戦です。今まで4回にわたって連載してきましたが、ここまで来れば目標の5級クリアは目前。上級者への入り口まであと少しです。頑張っていきましょう。
[施設情報]
クライミングジム RISE(ライズ)
・営業時間:10~24時(年中無休)。
・住所:横浜市戸塚区上倉田町479-2 東横ビル上倉田B1(JR東海道線・横須賀線、横浜市営地下鉄戸塚駅東口下車5分)
・電話:045-443-6009
・料金:会員登録料 1,500円、施設利用料 1,800円(一般)、大学生・専門学校・シニア 1,500円、高校生以下 1,000円(以上、すべて税別)。その他詳細は直接問い合わせ
・公式ホームページ:http://www.climbrise.com/
<Text & Photo : 青木秀道(H14)>