2017年10月2日

ボルダリングの正しいホールドの握り方を学ぶ!【ボルダリング体験レポ〜初心者が一人前になるまで〜 #2】

 ボルダリングをするにあたっての準備、施設(ウォール・ホールド)のこと、ボルダリングの魅力、についてお伝えしましたが、興味を持っていただけましたでしょうか。

 今回は2回目ということですので、課題をクリアする第一歩として、「シューズのこと」「スタートとゴール」、そして一番重要な「正しいホールドの握り方」をお伝えしたいと思います。

 特にホールドにはいろいろな大きさ、形状があり、それによってテクニックも変えていかなくてはなりません。単純に見えてそうでないのがボルダリングの奥深さ。やるにつれ段々その魅力に取りつかれてくるから本当に不思議なスポーツです。それでは、一つひとつ解説していきましょう。

シューズは少しきつめが良い

 前回、ボルダリングはほとんど用意するものがない中で、「シューズ」と「チョーク」だけは必要であると書きました。この2つはほとんどのジム・スタジオで無料ないし数百円でレンタルできるのですごく便利です。

靴箱

 このボルダリング用シューズですが、種類も初心者用から上級者用までさまざまなものが発売されています。大きく分けると「スリッパ」「ベルクロ」「シューレス」と呼ばれる3種に分けられます。「スリッパ」というのはその名の通り、簡単に履けるタイプで軽量なのが特徴です。「ベルクロ」というのはマジックテープで上部を締め付けるタイプで、これが初心者にはオススメです。「シューレス」というのは紐で締め付けるタイプ。よりフィット感を求める人にはこちらがいいですね。靴底の形状も「フラット」と呼ばれる通常の靴と同じようなタイプと「ダウントウ」という内側に湾曲したタイプがあります。ダウントウは強傾斜に向いているので、上級者向けのタイプと言えるでしょう。

フラット型とダウントウ型

▲「フラット型」(上)と「ダウントウ」(下)

 ボルダリングのシューズで重要なことは「足型に合っているものを選ぶこと」「自分に合ったサイズのものを履く」ことです。ギアの少ないボルダリングですので、このシューズ選びはある意味、一番大切なポイントとも言えます。特に難易度が上がると足で壁を押さえながら登るケースも出てくるので、足とシューズがフィットしていることは大切な要素となります。だいたいスタジオごとにレンタルシューズは用意してあり、必ずサイズの対応表がありますので、それを目安にして合せてみるといいでしょう。

 取材先のクライミングジムライズさんでも、シューズを無料レンタルしています。ちなみにライズさんのレンタルシューズは表記がUSサイズになっています。代表の原大作さんは「足の形は人それぞれですので、実際に足の形を見させていただき、そのお客様にベストのサイズをチョイスしています。一番大切なのは足型です。初心者はまずレンタルシューズで始めて、上達したらより自分の足に合うシューズを購入するのが良いと思います」と話してくれました。

ボルダリングのスタートとゴール

 ボルダリングのウォールにはさまざまな色のテープが貼られています。色やその形ごとに難易度が分かれていて、その同じ色、形のテープを掴んで登っていきます。各スタジオではその色ごとで難易度が分けられています。ライズさんでは初心者にはA~Zまで、別の表記で難易度を示している課題を設けています。いずれにしても、その最初に「S」と書かれたテープがありますが、これがスタートのホールドになります。そして、そのテープを辿っていくと「G」というマークが現れますが、それがゴールになります。

アルファベットA課題

▲ウォールにAと書かれたこのコース

 ボルダリングにはルールがあり、スタートを両手で持って、両足がマットから離れたらスタート。ゴール(G)を「両手で2秒以上」つかまないといけません。例えば、難易度の高い課題をやっとのことでクリアしたと思っていても、その「G」のマークに片手だけでつかんだり、両手でも1秒未満の場合はクリアしたと認定されません。しっかりと2秒以上両手でつかんでこそ、課題クリアとなるので、これはしっかり覚えて欲しいところですね。

ホールドの持ち方

ボルダリングスタジオに行くと、聞き慣れない言葉を耳にします。「ガバ」「カチ」「ピンチ」「バーミング」「きょん」などです。なにがなんだか分かりませんよね(笑)。細かくはいろいろな種類があるのですが、今回はその代表的なものをいくつかご紹介します。

◆「ガバ」

 その名のとおり「ガバっ」と持ちます。上を向いている深さのあるホールドを指と手のひらで包むように持ちます。低難易度の課題はこのガバホールドで設定されてケースがほとんどなので、最初はこの持ち方から覚えるといいでしょう。

 ◆「カチ」

 カチ持ちの俗称です。カチ持ちとは、指の第2関節だけ曲げ、第1関節は反らすように伸ばす持ち方で、特に人差し指、中指、薬指の3本の指先に力が入れます。その際、親指は添える形でほかの4本の指を支えます。これをすることで体を持ち上げられるくらい、力を出すことのできる持ち方です。指を故障しやすい持ち方ですので、やり過ぎには注意が必要です。別名クリンプとも呼ばれています。

◆「アンダー」

 下向きのホールドにはこのテクニックを使います。初心者でも多用するテクニックです。手を伸ばして後ろに荷重をかけると安定します。肩の位置から下に持ってくるとそれほど疲れない姿勢を保てます。

◆「オープン」

 主に小さいホールドを登る時に使います。主に人差し指~薬指までの三本指でホールドをひっかける形にして登ります。第一関節だけ曲げて、その指先に荷重をかけて摩擦力で安定させます。力を使うというよりは、自重と摩擦を利用する形なので、あまり疲れることがないため、有効なテクニックとなります。

「ピンチ」

 細い縦型のホールドを掴むときに使うテクニックです。英語のPinchの「つまむ」という意味どおりです。親指とほかの指で挟むように掴みます。これもかなり指の力を使います。

◆「バーミング」

 半円タイプのホールドを掴むときに使います。手の平全体でこの丸いホールドを押し付けるように持ちます。指というよりも手の平に意識を持つと良いでしょう。

◆「ポケット」

 穴あきタイプのホールドにはこのテクニックを使います。指先を突っ込み登っていきますが、指先だけ使うと疲れてしまうので、(肩などの)体全体の筋肉を使っていくとスッと体が持ち上がるので体幹を意識して登っていくのがポイントです。

「きょん」

 これは手の持ち方でなく、足の使い方です。初心者には最初はなかなか不思議な動きで理解しにくい動きですが、中上級者になると必須のテクニックなので覚えておくとかなり有効です。ボルダリングをすると体を正対しているだけではホールドに届かない場合が出てきます。そこでこのテクニックを使います。膝を身体の前側(お腹側)に曲げるやり方で、絞り上げると言った方がいいかもしれません。これをやることで体が壁に近づくとともに伸ばした腕がスーッと上に伸びます。これで正対していた時に届かなかったホールドに手を届かせることができます。

 このように、手にしても足にしても筋力だけに頼らず、体の動きによって楽に登っていけるテクニックもあり、これがボルタリングの面白さ、魅力の一つとなっています。

筋肉と頭を総動員させるボルタリングはストレッチ効果抜群

 ボルダリングをやってみると、やる前に思った「こんなの誰でもできるよね?」から「なかなか奥深いスポーツだな」という印象に変わってきます。もちろん最初の課題はそれほど難しく設定されていませんのですぐにクリアできてしまう人が多いのですが、徐々に高い課題に挑戦していくと、必ず「あれ?これ、どういう風にすればクリアできるの?」という壁にぶち当たります。

 先ほども書きましたが、指の力だけで登ろうとしたり、筋力だけに頼って登ろうとすると、どんなに屈強な人もクリアできない課題が出てきます。ところが、一見スリムで筋肉マンではないスタジオのスタッフさんにやってもらうと簡単にその難しい課題をクリアしてしまいます。それは体の使い方、特に体幹がいいからにほかなりません。

 ボルタリングはこの体幹を鍛えるには最適なスポーツの一つと言えます。体幹を鍛えるためには柔軟性、バランス感覚も必要になってきます。また、ルートも考えなくてはならないので、頭もフル回転します。もちろん筋力も必要です。その筋肉も偏ったものではなく、指、肩、腕、背中、お腹、腿(もも)、足先、足首など全体の筋肉と頭を総動員しなくてはなりません。

 原さんは「クライミングをやると自然に痩せていきますよ。いや、痩せるというより締まると言った方が適切かもしれません。お客さんの中でもやっているうちに痩せたという人はけっこういらっしゃいます。でも、最初から痩せる目的で来るお客さんはほとんどいませんね。楽しみたいという感覚で来られます。そのうちに『もう少し難しい課題を克服するためには、あと1㎏痩せないと』という風に自分で生活や食事まで変えていくんですね。筋力も知らないうちについてきますから、理想的な体になっていくのだと思います。とにかくボルダリングで一番大切なことは継続することです。長く続けていくうちに素晴らしい体になっていくので、結果的にダイエットには有効だと思います」と、ボルタリングのストレッチ効果、ダイエット効果を話してくれました。

 こうみるとゲーム感覚で始められ、そしてどんどんハマっていくうちに、体の筋肉や体幹も鍛えら、頭の体操にも適しているというマルチなスポーツであることが分かります。このように魅力満点のボルタリングですが、次回からは実践編として、10級・9級のクリアの仕方をお伝えしたいと思います。

《取材協力》
【クライミングジム RISE(ライズ)】
・営業時間:10~24時(年中無休)
・住所:横浜市戸塚区上倉田町479-2 東横ビル上倉田B1(JR東海道線・横須賀線、横浜市営地下鉄戸塚駅東口下車5分)
・電話:045-443-6009
・料金:会員登録料 1,500円、施設利用料 1,800円(一般)、大学生・専門学校・シニア 1,500円、高校生以下 1,000円(以上、すべて税別)。その他詳細は直接お問い合わせください。
・専用ホームページ:http://www.climbrise.com/

<Text & Photo : 青木秀道(H14)>