スポーツ時の怪我や疲れ予防に。テーピングの効果・種類・注意点をトレーナーが解説
スポーツ観戦をしていると、選手がテーピングをしているのを目にすることがあります。このテーピングはいったい何のために、どのような目的で行っているのでしょうか。ここではアスリートが活用しているテーピングについて、基礎知識を学んでいきましょう。
テーピングの効果とは
まずは、テーピングを巻くことで期待できる効果を確認していきましょう。
◆可動域の制限
テーピングを巻くことで、特定の動きに対する関節の可動域を制限することができます。ケガ後は特定の動きに痛みがあったり、不安定性さがある中でプレイすることも少なくありません。そのような場合は、できるだけ痛みを出さずにプレイできるようにテーピングを活用します。
◆ケガの予防
ケガをしていなくても、予防でテーピングを活用する場合があります。競技するスポーツによって、起こりやすい傷害は異なります。傷害が起こりやすい部位に対しテーピングを巻くことで、ケガのリスクを低くすることが可能です。
◆応急処置
ケガをした直後に患部を固定したり、圧迫するためにテーピングを活用することもあります。テーピングを行うことで患部が動くのを極力少なくし、症状の悪化を防ぐことが目的です。関節はもちろん、筋肉のケガに対しても応急処置として活用されます。
◆疲労の回復
特定のテーピングには筋肉の伸縮を助け、痛みや疲労を取り除く効果が期待できるものも。動作で痛みがある急性の傷害ではなく、慢性の痛みに効果的です。
テーピングの種類
テーピングといっても種類は多様。それぞれの特徴を覚えておきましょう。
◆非伸縮タイプ
テーピングには伸縮するものとしないものがあり、それぞれ特徴が異なります。状況によって使い分けましょう。伸縮しないテープは、関節をしっかり固定する役割を持っています。これに対し非伸縮タイプのテープは「ホワイトテープ」と呼ばれる白いテープで、足首の固定や指の保護などによく使われるものです。
◆伸縮タイプ
伸縮性のあるテープは、非伸縮タイプのテープに比べ固定力は弱いものの、関節可動域の制限を少なくできるという特徴があります。それほど固定を必要としない場合や、ガチガチに固定することでプレイに支障が出るのを防ぎたいときに活用されるタイプです。伸縮タイプも、種類によって伸び縮みする強さが異なります。基本的には、肌色(茶色)のテープが伸縮性のあるテープです。
◆キネシオロジーテープ
固定目的のテーピングと異なり、筋肉をサポートする目的のテーピングがキネシオロジーテープです。固定力は弱いので、関節の固定という目的ではあまり使われません。キネシオロジーテープは筋肉の伸縮力に近い構造になっており、筋肉の収縮を助けたり、皮膚や筋膜などを刺激して体液の循環をよくする働きを持っています。
また、筋肉の張りや神経痛など、スポーツだけでなく日常生活から起こる痛みに対しても効果が期待できます。一般的には肌色のテープですが、最近ではピンクやブルーなどカラフルな色も増えてきました。
テーピングを巻くときの注意点
テーピングは、ただ巻けばいいというわけではありません。巻く際に注意するポイントを確認し、正しく使用しましょう。
<防ぎたい動作によって巻き方が異なる>
固定するためのテーピングには、決まった巻き方があります。その巻き方を知らないと、効果を最大限に発揮できません。テーピングは間違って巻くと、逆にケガをしやすくなってしまう場合もあるのです。ですから適当に巻かず、正しい巻き方に沿って活用しましょう。
<テーピングの効果は長時間続かない>
テーピングは動作によって、少しずつズレや剥がれが起きてしまいます。そのため、長時間効果を持続させることはできません。特に固定するための非伸縮テープは、動いているうちにどんどん緩くなって固定力が失われていくでしょう。たとえば試合前のウォーミングアップ時に巻いたテーピングをそのままにして試合に臨むと、試合中の固定力はかなり低い状態になってしまいます。試合など大切な場面でテーピングを巻く際は、試合直前にするようにしましょう。試合中でも、休憩時間があればその度に巻き直した方が安心です。ただし巻く際は、患部の汗などをしっかり拭き取ってから巻くようにしてください。
<キツく巻き過ぎない>
初心者に多い間違いが、テープを巻く強さです。ガッチリ固定したいからといって、キツく巻き過ぎてしまうことは避けましょう。血行が悪くなり、神経障害などが起こってしまうかもしれません。また、テープと皮膚の境目の部分が擦れて、擦過傷となってしまう場合があります。そのため、大事なところはグッと締め、それ以外のところは締めずに巻くテクニックが必要です。何度も練習して、どの程度の強さが適しているか確認してみましょう。
おわりに
テーピングは誰でも活用できるサポートアイテムです。スポーツ時だけでなく、日常生活でケガをしたときや、疲れを感じたときにも効果が期待できます。ぜひ、積極的に活用してみましょう。
[著者プロフィール]
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。運営協力メディア「#トレラブ(https://tr-lv.com/)」などで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。日本トレーニング指導者協会 JATI-ATI
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<Text:和田拓巳/Photo:Getty Images>