大人が「反復横とび」を毎日やるとどうなる?意外と鍛えられる筋肉とは
体育館の床に引かれた3本のラインの上を、「始め!」の合図で息を切らしながら左右に動いた記憶。あの反復横とびを、大人になった今、毎日の習慣にしたらどうなるのでしょうか。
鍛えられる筋肉や期待できる健康効果、そして毎日続けるとどんな変化が訪れるのか。まえだ整形外科リウマチクリニック院長・前田 俊恒先生監修のもとお届けします。
反復横とびとはどんな運動?
反復横とびは、床に引いた3本のラインを、横方向へのサイドステップで行き来する運動です。

文部科学省の新体力テストでは20〜64歳向けにも採用されていて、中央のラインと両側100cmのラインを、20秒間で何回通過できるかを測ります。
器具がいらず、横に2〜3mほどのスペースがあれば始められるのは、忙しい大人にとって大きな魅力です。体を素早く動かす力(敏捷性)を保つことは、転倒やけがの予防、生活の質の向上につながると考えられます。
反復横とびで鍛えられる筋肉は? 意外な部位が鍛えられる
反復横とびは前後ではなく横に動くため、普段の生活ではあまり使わない筋肉にも刺激が入りやすい運動と考えられます。ここでは、使われやすい4つの部位を順に見ていきましょう。
内ももの筋肉(内転筋群)

内ももの筋肉(内転筋群)は、脚を内側に引き寄せる働きをもっています。反復横とびでは、外へ踏み出した脚を中央へ戻すときや、床を蹴って向きを切り返すときに働きやすい部位です。
デスクワーク中心の生活では意識しにくい筋肉なので、動かすきっかけになるかもしれません。
お尻の横の筋肉(中臀筋)
お尻の横にある中臀筋は、片脚で立ったときに骨盤が傾かないよう支える筋肉です。膝を曲げて腰を落とす「サイドステップ」でも鍛えられる部位ですね。

太もも・ふくらはぎの筋肉
太ももの前側(大腿四頭筋)は、低く構えた姿勢を保ち、床を蹴り出す場面で働きます。ふくらはぎは蹴り出しの力を生み、足首まわりの筋肉は、切り返しで足首がぐらつかないよう支えます。
素早い動きの土台を、下半身全体で支えているイメージです。
体幹(腹斜筋など)
体幹の側面にある腹斜筋は、上半身がひねれたり、左右に傾いたりするのを抑える筋肉です。

反復横とびでは、脚だけでなく、お腹や背中などの体幹の筋肉も働きます。左右に移動したり、急に方向を変えたりするときには、上半身が大きくぐらつかないように姿勢を安定させる必要があるためです。
ただし、頭や上半身を動かさずに固定する必要はありません。体全体を自然に左右へ移動させながら、バランスを保つことが大切です。
反復横とびにはどんな効果がある? 大人が取り入れるメリット
反復横とびに期待されるのは、動きの俊敏さから息の上がりやすさまで幅広い変化です。ただ、反復横とびだけを長く追った研究は多くないため、近い運動の研究も交えて紹介します。
敏捷性・バランス能力を養うサポート
敏捷性とは、状況を脳が判断して、体が素早く正しく反応する力のことです。
高齢者を対象とした研究では、ラダーを使ったトレーニングを週2回、14週間続けた結果、敏捷性やバランス能力、筋パワー(どれだけ速く力を発揮できるか)などの改善が報告されています(※1)。
また、複数の研究をまとめたメタ分析でも、方向転換や速度変化を取り入れた運動が、筋力やバランス能力の向上に役立つ可能性が示されています(※2)。
これらは反復横とびそのものを検証した研究ではありませんが、左右に素早く移動する反復横とびにも、こうした能力を鍛える運動としての共通点があります。
(※1)Effect of agility ladder training with a cognitive task (dual task) on physical and cognitive functions: a randomized study
(※2)Effects of multimodal agility-like exercise training compared to inactive controls and alternative training on physical performance in older adults: a systematic review and meta-analysis
心肺機能を高めるきっかけになる
全力で行う反復横とびは、短時間でも息が弾みやすい運動です。
短時間の強めの運動を1日に数回取り入れる「エクササイズスナック」という運動方法があります。2026年に発表された研究では、運動習慣の少ない成人や高齢者を対象とした11件の試験を分析。その結果、運動習慣の少ない成人では、心肺持久力の改善が確認されました(※3)。
ただし、研究で用いられた運動は主に階段昇降などであり、反復横とびでも同じ効果が得られると証明されたわけではありません。
(※3)Effect of exercise snacks on fitness and cardiometabolic health in physically inactive individuals: systematic review and meta-analysis
下半身の引き締めが期待される
反復横とびは、太ももやふくらはぎ、お尻など、下半身の筋肉を幅広く使う運動です。
左右への素早い移動を繰り返すことで脚の筋肉に刺激が加わり、継続することで筋力の維持・向上が期待できます。

ただし、反復横とびだけで脚が細くなるとは限りません。見た目の引き締めには体脂肪も関係するため、食事の見直しやほかの運動と組み合わせることが大切です。
反復横とびは痩せる? 期待できるダイエット効果
結論からいうと、反復横とびだけで大きく体重を落とすのは難しいと考えられます。
米国スポーツ医学会(ACSM)の研究報告では、早歩きなどの中強度の運動を週150〜250分行っても、体重減少は比較的小さいとされています。大きな減量を目指すには、さらに多くの身体活動が必要になる可能性があります。
また、短時間の運動を1日に数回繰り返す「エクササイズスナック」に関する2026年のメタ分析では、心肺持久力の改善が確認された一方、体脂肪や血圧については統計的に有意な改善が認められませんでした(※3)。
ただし、いずれも反復横とびそのものを調べた研究ではありません。
ダイエットが目的なら、食事の見直しとウォーキングなどの続けやすい運動を基本にしながら、反復横とびを運動習慣のひとつとして取り入れるのがよいでしょう。
反復横とびを毎日続けたときの変化【1週間〜1か月】
ここでは、運動に慣れていない大人が反復横とびを毎日続けた場合、どんな変化が起きやすいのか、週ごとに予想してみます。あくまで目安として、個人差があることを前提にしてください。
1週目|横に動く感覚に慣れ、内ももや太ももに疲れを感じる
筋肉痛が出てくる人もいるでしょう。内ももや太ももに張りを感じる人もいます。普段運動をしていないと、頭のイメージに体がついてこないものです。痛みが強い日は無理せず休みましょう。
2週目|動きがスムーズになってくる
筋トレを始めた初期は、筋肉が大きくなる前に、神経の働きが整って力を発揮しやすくなるとされています。足の運びやタイミングがつかめて、動きがなめらかになったと感じる人もいるでしょう。
3週目|切り返しの軽さを感じる人も
同じ動作をくり返すと、筋肉をうまく動かすための神経の適応が進むとされています。左右の切り返しが早くなる人も出てくる頃です。
1ヶ月|下半身の安定感に変化を感じる人も
先述した敏捷性トレーニングの試験では、対象が高齢者ではありますが、週2回、14週間続けた結果、バランスや敏捷性の向上、筋パワーの向上が報告されています(※1)。
大人が1か月続けた場合は、脚の踏ん張りやふらつきにくさを感じる人もいる、という程度に捉えておきましょう。
反復横とびの正しいやり方
テストと同じ形式なら、床に中央のラインと、その両側100cmのラインをテープなどで引いて行います。
1. 中央のラインをまたいで立ち、足を肩幅よりやや広く開いて、腰を軽く落とす
2.右へサイドステップして、右のラインに足が触れるまで動く
3.中央へ戻り、続けて左のラインに足が触れるまで動く
4.右、中央、左、中央で4回と数え、20秒間くり返す

コツは、動く方向と反対の足で床を蹴ること、頭を中央に残して足だけを動かすこと、上に跳ばず重心を低く保つことです。
始める前に足首やアキレス腱、膝をほぐし、コンクリートの上は避けて、整地された滑りにくい場所で行いましょう。
反復横とびは毎日やっても大丈夫? 1日どのくらいやるといい?
反復横とびに特化した回数や頻度の基準はないため、近い運動の目安を参考にします。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、筋力トレーニングは成人に週2〜3日が推奨されています。個人差があるため、無理のない強度・時間・頻度から始めてください。
最初は週2〜3日、1回につき20秒を2〜3セット、間に休憩をはさむ形が始めやすいでしょう。

20秒は、新体力テストで1回の測定に使われている時間です。疲れが翌日に残らなくなったら、日数を増やしてもかまいません。ただし毎日行う場合も、足首や膝に違和感が出た日は休むことが大切です。
やりすぎるとデメリットも。足首・膝・ふくらはぎの痛みに注意
反復横とびは横方向への急な切り返しをくり返すため、足首に負担がかかりやすい運動です。
足首への負担
足首の捻挫の多くは、ジャンプの着地や切り返しの動作で足首が内側にひねられて起こるとされ、いったん痛めると再発しやすいことも知られています。
膝への負担
膝にも注意が必要です。片脚で踏ん張る場面で膝が内外にぶれる動きは、膝のけがの危険因子のひとつとされています。
ふくらはぎへの負担
ふくらはぎは蹴り出しをくり返すと張りやすく、筋肉痛を伴う運動を繰り返すと運動器の障害につながる可能性が危惧されています。
対策は、準備運動をして、滑りにくい床で、膝とつま先の向きをそろえて行うことです。痛みや腫れが数日たっても引かないときは、早めに整形外科などに相談してください。
反復横とびを控えた方がいい人
医師から運動を制限されている方や、足首・膝・股関節に痛みやけがのある方は、始める前に相談してください。高血圧や糖尿病、心臓の病気などで治療中の方も、かかりつけ医や整形外科に確認しましょう。
文部科学省の新体力テストの実施要項では、医師から運動を制限されている人や、発熱・倦怠感などがある人には実施しないとされています。
厚生労働省のガイドでも、運動で悪化する整形外科的な問題や高血圧がある場合は注意が必要とされています。当てはまる方は、ウォーキングなど負担の少ない運動から検討しましょう。
監修者プロフィール
前田 俊恒(まえだ としひさ)
まえだ整形外科リウマチクリニック 院長
医学博士/整形外科専門医/リウマチ専門医/リハビリテーション科専門医。肩こり・腰痛・関節痛などの慢性疼痛から、関節リウマチ、骨粗鬆症、スポーツ障害まで幅広く診療。日常生活に根ざした運動指導・セルフケアの啓発にも力を入れている。肩や膝、腰の痛みなど日常の体の不調や身近な健康情報についても、医学的根拠に基づいた分かりやすい解説を行っている。https://maedaseikei.jp
<Text:外薗 拓 Edit:編集部>


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