2020年10月22日

心を整える「瞑想」、具体的なやり方とは。効果と実践方法を専門家に聞いた

多くのメディアで取り上げられ、企業でも導入したことで一般化した「マインドフルネス」。過去でも未来でもなく「今、ここにある私」に意識を向けるためのプログラムで、瞑想がベースになっています。でも「瞑想」と言われると難しそうで、ちょっと怖い気もする……。

そんなときは、ヨガを通してトライする手も! ヨガと瞑想との関連性を探ってみました。

ヨガにおける「瞑想」って、どんなもの?

ヨガには「瞑想」が必要不可欠……、漠然とそう知ってはいても、「木のポーズ」や「猫のポーズ」など、さまざまな動きを通して一体どうやって瞑想できるのか、ピンとこない方もいるはず。そもそも「瞑想」ってどんなものなのでしょうか? 「オンフルールヨガスタジオ&カレッジ」銀座本校でシニアインストラクターを務める、白石久美さんにお聞きしました。

「オンフルールヨガスタジオ&カレッジ」銀座本校シニアインストラクター白石久美さん

「ヨガの歴史をさかのぼると、そもそも『ヨガ=瞑想』であったことがわかります。人類が普遍的に抱える苦悩や、生きることの辛さから逃れるために瞑想を取り入れたことが、ヨガの起源です。でも、ただ座って瞑想するのは難しい。そこでポーズをとって、体の動きと呼吸に集中し、瞑想の効果を高めていくという、今あるヨガの形になっていきました」

つまり、ヨガはもともと宗教儀礼に近いようなものだったそう。そう思うとやはり瞑想とはかなり高尚で、ハードルの高いものに感じてしまうのですが……。

「瞑想とは、難しいことを考える時間ではありません。私たちは意外に頭のなかで『今の自分』にフォーカスすることが少ないんです。過去のことを考えたり、先のことを想像したりしている時間がほとんどで、今この瞬間の自分がどういう状態なのかという意識が抜け落ちてしまうんですね。そうすると、自分のことがわかっているようで、実はわかっていない状態になります」

「そのうちに漠然とした不安を抱いて、自信をなくしたり、本当にしたいことがわからなくなったりしてしまう。そんなとき、ヨガを通して瞑想の時間を取ると、心の内側が静かになって、本来の自分のありありとした姿が見えてきます。本当の気持ちや願望が見えてくると、穏やかに過ごせるようになるんですよ」 

心の軸を整えるための「瞑想」、具体的にどうやるの?

瞑想というと、座禅を組んでひたすら我慢するイメージが強いですが、大切なのは「呼吸に集中すること」だと白石さんは言います。

「普通の方が日常生活のなかで瞑想を楽しむために、今のヨガがあります。私はクラスのなかで『瞑想をしましょう』とは言わず、『ちょっと目を閉じて、静かな時間を感じてみましょう』とお伝えしています。呼吸を意識することって、いちばん『今この瞬間』を感じ取りやすいんです。呼吸の様子を観察しながら、心の動きを止めていく。余計なことを考えず、ただゆっくりと呼吸しながら『今』に集中します」

1時間程度のクラスでは、最初に心を落ち着けるために目を閉じて、少し瞑想します。そのあと動いて、いくつかのポーズを取ったあと、最後に「動き終えた私は今、どんな状態か」を確認するためにまた目を閉じる流れ。でも、前後の瞑想時間だけでなく、ポーズをとることもまた瞑想につながるそうです。

「ヨガでは、ポーズは人に見せるためのものではなく、自分を感じるための動きです。動いていると『今、ここの筋肉を動かして、こういうポーズを作っている』と、身に起きていることがわかりやすいですよね。その練習を積み重ね、体に起きていることを実感するうちに、心も『今の私はこういう状態だ』と感じ取れる癖がついてきます。ヨガにさまざまなポーズがあるのは、そのためだと私は思います」

ヨガを知らないと「瞑想に適したポーズがある」と考えがちですが、すべてのポーズが瞑想につながっている、ということでしょうか?

「私は個人個人で違うと思っています。さまざまなポーズを試してみて、自分がどんな気持ちになるかしだいで変わる。すがすがしい気持ちになれるポーズがあれば朝にとり入れる、心が落ち着くポーズがあれば夜眠る前におこなうなど、自分の気持ちしだいで最適なポーズを見つけていくのがベストだと思います」

白石さんは「ヨガはいつも自分主体」と言います。インストラクターの助けは受けられるけれど、自分の状態を探るのは自分自身。だからこそ、感情に素直になれて、心の調整につながるのかもしれません。

痩身目的であっても、瞑想効果は得られる?

リラクゼーション目的でヨガに通う人もいますが、同時に「痩せたいからヨガ」「体を引き締めたいからヨガ」という人もいるもの。目的が違っていても、瞑想による効果は感じられますか?

「ダイエット目的であっても、しだいにヨガ本来の姿である瞑想の効果があらわれてくると思います。筋肉がついて体が変わってくるうちに、自分を信頼できるようになったり、自分の体を大事にできるようになったりする。そのうち、気持ちが落ち着き、視野が広がってきて、結果的にダイエットだけがヨガをする目的ではなくなる方が多いです」

体の変化より、心の変化はキャッチしにくいもの。どれくらい練習を重ねれば、ヨガを通して「本来の私」を意識できるようになるのでしょうか?

「感覚の鋭さには個人差がありますが、1年ほど続けると、ヨガ本来が持っているエッセンスを感じられるのではないかと思います。堅苦しく『瞑想』と考えなくても、体が気持ちよくなって、楽しい気分が続いて、日常が心地いいと感じられるようになるだけで十分に変化できたと思うんです」

白石さんはいつも「疲れているときほど、ヨガに来てくださいね」と伝えているそう。

「体を動かそうと思うと、つい『元気なときだけ行こう』と考えがち。でも、ヨガは体と心、どちらのバランスも取るためのもの。疲れているときはヨガを通して、心身ともに『私の中心軸、どこに傾いてるかな?』と探ることができます。それは、自分にとって心地よい場所を見つけること……、つまり、生き方そのものです。どんな生き方をしたら、自分がハッピーなのか? ヨガはそれを見つけるための手助けになるものなんです」 

私たちは普段、人に合わせて我慢してばかりで、つい本当に感じていることを置き去りにしてしまいがち。「私は何がしたいのかな」「私はどんなときに楽しいのかな」と迷ったとき、ヨガ体験をしてみてはいかがでしょうか? 

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【取材協力】
オンフルールヨガスタジオ&カレッジ 銀座本校
http://www.honfleur.jp/yoga/

<Text:富永明子+アート・サプライ>