サッカー元日本代表・槙野智章さんが語る、“学生とプロ”の違いとは。当時のトレーニング事情を振り返る (3/3)
ほか、サッカーにおいてオススメのトレーニングはありますか。
スプリントトレーニングですね。正しいフォームで正しく走ることをしっかり学んだほうがいいです。速く走る、高く飛ぶ、力を抜いた状態で90分間動くやり方などを覚えることができます。
うまくて速い人の走り方は決まっています。足の接地や腕の振り方、足をついたとき、反対側の軸足がどういう角度で入っているのかなど、速く走るフォームは決まっているんです。それを間違ったフォームで走ると、体に負担がかかるので、肉離れなどが起きてしまう。正しいフォーム、正しい足の接地で走ることはとても大事です。
自分に合う走り方より、決まった走り方を学ぶほうがいい?
はい。鉄板のやり方があります。日本代表やワールドカップの代表選手は全員スプリントトレーニングをしています。僕も7年間やっていました。ターンを速くするとか、ダッと寄せて停止するとか、加速減速も学ぶことができます。
ターン練習に必要なポイントは。
重要なのは初速で足をどこに置くかです。正しいポジションに足を置いて、次はどこに置いたらいいかっていうのを考えながら、怪我をせず速く走れるようになるのもスプリントトレーニングで身につきます。
試合中、足の置く位置なんて毎回考えられないので、正しいところに足を置くというのを体に覚えさせてあげる必要があります。
加速の練習は。
加速も同じです。スピードに乗ったとき、膝をどの高さまで持ってくるとか、どこに着地するとか考えながらやります。
それらを身につけるために必要なのは、やはりお尻の筋肉ですか?
お尻と腹筋下部です。早く走るためには体幹も鍛える必要がありますし、どれが欠けていてもスピードは出ないし、強くならないです。
腹筋はどう鍛えていましたか?
懸垂をしながら両脚を上げたり、足にメディシンボールを挟んで上げ下げしたり。10回3セット、慣れればウォーミングアップ代わりになります。
うまい選手、成功している選手に共通している体の作り方ってあるんですか?
体幹です。体幹がしっかりとしていると全然違うんです。見た目はマッチョなのにぶつかるとすぐ吹っ飛ぶ人もいるし、体は細いのに倒れなくて、自分のボールを維持できる人もいます。細くて体が小さいから弱いとか、大きくてゴツいから強いってわけじゃない。
体幹はどうやって鍛えるのですか?
体幹トレーニングや呼吸法で鍛えます。僕らがやっていたのは、お腹を手でギュッて掴んで、弾くお腹を膨らますというやり方です。弾いた状態(お腹に力を入れた状態)をキープできる、つまりお腹に力を入れたまま会話や呼吸ができるかということが、“体幹の強い・弱い“につながります。
メッシやイニエスタも、力を入れるところと抜くところの使い分けがとてもうまいので、ぶつかるとすごく硬い。体幹が強いんです。
体幹トレーニングは何歳くらいから始めるといいでしょうか?
小学校からやったほうがいいです。30秒くらい体勢をキープするとか、平均台とか、遊び感覚でやると自然と体に身についていきますよ。
プロフィール
槙野智章
1987年5月生まれ、広島県出身。00年にサンフレッチェ広島Jr.ユースに入団。以降11年間広島でプレーし、チームの中心選手としてリーグ戦に全試合出場する。
10年にJリーグ・ベストイレブンに選出。年間で34試合に出場し、警告や退場は1度もなく、フェアプレー個人賞を受賞する。同年12月ドイツ・ブンデスリーガ1部の古豪1.FCケルンに入団。戦いの舞台を欧州へ移した後、12年浦和レッドダイヤモンズに移籍する。21年、10年在籍した浦和からの退団を発表。ラストゲームとなった天皇杯決勝では、劇的ゴールを挙げ有終の美を飾り、22年ヴィッセル神戸に移籍。開幕戦となった名古屋グランパス戦でJ1通算400試合を達成する。
そのシーズン終了後に電撃的に引退を発表し、槙野劇場の第2章と題し指導者としてのキャリアを歩むべく、サッカーを通じてYoutubeチャンネルや自身のSNSで様々な事を発信するほか、Jリーグで指揮を執ることが可能となる「S級ライセンス」取得を目指している。
<Text:和栗恵/Edit:TRIADICJAPAN/Photo:TOSHIYUKI MAEGAWA>