ライフスタイル
2020年6月24日

なぜ手は“第二の脳”と呼ばれるのか。手遊びトレーニングで脳の活性化を促す

 「第2の脳」と言われる「手」。手を使ったトレーニング(以下、手遊びトレーニング)を行っていると、脳が活性化するというのはご存知でしょうか。幼児・高校の体育指導などを通してさまざまな子どもたちのスポーツ教育に携わってきた筆者は、授業などで“手遊びトレーニング”を取り入れてきました。

 私の経験上、手遊びトレーニングが上達しやすい人ほど、学力レベルが高い傾向にあると感じています。手遊びトレーニングと学力の関係を断言することはできませんが、いろいろなことに手を使うのは、脳の発達にもよいのではないでしょうか。

 ここでは手を使うことについて科学的観点から捉え、いくつか手遊びトレーニングをご紹介していきます。ぜひ、チャレンジしてみてください。

なぜ手は「第2の脳」と言われるのか

 まず、手が「第2の脳」と言われる理由から探ってみましょう。

 脳は指令を出して体を動かしたり、体からの指令を受けて感覚を感じたりしています。しかし体の面積と脳の面積は、比例しているわけではありません。体では狭い範囲の感覚でも、脳では広い範囲で感じ取っていたり、逆に体では広い範囲で感じても、脳では狭い範囲での感覚を捉えることもあります。

 少し実験してみましょう。後ろから、何本かの指で背中を1度に突いてもらってください。その本数を当てるだけですので、何回かやってみてください。はたして、正確に答えることができるでしょうか。おそらく、難しいと思います。背中は、体においては広範囲ですが、脳では狭範囲なのです。

脳にとって手は広範囲の存在

 一方で、手は体においては狭範囲ですが、脳だと広範囲に渡っています。つまり手を使うと脳の広範囲を刺激し、活性化できるということ。ちなみに、脳のどの部分がどのくらい体を担当しているか地図にしたものを、「ペンフィールドの脳マップ」といいます。

 「家事や農作業をしなくなったら認知症になってしまった」という話をよく聞きます。また、保育現場でも、興奮している子どもを落ち着かせ、話に集中できるよう手遊びを導入しています。左右で異なる動きをする手遊びは、脳を活性化させるのに効果的です。具体的な手遊びトレーニングを紹介していきましょう。

具体的な手遊びトレーニング

すりすりトントン

1.イスに座り、太ももを使って行います。
2.片手はパーで、太ももを擦るように前後にすりすりします。もう片手はグーで、太ももを叩くように上下にトントンします。
3.「せーの」で、左右の手で行っていることを入れ替えます。

 できるようになったら、「チョキチョキすりすり」でも行ってみましょう。チョキチョキは空中で、指をハサミのように動かして行います。

ずれずれカウント

1.指で10まで数えます。ただし片手だけ最初から親指を折っていてください。
2.左右の手を1つずつズレさせながらカウントしていきます。
3.数え終わったときに最初の形に戻れば正解です。

 できるようになったら2個ずれ、3個ずれ、4個ずれ、5個ずれにも挑戦しましょう。

かたつむりエレベーター

1.片手はチョキ、もう片手でグーを出し、チョキの上に乗せてかたつむりにします。
2.チョキの手を上に持ってきてグーにします。グーだった手は同時にチョキにします。
3.これを繰り返します。

 できるようになったらパーとグー、チョキとパーでもやってみましょう。

指揮者

1.片手で上下に2拍子を刻んでください。
2.もう片手は三角形で3拍子を刻んでください。
3.できるようになったら、左右の手を交換しましょう。

ぐるぐるパンチ

1.片方の腕は前方に伸ばし、ぐるぐる回します。
2.もう片方の腕は前方へパンチする真似をします。
3.できるようになったら、「せーの」で左右の腕で行っていることを入れ替えましょう。

 何度も繰り返してみましょう。

できなくて何度も練習しているときがもっとも効果的

 上手にできたでしょうか。おそらく、思ったより難しく感じたはずです。ぜひ継続して挑戦し、脳を活性化してください。

 ひとつ注意点があります。これらの手遊びトレーニングは、「できたらすごい」と思うかもしれません。しかし実のところ、1度できてしまうと、脳にとってもう価値はなくなってしまいます。つまり、できずに工夫しているときがもっとも脳細胞を刺激し、活性化できているのです。そのため、簡単にできるようになったら次へと挑戦しましょう。

[プロフィール]
赤堀達也(あかほり・たつや)
1975年・静岡県出身。小・中・大学でバスケを指導し、独創的理論・論理的指導で育成する。体力テスト最低水準校で県優勝、無名選手達で東海1部にスピード昇格。最高は全国準優勝。4月より群馬医療福祉大学助教から旭川大学短期大学部准教授となり、バスケで培った理論を応用して幼児体育・健康の研究を行う。またパーソナルストレッチやスポーツスタッキング、部活動改革も取り組んでいる。
[HP] https://mt-a.jimdo.com

<Text:赤堀達也/Photo:Getty Images>