インタビュー
2019年12月2日

いろいろなスポーツをしてきたことが、今、自分の財産になっている。カヌー日本代表・羽根田卓也(後編)|子どもの頃こんな習い事してました #28 (2/2)

――カヌー以外は小学生のときに辞めてしまっていますが、カヌーを辞めたいと思ったことはありますか。

「辞めたいんだけど」と切り出したことはありません。「あの川は怖いから行きたくない」とウジウジしたことはありますが、ここまでやったからには辞めるに辞められない、とどこかで思っていました。

どこまで子どもに期待すべきか、エネルギーをかけるか

――将来、自分の子どもに習わせたいことは?

難しいですね。習い事もタダではないので、やっぱり親としては最小限の投資で最大の結果を得たいものだと思う(笑)。どれだけ子どもに期待をして、どこまでお金やエネルギーをかけるべきか難しい。親の期待にどれだけ子どもが応えてくれるかわからない。続けても芽が出ない習い事のほうが多いはずだし。

とはいえ、やらせてあげないことには何も始まらないし、将来のことを考えるばかりが習い事じゃないとも思う。自分はやらせてもらっていい人生になったと思えているから、余裕があったらいろんなことを習わせてあげたいと思っています。

――カヌーはお金がかかりそうです。

習うこと自体は普通の習い事程度だと思います。ただ、カヌーを続けられる環境があるかどうかですね。教えてくれる人が近くにいるか、練習する場所が近くにあるかどうか。また、本格的に選手を目指すのであれば、自分のカヌーやパドルが必要になったり、遠征したりしなければならないので、趣味として習うよりはお金はかかります。自分の場合は、小さいころは先輩のおさがりのカヌーを安く買ってもらうなどしていました。

カヌーをやってみたいという子どもは増えていると聞きます。競技としてもレジャーとしても楽しいスポーツなので、一度、体験会に来てくれたらうれしいですね。いきなり選手としてでなくても、興味を持ったら続けてみてほしい。

――激流の怖さは慣れるしかない?

慣れるしかないですね。段階を飛ばすとひっくり返って怖い思いをするので、ちょっとずつステップアップするのが正しい方法。怖さを克服したときが楽しいとき。克服すればするほど怖さが快感に変わってくる。そこがカヌーのおもしろさのひとつです。

――オフシーズンのときは何をしていますか。今、習いたいことはありますか。

オフシーズンはクロスカントリースキーやスノーボードをしています。習いたいことは英会話。子どものときに習っていたけど身につかなかったので(笑)。ピアノでもギターでも、音楽の習い事を何かひとつしておきたかったという思いもあります。

――2020年の東京オリンピックに向けて、今の気持ちを教えてください。

東京オリンピックは自分にとって競技の集大成となる大会で、年齢的にも実りが期待できるいい状態で迎えられる大会だと思っています。自国開催ということで日本では注目度が高い大会になるでしょうし、これまで自分がやってきたこと、やらせてもらってきたことのひとつの形を見せられればいいですね。

2016年のリオデジャネイロオリンピックでは表彰台に上がることができ、今回はそれ以上の成績を求められていると思うのでその期待に応えることが自分の仕事だと思っています。今のところ、プレッシャーと楽しみという気持ちが半々です。

[プロフィール]
羽根田卓也(はねだ・たくや)
1987年生まれ、愛知県出身。ミキハウス所属。9歳から父と兄の影響でカヌースラロームを始める。高校卒業と同時に強豪国のスロバキアに単身渡り、現地の大学に在籍しながらトレーニング。2008年北京オリンピック14位、2012年ロンドンオリンピック7位入賞を経て、2016年リオデジャネイロオリンピックでアジア初のカヌー競技でのメダルとなる銅メダルを獲得。2017年、世界選手権フランス大会決勝進出7位。2018年、アジア競技大会で金メダルを獲得。2020年東京オリンピックでの連続メダル獲得を目指す。

<Text:安楽由紀子/Edit:丸山美紀(アート・サプライ)/Photo:小島マサヒロ>

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