インタビュー
2023年3月23日

世界フィギュアスケート選手権2023|フィギュアスケーター小塚崇彦さんに聞く、注目の日本人選手とその見どころは (1/2)

3月22日~26日まで「さいたまスーパーアリーナ」(埼玉県)で開催される「ISU世界フィギュアスケート選手権2023(以下・世界選手権)」。男子、女子、ペア、アイスダンスの4種目が行われ、美しき戦いが繰り広げられます。

今回の注目はなんといっても、日本人選手の活躍。最強日本の選手たちの注目ポイント、見どころを2010年バンクーバー冬季オリンピック代表で、世界選手権に7回出場したフィギュアスケーターの小塚崇彦さんに聞きました。

総合力でトップを走り続ける日本男子

―今シーズン、国際大会で日本人選手が表彰台にあがり、圧倒的な強さを見せています。今回の世界選手権でも日本人選手の表彰台が注目されていますね。

表彰台を日本人選手が独占する…とまではいかないかもしれませんが、それでも世界を席巻する実力は個々の選手たちが持っているので、メダルは期待していいかと思います。ただ、世界選手権という場所は何が起こるかは、わかりません。いくら実力があってもたったひとつのミスで大きく順位が変わることがあります。

―前回の世界選手権チャンピオンの宇野昌磨選手は、2022年グランプリファイナルも圧巻の演技を見せ、優勝しました。今回の世界選手権では二連覇を期待してしまいます。

宇野選手は自分の持っている実力を最大限に発揮できるという点では、全選手の中で飛びぬけています。2022年全日本フィギュアスケート選手権(以下・全日本)のフリーではジャンプなどでいくつかミスがありましたが、たとえミスがあったとしても、ほかの要素で補う力があるのが宇野選手の強み。ジャンプ以外にもスケーティングスキル、スピン、ステップなど総合力でいうと、優勝の一番近いところにいると思います。

―男子はほかにも高い技術を持ち、なおかつ表現力が豊かな選手たちが代表に名を連ねています。山本草太選手は、2022年グランプリファイナル銀メダリストに輝きました。

グランプリファイナルでは彼本来の実力を出し切りました。山本選手は、2015年世界ジュニア選手権で銀メダルをとり、そのとき優勝した宇野選手とともに日本人ワンツーで表彰台に上りました。そのときの調子が戻ってきたように思えます。彼は、これまで右足首の骨折、手術など紆余曲折がありましたが、その経験こそが、彼を支え、強い気持ちにつながっているのだと思います。

―経験豊富といえば、友野一希選手もそうです。これまでは代打での出場でしたが、今回はその手で出場の切符をつかみ取り、頼もしい存在です。

友野選手は明るい性格で、努力して、「自分はこうなりたい、こういうスケーターになりたい」という『色』を追い求めているスケーターだと思います。自分自身の色、個性をしっかり持ち合わせており、それが世界で高く評価されているのでしょう。

高い技術と華やかさを持ち合わせた日本女子

―女子も日本勢が圧倒的に強いですね。前回の世界選手権で優勝した坂本花織選手の強さについて伺えますか。

浅田真央さんの言葉を借りれば…、浅田さんもおそらく指導を受けていた佐藤信夫先生から、言われていたことだと思いますが、「スピードに勝る魅力はない」という表現がまさに坂本選手に当てはまると思います。実際に彼女の滑りを現地で見ると、スポーツカーに例えられるぐらいのスピードで、テレビでは感じきれないような迫力があるんです。スピードに加えて、そこから繰り出すジャンプの高さ、幅が彼女の強さですね。

―2022年グランプリファイナルで優勝した三原舞依選手は、空気をまとうようなスケーティングで「妖精の滑り」と言われています。

さらっとやっているように見えるけれども、すごく難しいことをやっているんです。それでいて、とても人間らしく見える。人間が氷上で人間らしくいるってすごく難しいことなんです。滑っている最中、「ここをこうしよう」と頭で考えているうちに、動きがぎこちなくなったりしてしまうんですが、彼女の場合はいつも自然体。自然体の人間らしさを見せられるのが、彼女の強みでもあります。

さらに三原選手は、プログラム全体から彼女の人生が見えてくるのも魅力ですね。ちょっと不器用さも見えるところがあり、そこはまだ成長段階にあるのかなと思います。いろんな音楽のプログラムに挑戦しているので、器を広げていってほしいですね。

―渡辺倫果選手はいかがでしょうか。トリプルアクセルという大技に挑み、なおかつ高い表現力で、スケートカナダではグランプリシリーズ初出場ながら初優勝。今シーズン大きく飛躍しました。

全日本はミスが相次ぎ12位でしたが、世界で戦える実力を兼ね備えているのは、今シーズンの国際大会での活躍を見ればわかることです。もともと踊りの部分など表現力に定評がある選手でしたので、あとは当日、その実力を出し切れるように持っていけるか。

フィギュアスケートは自分の実力をいかんなく発揮できるか、ある意味、自分との戦いで、大変な部分もありますが、それも楽しんでもらえたらいいなとは思います。

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