インタビュー
2023年3月23日

世界フィギュアスケート選手権2023|フィギュアスケーター小塚崇彦さんに聞く、注目の日本人選手とその見どころは (2/2)

目覚ましい躍進を遂げる日本のペア&アイスダンス

―日本人ペアの躍進もすごいです。2022年グランプリファイナルを制し、世界一となった三浦璃来選手と木原龍一選手の「りくりゅう」がここまで強くなった理由は何だと考えますか?

2人とも個々で滑っても、ジャンプがしっかりと飛べる実力を持っています。技術の高い2人が組んだこともありますが、何より大きいのはお互いがお互いを思う気持ち。何も言わずとも、目で見て阿吽の呼吸で、伝えられるってとても大事なんです。人によっては「なんでわかってくれないんだよ」って人もいますからね。その点、りくりゅうは、相性がぴったりで、お互いをよく理解しあっている。それが大きいですね。

―カップル競技では、結成3シーズン目のアイスダンス・村元哉中選手と髙橋大輔選手の「かなだい」も日を追うごとに進化し、息もぴったりになっています。

シングルスケーターから転向した髙橋選手が、これほどまでにアイスダンサーとして成長したのは、村元選手の存在が大きいと思いますね。村元選手は、以前、クリス・リードさんとカップルを組んでいて、平昌冬季オリンピックに出場しました。クリスさんは姉のキャシー・リードさんと子供のころからアイスダンスをやっていて、その経験と実績が村元選手に受け継がれ、彼女はアイスダンサーとして大きく成長した。その村元選手と組んだことで、シングルスケーターとして実績のあった髙橋選手が、今度はアイスダンサーとして才能を開花させた。これからがどんどん楽しみなカップルだと思います。

選手のハイライトとなるものを見つけたい

―今回は日本での開催です。やはり地元開催は特別な思いがありますか?

そうですね、やはり地元開催だからこそ感じる温かさみたいなものはありますね。

―2014年、今回と同じ『さいたまスーパーアリーナ』で開催された世界選手権に小塚さんは出場されています。

あのときは、その前にあったソチ冬季オリンピック出場を逃し、世界選手権出場も補欠から代打で急遽決まったため、正直に言うと、試合に向けて、気持ちがあまりのっていませんでした。

気持ちがふわふわしているというかバラバラの状態のまま、試合を迎えたのですが、流れが変わったのはショートプログラムを滑っているときでした。ショートプログラムは『アンスクエア・ダンス』という7拍子のリズムの音楽を使っていたんですが、そのリズムに合わせて会場全体から手拍子が起こったんです。あれはうれしかったですね。手拍子が後押しになり、自分の気持ちものってきて、滑りきることができました。

手拍子の力って大きいなと思いましたし、世界選手権という雰囲気にのまれそうになったときに、気持ちを落ち着かせられたのも地元の会場だったからだと思います。自分が引退してから、同じく『さいたまスーパーアリーナ』で開催された世界選手権を見たとき、「よくこんな広い会場で、ポツンと1人で滑っていたな」と思いましたが、そこは1人じゃなくて、みんなが応援してくれていると感じる瞬間があるから、頑張れるんです。

―小塚さんが世界選手権で楽しみにしていることはありますか?

その選手にとってのハイライトってあると思うんです。この技はこの選手と言いますか。

―具体的にはどんな感じでしょうか。

例えば、「トリプルアクセルと聞いて、誰を思い浮かべますか?」と聞かれたら、僕ならパッと思い浮かべるのは浅田真央さんと伊藤みどりさんです。このようにその選手ならではの象徴的なものを見つけたいんです。

いまの採点方式は細かくて、ルール上、こなさなくてはいけない要素もたくさんあるのですが、以前の6.0の採点方式の時代は、いまよりももう少し自由で自分だけの個性を出す選手が多かった気がします。氷上の細かい氷を投げて雪を表したといえば、ロシアのアレクセイ・ヤグディンとか。

―2002年ソルトレイクシティ冬季オリンピックでも見せたプログラム『Winter』ですね。

そう! そうやってちょっとでも話すと「あれだよね!」って、盛り上がるじゃないですか。そんな風に選手のハイライトってあると思うんです。「この音楽の盛り上がりが来たから、もうすぐあの動きが来るぞ~」と水戸黄門でいう印籠を出すシーンのようなハイライトをそれぞれの選手で見つけたいなと思っています。

その点でいえば、フランス男子代表のアダム・シャオ・イム・ファ選手は楽しみにしている選手の一人です。今シーズンのヨーロッパ選手権を制した男子の注目選手ですが、彼は振り付けにとてもユニークな動きを取り入れています。見ていて楽しいですし、印象にも残ります。

―最後に世界選手権の見どころをお願いします。

フィギュアスケートはスポーツであると同時に芸術であるべきと思っています。ジャンプを何種類飛んだ、回転は足りているかなどを見るのもひとつの楽しみではありますが、そのジャンプがプログラムの一部になっているか、スピンやステップ、技と技の間のつなぎが作品になっているかも大事だと思います。難しいことは考えず、プログラムがひとつの作品としてどう楽しめるかに着目して見てもらいたいと思いますね。

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[プロフィール]
小塚崇彦(こづかたかひこ)
1989年生まれ。愛知県出身。2007年ジュニアグランプリファイナルで日本人初優勝。世界ジュニア選手権でも優勝を果たす。2010年バンクーバー冬季オリンピックに出場、8位入賞。2011年全日本選手権優勝、世界フィギュアスケート選手権2位。2016年現役引退。現在は、フィギュアスケートをはじめとしたスポーツの普及活動を行う一方で、スケート用具開発や全国各地でスケート教室「小塚アカデミー」を開催している。

[お詫びと訂正:2023年3月22日]初出時、村元哉中選手の漢字表記に誤りがございました。訂正してお詫び申し上げます。
(誤)村元或中
(正)村元哉中

<Text:廉屋友美乃/Edit:丸山美紀(アート・サプライ)/Photo:高柳和博(有限会社セブンファクトリー)>

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