「解散したら今までが嘘になる。だから僕らは死ぬまで続ける」ゆでたまご・嶋田隆司先生が語る『キン肉マン』(後編)│熱血!スポーツ漫画制作秘話 #3 (4/4)
それが当たり前だと思ってたんですけど、あまりにも多くなって原稿描く時間もないぞと思って中野さんに相談したら「そんなの書いてるの誰もいないぞ」って言われて(笑)。でも「そこまで君らが読者のことを考えてるなら、それに代わるサービスをしようよ」というところから始まったんです。それで始めたら何千通というハガキが届いて、気が付いた頃には名物になっていました。
——キン肉マンの連載終了後に読み切りを掲載したら、おびただしい数の超人が送られてきたという逸話もありますよね。
『ゆうれい小僧がやってきた」のときも『スクラップ三太夫」のときも送られてきてましたからね、超人が(笑)。超人募集のアイディアの大元は、昔虫プロ(株式会虫プロダクション)のアニメで『ワンサくん』というのがあって。当時僕も中学生くらいのそのアニメを観てたんですけど、何が好きだったかというと、視聴者が考えたワンちゃんがアニメの最後のコーナーに登場して、アニメーションで動くんですよ。それが楽しかったんですよね。
——それはまさに超人募集そのものですね。
だから僕も読者の喜びがわかってたんですよね。選ぶときはできるだけ小さい子のアイディアを優先していました。家電とか文房具とかそういう身の回りのものからくるアイディアとかを優先したいと意識してね。あとは誰と戦わせるか。実際に採用が決まって性格づけをするときはそこらへんまで考えながら落とし込んでいきます。
——そうやって生まれた超人たちは、ファンがつくほど人気のキャラクターもいますよね。
おかげさまでキン肉マンはいつも5位とか6位(笑)。主人公が絶対に1位にならないというね。
——特にウォーズマンやブロッケンJr、ロビンマスクやアタルは高い人気を誇っています。
でもこの間やった総選挙でキン肉マンが初めて2位になって! あれは嬉しかったですよ! まぁ1位は悪魔将軍だったんですけどね(笑)。
▲堂々と鎮座する悪魔将軍のフィギュアもあった
友情パワーの素晴らしさを伝えていきたい
——ゆでたまご先生の子どもたちに対する思いは、かつてキン肉マンを読んで育った世代が親となり、その子どもたちにキン肉マンを読ませることで受け継がれています。それについてどう思われますか?
僕はいまだに『ドラえもん』とか見て、ジャイアンリサイタルとかあると今でも笑ってしまう。やっぱりお約束って普遍的で、たぶんいつの時代も面白いものは面白い。だから、親が好きだと絶対子どもに与えるんですよ。もう英才教育ですよね(笑)。今はネットでも昔のキン肉マンのアニメを見られるようになったり、ほんまありがたいことです。ただ僕らにとっての対象は常に10歳。それが僕らがいちばんやってたときにジャンプとして欲しかった年齢層で、そして僕らをいちばん応援してくれた世代なんです。そして今の子どもたちも、当時とそんなに変わってないと思うんです。
——だからこそ今の子どもたちにもキン肉マンが刺さるんですよね。
今の子どもはゲームばっかりと言われてるけど、うちの近所でも外で元気に遊び回ってますよ。ただ、漫画を読まなくなったなとは思います。僕らの力不足かもしれないけど、それが悔しい。今の時代260円(2017年11月時点)でこんなエンターテインメントを楽しめるなんてないですよ。映画より全然安いし、もしかしたら映画以上に楽しめるし、いろんなことを学べる。だからもっと漫画を読んで欲しいですよね。
——最初のキン肉マン世代は、漫画からいろんなものを教わって育ってきましたからね。
ジャンプのキーワードじゃないですけど、「友情」、「努力」、「勝利」。この3つが最初に全部入ったのがキン肉マンだと思ってるんです。まあ、努力はちょっとですけど(笑)。その中でも僕らは「友情パワー」と言い続けてますけど、キン肉マンやほかの漫画をいっぱい読みつつ、友だちを大切にして欲しいんですよね。
▲「僕らが子どもの頃も友だちが多い子は羨ましかったんですよ。なんであんな人望のないやつに友だちがたくさんいるんだ、とかね(笑)」
——ゆでたまご先生自身が、まさに10歳の頃からの友情で、キン肉マンを描き続けている事実は、子どもたちにとってもいい道しるべになると思います。
相棒はこの歳になってもまだ成長してますしね。普通筆圧は年とともに落ちてくるけどそんなことないし、まだまだ絵も上手くなってるし。だからこそ僕も相棒に負けないくらい面白い話を考えないといけない。そうやって競い合えるからキン肉マンも古くならないし、いつの時代もカッコよくあり続けているんだと思います。
——まさに友情パワーのなせる業ですね。
だから僕らは死ぬまで一緒にやっていきます。これで解散なんてことになったら、今までやってきたことがウソになりますしね(笑)。友情パワーの素晴らしさをひとりでも多くの子どもたちに伝えていき、子どもたちにも友情パワーでいろんなことを乗り越えていってほしい。そのためにまだまだ僕らとキン肉マンは戦い続けます!
▼前編はこちら
「僕らには『キン肉マン』があるやないか!」ゆでたまご・嶋田隆司先生が語る『キン肉マン』(前編)【熱血!スポーツ漫画制作秘話 #3】 | 趣味×スポーツ『MELOS』
[作品紹介]
『キン肉マン』(全61巻)、「週プレNEWS」にて連載中
地球を襲う怪獣達に軽くあしらわれ、相手にもされないドジな超人・キン肉マン。しかし、その正体はヒーローの中のヒーロー・キン肉族の王子だった!超人オリンピックなど、幾多の戦いを通して友情を育み、仲間とともに悪の超人と戦うッ!!
・ゆでたまご公式サイト
http://www.yudetamago.jp/index.html
・週プレNEWS
http://wpb.shueisha.co.jp/
[プロフィール]
嶋田隆司(しまだ・たかし)
1960年生まれ。大阪府出身。1978年に『キン肉マン』で第9回赤塚賞に準入賞。『週刊少年ジャンプ』にて連載を開始。その後アニメ放映もスタートし、「キン消し」ブームなどが起きた。1987年、惜しまれながらもジャンプでの連載が終了。1998年から『キン肉マンⅡ世』を『週刊プレイボーイ』で、2011年からは『キン肉マン』の続編をWebサイト『週プレNEWS』にて連載中。
<Text:関口裕一+アート・サプライ/Photo:有坂政晴(STUH)>