インタビュー
2018年1月11日

「解散したら今までが嘘になる。だから僕らは死ぬまで続ける」ゆでたまご・嶋田隆司先生が語る『キン肉マン』(後編)│熱血!スポーツ漫画制作秘話 #3 (3/4)

まずは人間ができない技だということ。だって超人の技ですからね。だから実際にレスラーにやられると悔しいんですよ(笑)。次はとにかく痛そうということ。「地獄の断頭台」なんて、シンプルやけど思いっきり痛そうじゃないですか(笑)。あとは形の美しさですかね。それを兼ね備えてたのが「キン肉バスター」だったので、いちばん好きなんですよ。形もシンメトリーで美しいし、やっぱり痛いっていうのもあるし。

——シンメトリーだからこその「キン肉バスター」破りもあるわけで。

あれは相棒がすごかったんですよ。「キン肉バスターをどう破るか」って話を中井くんとしてたときに、僕は絵を正しい向きで見ていて、向かいに座ってる中井くんは逆向きに見て話していたんです。そこで中井くんが「これ逆から見てもキン肉バスターやで」っていうからうそだと思って逆にして見たら「あ、ほんまや!」って(笑)。

——コンビを組んでたからこそ気が付いたことですね。

そんなキン肉バスターもモハメド・ヨネ選手が使い始めてしまって。おかげで今では本場アメリカのWWEでもマッスルバスターで通用するんですけど、あれはショックやったなー……。人が真似できないから、超人の技なんですよ。

▲現実で技を真似されると、「むちゃくちゃ悔しい」そうだ

——今は選手の身体能力も上がってきていますし、人間にできない技を考えるにあたってハードルが上がっているように思います。

だから技を考えるとき、シルク・ド・ソレイユとか見ますよね。あれはありえない体の動きをするので、「まだ人間ってこんな動きができるんだ」って、ものすごく勉強になります。あとは昔のプロレス、「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」みたいな方が見ていて面白い技が浮かびますね。

子ども相手だからこそ、真剣に考える

——技もそうですが、キン肉マンの技はネーミングも秀逸です。

ネーミングも苦労しますよね(笑)。子ども相手だからって何とかパンチとか、ナメたような名前はダメですし、複雑すぎてもダメ。小学5年生がちょっと背伸びしてカッコいいくらいのさじ加減を考えてます。「ベルリンの赤い雨」とかはやっぱりカッコいいですよね。

——読者というか、子どもたちと真剣に向かい合っているんですね。

やっぱり子どものことをバカにしたらダメなんですよ。それをやり始めると、子どもが離れていきますからね。僕は、キン肉マンはお勉強漫画の一面もあると思っていて。ひとつお勉強になることを試合の中にいれておくと、彼らは一生懸命調べるんですよ。そうして「これはほんとだ!」となるときもあるし、「これはオモシロ起源説だ」となるときもあるわけです(笑)。

——いわゆる「ゆで理論」というやつですね。以前、「ロンズデーライト」がTwitterでトレンドワード入りして話題になりました。

あれもほんまにあるんですよ(笑)。ほんとはロンズデーライトよりももっと硬い物質があるんですけど、名前がイマイチだったので、ロンズデーライトにしました。それだって賢くなったでしょ、ダイヤモンドより硬い物質があるってことをキン肉マンから学んだわけですよ(笑)。

——一方でナスカの地上絵のオナガザルの新解釈もありまして……。

あれは「ゆでは50歳すぎて狂ってる」と言われました(笑)。でも僕らには赤塚賞出身者としての意地、ギャグ漫画家として最高峰の赤塚賞でデビューしてるから、ただギャグを描かないだけで。まだギャグやったら負けないでっていうのはあるんですよ。まぁキン肉マンも十分ギャグの要素入ってるんですけど、面白いことを真面目にやるのがいいんです。

読者ハガキの返事が、「超人募集」に変わった

——読者と向き合うという部分で外せないのが、多くの超人が誕生した「超人募集」ですよね。

あれは、最初は「怪獣募集」だったんですよ。そもそも始まったきっかけは、連載当初、読者から応援のファンレターをもらってたんですけど、それに僕は全部返事を書いてたんですよ。

——えーっ!そうだったんですか!?

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