運動マジ嫌いライターが「運動音痴から脱却する秘訣」を脳科学者に聞いてみた (2/2)
運動は物理学! 効率的な体の動きを知る
――しかし、何度練習しても全然うまくいかないことが多く、体育の授業は苦痛な時間だったのですが、さらなる練習が必要だったということでしょうか?
おそらくですが、運動音痴と呼ばれる人の多くが、自分本位な動きをしているのではないでしょうか。球技のときはボールに合わせて体を動かさなかったりと、効率的に正しい動きができていないママなのかと推測されます。
――確かにその自覚はあるのですが、上手な人から教えてもらっても、抽象的な説明が多く、「勢いよく腕を回してー!」とか「ぐっと引けば回れるよ」とか……。運動神経悪い人にはよくその説明が分からなくて、運動できないママ、今に至っています。
そこは体育教育の問題になってしまうので、また話が変わってきてしまうのですが、運動は物理学であることはもっと広く知られないといけません。力の強い弱いではなく、効率的に体が動かせれば非力でもうまく運動ができるようになるんです。
また初期姿勢というのがとても大事になります。姿勢が整っていないと左右の体の動きがバラバラになってしまう、スタートからつまずいてしまいますね。
前準備が必要! 失敗は必然!
――初心者は姿勢が違うのはわかります。そうしたら大人でこれから運動をはじめるにはどうすればいいでしょうか。
やみくもに運動をはじめるのではなく、以下の点を考えることからはじめてください。
・何をしたいのか
・何が足りないのか
・どんな筋肉をつけたいのか
痩せたいのか、健康が目的なのか、楽しく運動したいのかそこを明確にしましょう。例えば、とりあえず手軽にできるからと急にマラソンをはじめてしまうと、足を痛めてしまい結局やらなくなってしまいます。
もしマラソンをはじめるなら、歩いて距離感をつかむことからはじめてください。10kmがどれくらいの距離感なのかつかんでみる。そうすれば、意外と短い距離なのか、それとも思ったより長い距離なのか。そこで、自分がイメージしていた距離がわかれば走る時の目処が容易につきますから。
もし他者が関わるスポーツなら最初はインストラクターをつけて、客観的に指導してもらう。今のインストラクターは効率的な体の動かし方の指導に長けていますから、運動苦手な人も理解しやすいと思いますよ。
――そう言われると少しできる気がしました。
あとは先ほども申した通り、失敗をすることで脳が学習するので、運動でのネガティブな体験は必然です。
まず行動、そして失敗をすることで経験値がたまります。数回の失敗で諦めずに頑張って続けること。そうすればどんどんできるようになるから、運動が楽しくなってきますよ。
――とりあえず5kmを歩いて距離感をつかむことからはじめたいと思います。
[プロフィール]
柳原大(やなぎはら・だい)
1964年東京生まれ。東京大学生命環境科学系准教授。専門分野は「神経生理学」「運動生理学」。また講義では「身体運動科学」「適応生命科学」などを担当。運動に関する著書も多数執筆している。
<Text:高橋優璃/Photo:Getty Images>