インタビュー
2018年1月29日

良いと思うものは吸収して自分の一部分に。京都ハンナリーズ岡田優介『SLAM DUNK』【私のバイブル #3(後編)】 (3/3)

― 井上先生の中では答えがあるものの公表はされていないとか。

そうですね。ぼくはそこまで引き出したので、すごいですよ(笑)。まあ、いろんな推測がされているじゃないですか。ぼくが引き出せたことは、井上先生の中で優勝校は存在するということ。

別にどことは仰っていなかったんですけど、井上先生の思いとしては、バスケットはチームスポーツなので、ひとりのスーパースターがいるチームが優勝するっていうのはちょっとな、と。優勝校の候補に森重(寛)がいる名朋工業があるじゃないですか。海南(海南大附属)が2位っていうことしか情報がないから、名朋が優勝したんじゃないかっていう……。

― ストレートに考えるとそんな印象ですよね。

はい。でも、井上先生の考えからすると違う。そこまで引き出しました。ひとりのスーパースターがねじ伏せてしまうっていうのは納得いかないというか、あってほしくないっていう願望が、井上先生の中であるんじゃないかと思います。たしかにひとりのスーパースターが与える影響ってバスケにおいてすごいんですけど、でもやっぱり究極的にはチームスポーツだよね、みたいなところに繋がって。

― 名朋は森重のワンマンチームのように描かれていますからね。それこそ過去編で、安西先生が谷沢(龍二)に説教するシーンがあるじゃないですか。

『お前の為にチームがあるんじゃねぇ。チームの為にお前がいるんだ!!』。

― これはスター選手ひとりでは勝てないという、井上先生のメッセージなのでは、と感じます。実際にプレーをされていて、そう思うことはありますか? 

難しいと思いますよ、ひとりのスター選手じゃ。タレントを揃えただけのチームは勝てない。逆にタレント+組織力があるチームは強いです。

― 個々がすごい能力を持っていたとしても、バラバラではうまくいかない、と。

バスケはそういうものですね。それがおもしろいんです。

― 京都ハンナリーズの一員としての岡田選手の立場といいますか、チーム内で意識されていることはありますか?

チーム最年長になったので、若手の選手たちに経験を伝えることはすごく大事です。それにチームがどの方向を向いているかというか、全体的なバランスやコントロール、そういったところを心掛けていますね。あとはバスケの試合には勝負所があるので、そういう流れですかね。全体の流れを変えなきゃいけないとか、これで勝負付けなきゃいけないところ、そういう場面では積極的に狙うようにしています。役割的な部分で言うと、そういうところですね。

― 最後にマンガが人生に与える影響について、ひと言でいうと何があてはまりますか。

『情熱』とか、そういう心に響かせてくれる存在ですよね。試合でも心の持ちようでパフォーマンスが変わってくる。理屈じゃないときってあるんですよ。そういう意味で、マンガは情熱や熱意といったものに火をつける、人の心に訴えかけるもの。人が熱中することに対してプラスの影響を与えてくれる、道しるべみたいな存在ですかね。『SLAM DUNK』は特にそういうマンガかなと思います。

▼前編はこちら

常に誰かと競い、マンガの登場人物よりも練習する。京都ハンナリーズ岡田優介『SLAM DUNK』【私のバイブル #3(前編)】 | 趣味×スポーツ『MELOS』

[プロフィール]
岡田優介(おかだ・ゆうすけ)
プロバスケットボール選手。1984年生まれ。東京都出身。小学5年生からバスケットボールを始め、青山学院大学を卒業後、2007年に複数球団を経て、2016年シーズンより京都ハンナリーズでシューティングガードのポジションを務める。2009年に日本代表初選出、2013年には一般社団法人日本バスケットボール選手会を立ち上げ、初代会長に就任。プロ選手として活動する傍ら、2010年に公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人にて非常勤で勤務するなど、二足のわらじをはく。そのほか、私塾岡田優介会計塾の講師、3人制プロバスケットボールチームTOKYO DIMEのオーナー兼選手、渋谷の飲食店Pizza & Sports DIMEの経営など、多方面で活躍している。
◎岡田優介オフィシャルブログ https://lineblog.me/yusukeokada/

[作品紹介]
『SLAM DUNK』(全31巻)
井上雄彦作、青春の汗と涙と笑いが詰まったバスケットボールマンガの金字塔。週刊少年ジャンプにて、1990年から1996年まで連載され、アニメやゲームも制作された。中学3年間で50人の女の子にふられた不良少年の桜木花道(さくらぎ・はなみち)。高校生となった彼は、同級生の赤木晴子(あかぎ・はるこ)に一目惚れ。彼女に気に入られようとバスケットボール部に入部した花道だったが、次第にその才能を開花させていく。
◎集英社マンガネット S-MANGA.net http://www.s-manga.net

©井上雄彦 I.T.Planning,Inc.

<Text:上原純(Office Ti+)+アート・サプライ/Photo:小島マサヒロ>

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