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2018年8月31日

入会・練習費無料。楽しく走ることが最重要!広島県「SATランニングチーム」│全国のランニングクラブ訪問記 #11

 ランニングを楽しむうえで、仲間がいることはさまざまなメリットを与えてくれます。つらいときに励まし合ったり、切磋琢磨して厳しいトレーニングを乗り越えたり。そんな仲間を求めるなら、近くのランニングチームを探してみましょう。MELOSでは全国各地のランニングチームを取材・紹介しています。

 今回訪れたのは、広島県で活動する「SATランニングチーム」。チームの特徴や取り組みなどについて、主宰者の佐藤直樹コーチにお話を伺いました。

ラジオをキッカケに発足したランニングチーム

 SATランニングチームの発足は2006年のこと。大分県から広島県へと訪れた佐藤さんは、あるラジオ番組に参加。そこで、チーム発足のキッカケが生まれたそうです。

「広島に来て、走っている人が多いなと感じていました。そんな中、偶然参加したラジオ番組でご一緒した方が、ホノルルマラソンを走りたいと仰ったんです。最初は社交辞令かと思いましたが、本人はどうやら本気の様子。そこでその夢を叶えるべく、チームを作って活動を始めたんです。現在メンバーは70名ほどですが、当初は10名くらいからのスタートでした」

 ご自身ではなく、他者のために発足したSATランニングチーム。このストーリーからは、佐藤さんのランナーを応援したいという思いが感じられます。そしてその思いは、佐藤さんの考えるチームのあり方にも現れていました。

「とにかく、ランニングを“楽しむ”チームでありたいと思っています。苦しいことまで含めてすべてを楽しむ。そのために仲間がいて、コーチがいるわけです。ですから、メンバーはチームワークがいいですよ。練習会はもちろん、それ以外でも自分たちで集まり走っている方も少なくありません。もちろん忘年会は大会の打ち上げなどは、一番のコミュニケーションですけどね」

 確かに練習会を見ると、とても和気あいあいとした雰囲気が伝わってきました。走りに来ているのはもちろん、この場を楽しみに待っていたという感じ。自然と会話が生まれ、ウォーミングアップ中まで笑顔で溢れています。きっと“楽しむ”という思いが、チーム全体に浸透しているのでしょう。

コーチは治療家であり実業団経験者!

 チームの練習は毎週木・日曜日。主に広島市中区千田公園にある周回500mのコースを使って行われます。練習メニューはコーチが立てており、変化走やインターバル走などスピード練習が多いようです。なお、木曜日は佐藤コーチ、日曜日は別の方が担当しています。

「私は以前、実業団でマラソンを走っていました。また治療家でもあり、その経験を生かして日々の練習メニューを考えています。もちろん走力は人それぞれ違いますから、ペースに応じてチームを分けるなど、全員が質の高いトレーニングを行えるように調整します。中には練習時間前から、先に来て走っている人もいますよ」

 実業団経験者の立てた練習メニュー、ときにアドバイスを受けながら取り組める環境は、ランナーにとって貴重な機会。治療家でもあるため、身体について相談を受けることも多いのだとか。メンバーには、“速くなりたい”と向上心を持って入会する方が多いそうです。しかしSATランニングチームは、なんと練習参加や入会が無料。ここでも、やはり佐藤コーチの誠実な思いがありました。

「どうしても、急な仕事などで抜けなければいけないことがあります。しかし100円でも受け取ってしまえば、仕事なんて言い訳はできません。もしその状態で抜けが起きれば、それだけでメンバーとの縁は切れてしまうと思うんです。それに、私は何よりマラソンやランニングの楽しさを伝えたくて、このチームを作りました。ですから、お金は一切もらっていません。メンバーが楽しく走ってくれれば、それでいいんです」

 チームには大学生から60代まで幅広い方々がおり、男女比は半々。取材当日、練習会には30名以上が集まっていました。これだけ多くの方がチームに参加するのは、練習内容はもちろん、佐藤さんの人柄があってこそではないでしょうか。

 佐藤さんから当日の練習メニューを聞いたメンバーは、それぞれウォーミングアップを開始。この日は3,000m走がメイン練習でしたが、皆さんの表情は真剣そのものでした。つらい練習さえ楽しめる、そんなメンバーの集まるチームなのでしょう。まずは1度、ぜひ練習会に参加してみてください。走りながら、チームの雰囲気を感じ取ることができるはずです。

[クラブ概要]
SATランニングチーム
http://satrunning.com/

特集:全国のランニングクラブ訪問記

[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com

<Text & Photo:三河賢文>