インタビュー
2019年6月8日

黒島結菜『いだてん』ロングインタビュー。「女子がスポーツに目覚める時代。この役を演じることができて良かった」 (2/4)

―― 富江たちは金栗四三をパパと呼ぶ。女生徒たちにとって、先生はどんな存在だったか?
(※金栗四三の書籍には、生徒たちから「パパ」と呼ばれていたと記述があり、このエピソードは事実として知られています)

私も高校生のときに、仲の良い先生がいて友だちのような近い距離感で、何でも話し合えていました。向こうも一生懸命にぶつかってきてくれる。だから、こちらも自然と思いを伝えやすい。先生と生徒であって、友だちではないのだけれど、そこまで先生という感じでもなく、不思議な関係性でした。先生に対して信頼があってこそ。私は、そんな関係性がすごく良いなと思っています。四三さんは頼りになるし、かわいらしい部分もあるじゃないですか。女子からしたら、ちょっと良い風に、魅力的に見えたりするのかなと思っています。

昔は、先生は偉くて生徒と距離感があるというイメージでしたが、富江の時代から私とその先生の関係性に近い、そういうこともあったんだなとうれしく思いました。

―― 金栗先生とは段階を追って打ち解けていく。距離感が縮まることを意識しながら演技したのでしょうか。

短パンとTシャツで来て、私たちに「スポーツしよう」と呼びかけるのですが、本当に嫌だ、と思いました。でも熱い思いを聞いて、1歩、歩み寄ったら四三さんの魅力から抜け出せなくなっていました。“四三ワールド”というか。

播磨屋まで行って、ズカズカとお部屋までお邪魔して、スヤさんのいる前で四三さんに「足の筋肉を触らせてくれ」とか言うのですが、自然とそこまでの関係性になれたんですよね。四三さんの人柄あってのことかな、意識せずに自然と。台本を読んでいても、いつからかタメ口になっていたし、パパって呼ぶようになったり。段階を追って、というか、でも割とすぐにそんな関係性になれたのではないかと思います。

「運動して身体を動かしている女性は美人だ」。金栗四三の言葉に共感

―― 役に共感する部分は。

はじめの頃、「運動なんて女子がやるものではない、女子は結婚してお嫁にいくことが幸せなんだ」という、昔ながらの考えがありました。お裁縫ができる、お料理ができる良い奥さん、お嫁さんになりたいと。でも四三さんは、美人というものの捉え方が違った。先生が女子たちに「運動して身体を動かしている女性は美人だ」と語りかける場面があるんですね。その一生懸命な思いも伝わってきて、私自身、四三さんの言葉が胸に響きました。

運動して変な目で見られても、それが綺麗だと思われるならすごいこと。お芝居しながら、心の変化を感じました。共感できる気持ちがあったので、村田富江と一緒に気持ちの変化が起こった気がしています。

―― テニスをしていて、暴言をはくシーンもあります。

台本を読んでいたときに「こんなこと言うのか」と驚きました。お父さんがお医者さんで、村田富江はお嬢様という役柄。礼儀正しい娘かと思っていたのに、いろいろたまっていたのだな、と(笑)。「くそったれ」と言うのですが、お芝居しながら、最初は「これで合っていますかね」と監督に確認したりして。そうしたら、もっともっと、なんて求められて。でも、おりゃー、おおー、とか声を出していると身体も乗ってきて、声を出すって大事なことなんだな、と思いました。お腹の底から声を出す。テニス、やり投げも勢いが出て、やっていて気持ち良かったし清々しかったです。

―― 体育のシーンで村田富江は、やり投げにも挑戦しています。

練習で投げたとき、初めてだったのに意外と飛んだんです(笑)。だから、次はもっと飛ばしたいなと思いました。村田富江と同じ気持ちになって、どんどん楽しくなってきて。だから本番でも真剣な気持ちで、地面にグサっと刺さることを目指して投げました。実際には刺さらなかったので、ちょっと悔しかったです。

テニスもそうですが、初めてのものに挑戦すると「上手になりたい」と上を目指したくなります。富江と重なる部分が自分にもあったんです。女子スポーツの始まりを演じる中で、役を通じてもっと上手くなりたいと思いました。

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