インタビュー
2017年8月28日

テーラー目線で作るウェットスーツ。信國太志が語る“呼吸”の違いとは?(前編) (2/2)

「肩などの可動域も広がりましたが、何より改善されたのは呼吸ですね。肺が圧迫されないので、呼吸がすごく楽になり、何時間でもサーフィンを続けられそうなくらいです。これまで、主に呼吸で疲労していたのだなというのが、よくわかりましたね。呼吸が制限されると、筋肉に酸素も行き渡らないですし」

 可動域の広がりは何となく予測できたが、呼吸の改善は盲点だった。なお、開発はまだ途上で、これからも続いていくという。

テーラードパンツのノウハウで足の動きも改善

「ここまでの開発は概ね順調ですね。今後取り組みたいのは下半身、足の動きの改善です。僕はテーラリングでパンツを作るときも、ジャケットの胸と同様に、ふくらはぎなどのボリュームや足のカーブに合わせた仕立てを大切にしています。それもウェットスーツに生かせるはずです」

 かねてからテーラーの仕立てではふくらはぎや胸、肩甲骨などの部分のアイロンワークが重要だと説いてきた信國さん。ウェットスーツの素材にはアイロンは使えないものの、そこもテーラリングの手法でカバーできるという。

「テーラーの職人が既存服を作ることもあり、その場合はコスト的にアイロンを使えないことがほとんどです。そうしたケースでは、普段アイロンで仕立てるふくらみにカッティングで近づけるという手法があるんですよ。同じ手法をウェットスーツにも用いています」

 ウェットスーツの気になる発売時期はまだ決まっていないとのこと。ちなみに、完成した暁にはどんな人に着てもらいたいか、信國さんに聞いてみると……。

「ウェットスーツに見た目のオシャレを求めるのではなく、純粋にサーフィンのしやすさを求める人ですね。僕自身のサーフスタイルも見た目重視ではありません。人からどう見えるではなく、自分が没頭したいタイプなので、ある意味、そのためのスーツを作っているとも言えます」

 圧倒的な着心地でパフォーマンスを引き出してくれそうな信國さんのウェットスーツ。完成が待ち遠しい人も多いのでは?

▼後編を読む

信國太志のサーフィン感「波と一体化したとき、摩擦のない世界を実感できる」(後編) | 趣味×スポーツ『MELOS』

[プロフィール]
信國太志(のぶくに・たいし)
1970年生まれ、熊本県出身。セントマーティン美術学校、修士課程(ウィメンズウエア)修了。1998年に自身のブランド「TAISHI NOBUKUNI」を設立し、2004年~2008年に「TAKEO KIKUCHI」のクリエイティブディレクターを務めるなど、ファッションデザインーとして第一線で活躍。2011年テーラーに転身し「the CRAFTIVISM」を設立

<Text : 保足浩司(H14)/Photo:竹内けい子>

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