インタビュー
2017年8月29日

信國太志のサーフィン感「波と一体化したとき、摩擦のない世界を実感できる」(後編) (1/2)

 テーラー目線で開発中のウェットスーツについて伺った前編に続き、今回は信國さんのサーフスタイルや、サーフィンをする意味について話を聞いてみた。驚いたことにサーフィンをやめる日が来るという予感もあるとか!?

《前編はこちら》
・テーラー目線で作るウェットスーツ。信國太志が語る“呼吸”の違いとは?

ターンは見せるためではなく、あくまで波にとどまるため

 前編の最後で開発中のウェットスーツは、信國さんのサーフスタイルにも関係しているという話が出た。そこで、どんなスタイルなのか、詳しく聞いてみると……。

「僕はサーフィンを通じて精神的に得られるものを追求するタイプですね。まず、可視的に優劣を付けるコンペティションには興味はありません。一方、コンペ志向ではないサーファーでも、自分のサーフィンがどう美しく見えるかを突き詰める人もいるでしょう。ただ、僕は根本的に下手ですし、運動神経が優れているわけでもないので、他人からどう見えるのかはまったく気にしていません」

 信國さんにとって、サーフィンの技術的な向上は、あくまで波と自分のかかわり合いを良くするための手段だという。

「僕にとってサーフィンの上達=波のエネルギーとうまく付き合えることであり、そういう意味においてはうまくなりたいですね。かっこいいターンを見せたいわけではなく、波のエネルギーポイントにうまくとどまるためには行きすぎたら戻らなければならない、そのためにターンをします」


 信國さんがサーフィンをはじめたのは、すでに人気ファッションデザイナーとしての地位を確立していた35歳のとき。ハワイ出身の伝説的なサーファーであり、ヨギとしても知られるジェリー・ロペスさんとの出会いが転機になったのは有名な話だ。

「ジェリーさんの人間としての圧倒的なスケールの大きさに衝撃を受け、少しでも近づきたいとサーフィンとヨガにのめり込んでいきました」

 その結果、どちらかと言えば夜型だった信國さんの生活は一変する。

「すごく根本的な話をすると、人間が生きる上でのあらゆることが自律神経と関係しています。僕もサーフィンとヨガをはじめて生活が朝方になり、自律神経のバランスがとれたことで、メンタルが非常に安定したと思っています」

サーフィンをやめる日が来る予感

 信國さんがサーフィンをしているのは「今の自分に必要だから」だという。そこにはサーフィンでしか得られない心の状態があるのだとか。

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