2017年8月29日

楽器やバイクだけじゃない! あの「YAMAHA」がプールを作ってるって知ってた? (2/2)

「これについては諸説ありますが、当時小学校にあるプールはコンクリート製が多かったので、FRPの安全生をアピールすることで小学校でも売れるのでは、という話になりまして。また、当時は今より子どもも多かったので、学校をたくさん建てることになる。そうなれば25mプールの需要も増える。ですから、これからは25mプールが来ると考えたんだと思います」

 先見の明のおかげで、今では20m以上のスケール用プールは累計6000基以上出荷され、国内で設置されるプールの半数以上がヤマハ発動機製となりました。また、そこには安全性に気を配るヤマハ発動機ならではの工夫もあったのです。

「バイクやボートをつくる輸送機器メーカーなので、設計は安全第一。プールを設計する時も同じ考え方です。たとえば、角のない丸いフォルムを意識したり、床をタイル状にして滑りづらくしたり。排水口もひとつではなく、複数取り付けることで事故を防いでいます。例年プールの排水口に吸い込まれる事故が発生していますが、弊社が作ったプールでは今まで1件も事故が起きていないんですよ」

▲排水口に施された吸い込み事故を防ぐ工夫(左/L型吸い込み目皿、右/排水口ボックスと安全バー)

 2007年の3月、国土交通省と文部科学省よりプールの安全基準指針が発表され、吸い込み事故防止のための二重安全構造の必要性が明記されました。しかし驚くことに、ヤマハ発動機ではその30年以上前からすでに安全対策を施していたのです。

「安全防止策に加え、従来のコンクリート製やアルミ製のものより工事が簡単で、工期も短期間。さらに強度も耐久性もあるということで、ここまでのシェアをいただいたのだと思います」

▲「滑りにくく歩きやすいプール」がコンセプトの「アクウォーク」。床がタイルのようになっている

 今では、ヤマハ発動機のプールは子ども用プールや25mプールのほかに、レジャー施設や水泳の大会でも活躍しています。2001年に行われた「第9回世界水泳選手権大会2001」では、「マリンメッセ福岡」にメインプール、「博多の森テニス・センターコート」に水球プールを設置。その工期はなんと組み立てに2週間、解体に1週間という無謀なスケジュール。しかしヤマハ発動機は見事コンペを勝ち抜き、やり遂げます。世界にヤマハ発動機のプールの実力を見せつけた瞬間でした。

▲ヤマハ発動機製の25mプール


ヤマハ発動機のロゴは入っているの?

 日本の半数以上のシェアを誇っているヤマハ発動機製プール。もしかしたら、筆者が幼い頃に泳いだ学校のプールや市民プールもヤマハ発動機製なのかもしれません。でも今まで知らなかった理由は、きっと……。
 最後に、どうしても気になった質問を訪ねてみました。ヤマハ発動機のロゴは、プールにも入ってるんでしょうか?

「控えめですよね(笑)。でも、ちゃんと入ってるんですよ。文字に色はつけてなくて、プールのフチに型押しで『YAMAHA』というロゴが入ってるんです。最近はここまでシェアされているんだから、もう少し目立ってもいいんじゃない? なんて話も出たりします。よかったらプールに訪れた際は、探してみてくださいね」

【取材協力】
ヤマハ発動機
https://www.yamaha-motor.co.jp

<Text & Photo:服部桃子(アート・サプライ)>

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