ウェルネスフード
2021年12月13日

たんぱく質の効率的なとり方は?『みんなで筋肉体操』谷本先生が解説

 リモートワークの増加などで、いわゆる“おこもり太り”に悩んでいる方は多いのではないでしょうか?

 そんな方に朗報、たんぱく質の摂り方を変えれば、食べながらやせられることが分かってきました。今回は、NHKの人気番組『みんなで筋肉体操』でおなじみの生理学者・谷本道哉先生による、おこもり太り解消のポイントをご紹介します。

“おこもり太り”の原因は?

 リモートワークの増加により、運動不足が深刻化しているという方は多いと思いますが、そのとき体内ではどのようなことが起きているのでしょうか?

 谷本先生は「筋肉はたんぱく質の塊です。筋肉は細長い紐状の細胞が束になっています。筋肉の細胞は、たんぱく質でできた繊維で埋め尽くされています。その繊維が伸びたり縮んだりすることで人間は体を動かすことができるのです」としたうえで、「おこもり生活で体を動かさないと、この細胞1本1本が細く萎縮してしまいます。すると筋肉量が減り、基礎代謝と活動量の低下を招きます」と解説しています。

 筋肉を構成するたんぱく質ですが、人間の体の中のたんぱく質は、24時間壊されては作られて、常にリニューアルが行われています。合成よりも分解が進んでしまうと、筋肉の細胞が細くなり、筋肉量はどんどん減ってしまうというわけです。

 谷本先生は、筋たんぱく質を維持する運動以外に食事も重要と指摘。「動かないで筋肉を使わないでいると、どんどん(筋肉の)委縮が進行してきます。分解を抑えて合成を進めるには、運動はもちろん有効ですが、食事によるたんぱく質の摂取が重要になってきます」としています。

宇宙空間で筋肉が衰えるのはなぜ?

 筋肉を動かさないことで起こる筋萎縮を研究する徳島大学大学院医歯薬学研究部教授の二川健先生は、JAXAの協力を得て宇宙空間で実験を行いました。

 無重力空間では、筋タンパク質を分解する酵素、ユビキチンリガーゼが増えていることをつきとめました。無重力空間では運動をしないのと同じ状態。つまり、体を動かさないと筋細胞にユビキチンリガーゼが増え、どんどん筋タンパク質を分解してしまうのです。

 さらに、大豆タンパク質が分解を抑制してくることも研究で明らかになりました。

とはいえ肉ばかり食べていると……

 さて、食事からたんぱく質を摂取するといっても、脂肪分たっぷりの肉ばかり食べていると、肥満まっしぐらで逆効果ですよね。

 最近の研究によれば、動物性と植物性のたんぱく質は、1対1の割合で摂ると、筋たんぱく質の分解を抑制するという報告があります。動物性は合成を促進、植物性たんぱく質は分解を抑制することから、ダブルで効果を得るにはバランスを考えて摂る必要があるというわけです。

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 ただ、現実は動物性に頼りがち。厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2020年版)によれば、植物性たんぱく質の摂取は全体の3分の1程度になっているとの報告もあるため、多くの方は植物性たんぱく質を意識して摂取する必要がありそうです。

動物性は「鶏肉」、植物性は「豆腐製品」がオススメ

 では、どのような食べ物が筋たんぱく質の維持に効果的なのでしょうか。

 谷本先生は「動物性なら、脂身が多い肉は控えめにして、鶏胸肉のような脂肪分が少ない良質なたんぱく質を摂りましょう植物性は、豆腐製品がおすすめです。大豆はコレステロールを下げる働きもあるので、私は積極的に摂っています」としています。

 さらに、「たんぱく質は1日の総量よりも、1食20グラム程度を目指し、コンスタントに摂るようにしましょう」とも。「特に朝はたんぱく質が足りていない傾向にあり、手軽に食べられるたんぱく質食品をそろえておくといいかもしれません。最近は食品のパッケージにたんぱく質の含有量が書いてあることが多いので、摂取量を意識して選ぶといいでしょう」とアドバイスしています。

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“ながら筋トレ”も効果的

 こうした食事の工夫に加えて、“ながら筋トレ”も効果的とのこと。

 谷本先生は、デスクに座ったまま、ちょっと立ち上がった時にできる簡単な運動として、ソファなどに座って伸ばした足をできるだけ高く上下させるレッグレイズ、デスクに手をおいて姿勢を安定させ、膝を上 げられる範囲で上げて下ろすニーリフトなどをおすすめしています。

<Text:辻村>