インタビュー
2018年4月23日

“経験の1年”から“挑戦の1年”へ。車いす陸上のホープとマシン・エンジニアが上る最速への階段(後編)│わたしと相棒〜パラアスリートのTOKYO2020〜 (1/4)

 東京2020パラリンピックを目指すアスリートの傍らには、彼ら彼女らをサポートするヒト・モノの存在がある。双方が合わさって生まれるものとは何か。連載「わたしと相棒〜パラアスリートのTOKYO2020〜」では、両者の対話を通してパラスポーツのリアリティを探る。

 車いす陸上競技の鈴木朋樹選手(トヨタ自動車所属/T54/切断・機能障がい)は、2年後に迫る東京パラリンピックに照準を定め、ロードマップを敷いている。レース用車いす(レーサー)のエンジニア・小澤徹さんは、「対話に終わりは無い」としながらも、鈴木選手のパフォーマンス最大化のために心血を注ぐ。後編では、鈴木選手の競技力強化への取り組みと、“レーサー観”について聞いた。

(写真提供:トヨタ自動車)

前編:座り方ひとつでガラリと変わる。車いす陸上のホープとマシン・エンジニアが上る最速への階段(前編)

「レーサーと自分がリンクしている」

――小澤さんがレーサーを製作する上でのこだわりは?

小澤:やはり選手の考えをしっかり聞くということですね。感覚的には車いすに乗っていないような状態が一番の理想です。身体の一部になっているような感覚。そのための課題を議論しながら、気になる箇所を探っていくような感じです。

――鈴木さんは、今の時点で、ご自身の身体とレーサーの関係はどのような感覚ですか?

鈴木:今はマッチしていると思います。何も考えずに漕ぐことができている。マシンが身体に合っていないと、ハンドリム(ホイールに付いている車いすを漕ぐ輪状の部品)をキャッチする際に分かるんです。「不自然だな」と。その影響は、たとえば、なかなかスピードに乗りづらいとか、身体を痛めてしまうという形で表れることもあります。今のモデルはとてもスムーズに漕げますし、レーサーの体感が自分の感覚とリンクしている状態ですね。

――体型の変化に応じてもレーサーに微調整を加えていくわけですよね。

小澤:そうですね。鈴木くん、かなり身体大きくなったよね?

鈴木:はい。冬の時期には身体を大きく(筋力を強化)するんですけど、そうすると、今まで乗っていたマシンに乗れなくなってしまう時もあります。そういった時に、作り替えや調整が発生してくるんです。

――身体を大きくしていくという話がありました。鈴木さんが今、重点的に強化しているポイントはどのようなところですか?

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