インタビュー
2019年7月26日

東京五輪メダルデザイナー川西純市さん直撃。デザインに込めた思い、「クッキーみたい」というネットの反響にも回答 (1/3)

 東京2020組織委員会が大会開幕1年前にあたる7月24日に発表した東京オリンピックのメダル、メダルリボン、およびメダルケースのデザイン。同日にはメダルデザインを担当した人物が、大阪でデザイン事務所を経営する川西純市さんであることも明かされました。

 そこでMELOS編集部では、川西さんに都内で単独インタビューを実施。デザインに込めた想いや周囲の反応、そしてTwitterなどネット上で「クッキーみたい」「ジャムを乗せたら美味しそう」と話題になっていることなどについて、お話を聞きました。

[プロフィール]
川西純市(かわにし・じゅんいち)
1967年8月1日生まれ、大阪府大阪市出身。デザイン事務所・SIGNSPLAN代表。大阪芸術大学芸術学部美術学科卒業後、大阪芸術大学美術専攻科修了。2006年にデザイン事務所・SIGNSPLANを設立し、関西を中心に役所や学校、病院などの公共施設、オフィス、ホテル、商業空間のサイン計画、空間グラフィックを手掛けている。 妻、大学生の長男、高校生の長女との4人家族。現在大阪市在住。SDA 公益社団法人日本サインデザイン協会 常任理事、USD-O大阪デザイン団体連合 理事を務める。

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メダルデザインに込めた想いとは

 メダルデザインのコンセプトについて、東京2020組織委員会では以下のように説明しています。

1. 光と輝き -Brilliance-
2. アスリートのエネルギー -Energy of athletes-
3. 多様性と調和 -The unity and diversity-
→ 3つの要素が一つになり、光の環 -Myriad Circle-になる

 そこで、まずはデザインに込めた想いについて聞きました。

――デザインをする上で大事にしたこと、そこに込めた想いについて教えて下さい。

アスリートの情熱、美しさ、しなやかさを大前提にした上で、「多様性と調和」を重要視しました。東京2020エンブレムも、多様性と調和がテーマになっていた。そこがイチバンの柱になるところだと思ったんです。

▲メダルデザインを担当した川西純市さん

――最もこだわったところ、苦労したところ、表現したかったところは。

まず、エントリーシートを提出するときは平面で白黒でした。それも正面図と側面図だけだったので、その中で立体をどう表現しようかと悩みました。パッと見たときの印象が薄ければ、インパクトがなければ、そのままコンペに落ちてしまう。

▲メダルデザイン審査会の選定プロセス

次に、実際に立体をつくる段階でも難しさがありました。頭の中には完成したメダルがあるんですが、それを実現するためには、つくる側にも理解してもらわなければならない。複雑な形になりましたので、説明にも時間がかかります。最終的に、立体モデルをつくる段階になったとき、造幣局さんとは綿密に打ち合わせをして、曲面が周りながら曲面に入っていくイメージを伝えていきました。

――普段から立体性のあるサイン(案内図)などを手掛けていると聞いています。その経験が活きたのでしょうか。

そうですね。ホテルの案内、レストランの銘板など、最近では半立体の案内板もつくっています。変わったところでは、学校用に立体のピクトグラムをつくり、シンボルマークだけで人を案内するという試みも。そういった意味では、普段の仕事の延長ではないですけれど、立体のメダルをデザインできて楽しかった、というのが素直な感想ですね。

――デザイナーとして、ご自身はどんなところが得意だと感じていますか。

僕は、クライアントさんの言うことを聞く方だと思うんです(笑)。相手の方が、何を欲しているかを最優先させたい。本当に良いものを提供しようと思えば、コストも時間もかかりますが、お客さんには予算や時間も限られている。そこで「では、こういうのはどうですか」と提案していきます。もっと良いものを、と言われた段階でランクを上げたプランを順番に示していって。つまり普段は、あまり自分の我は出しません。その点、メダルのデザインは純粋に自分の好きなことをすれば良かったので、非常に楽しかったですね。

――過去のオリンピックのメダルのデザインは参考にしましたか。

2016年のリオデジャネイロ・オリンピックのメダルは、テレビで見ました。でも、そうした情報を参考にはしたくなかった。まったく違うものをつくりたかったので、過去のメダルのデザインは見なかったですね。

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