インタビュー
2018年4月23日

“経験の1年”から“挑戦の1年”へ。車いす陸上のホープとマシン・エンジニアが上る最速への階段(後編)│わたしと相棒〜パラアスリートのTOKYO2020〜 (2/4)

鈴木:やっぱりスプリント力です。海外の選手はスプリントが強い。どの大会を見ても、最後の100mや200mで勝敗が決まるようなレースが今は主流なんです。今はトレーナーさんにいろいろと身体を見てもらっていますが、これまで感覚的にやってきたこともあり、ちょっと間違った身体の使い方をしているようなんです。身体の軸も安定していません。その改善のために、体幹強化や、身体の軸をお腹に持ってくるトレーニングを実施しています。

結果として、スプリント力は海外勢に通用する程になりつつあると感じていますね。今シーズンのグランプリレースが始まる前に、スイスのマルセル・フグ選手(※)と一緒に練習をさせてもらったんですが、スタートでは勝てるようになってきており、強化を実感しています。レーサーの乗り方を変えて、それに合わせた設計に変更した影響も大きくて、身体に負荷のない乗り方に今はなっていると思います。

車軸の有無で変わる、感覚の世界

――レーサーに関して今後の改良の余地は?

小澤:マラソンでの使用を見越して、今まで以上に空力に配慮したマシンを設計していきたいという考えがあります。

鈴木:たとえばボストンマラソンは、下り基調なので、最大で時速80kmぐらい出る。下り坂では、ハンドルを握っているだけで自分では何もできない状態。そこで、レーサーの空力性能の差が出てくるんです。

小澤:彼が望むマシンに最大限近づけていきたいという思いはありますね。鈴木選手は「ここはこうして欲しい」と明確に伝えてくれるし、違和感のある部分も把握してくれる。製作の立場としてはやりやすいですよ。

鈴木:自分としては、正直、要望をしっかり言葉に落とし込めている感覚はないんです(笑)。自分が感じることは、本当に感覚的なもの。それをちゃんと形にしてくれるのが小澤さんです。

小澤:そうかな(笑)。自分から見たら、鈴木くんの要望はけっこう分かりやすいんだけどね。

――マラソンとトラック競技、両競技の間で、当面の比重は決めているのでしょうか?

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