日本オリンピック史を描く大河ドラマ『いだてん』がついに開幕へ!中村勘九郎&阿部サダヲが語る作品の魅力とは (2/5)
金栗四三として走り、「勝ちたかったと思った」
取材会では、記者団からさまざまな質問が寄せられました。ここで、いくつか紹介していきましょう。
――2020年の東京オリンピックを目指している現役の選手にはどのような思いを届けたい?
阿部サダヲ(田畑政治役):
若い世代にも是非、日本のスポーツの歴史を知っていただきたいなと思います。田畑さんは指導の中で「日本泳法」を教えているんですけど、やがて、世界には「クロール」という泳ぎ方があったんだ、と知ることになります。そんな時代の話です。当時はプールもなくて、ふんどしで海を泳いでいた。海外の人に「気持ち悪い」なんて言われながらね。
中村勘九郎(金栗四三役):
金栗さんは、苦労しながら練習方法をゼロからつくっていった人。アスリートの方も、共感してくださるのではと期待しています。例えば、ストックホルムオリンピック(1912年)には出場したものの、大惨敗しました。そこで日本に戻った金栗さんは、真夏の炎天下の館山(千葉県)の海岸でひたすら走り続けます。
ほかにも、水分を取らずにとにかく走るという練習方法を発見して、取り入れてみたり。そんな練習方法、真似しちゃいけませんよ。でも金栗さんは、まず実践する。それでダウンしてしまうんですね。そこから学んだことは「自然に従え」ということだった(笑)。水分はやっぱり、取るべきなんです。
当時はコーチや監督という概念もなかった。国からの支援もないので、オリンピックで渡航するときも自費です。これは余談ですが、ストックホルムのロケで走り終えたとき、思ったのは「勝ちたかった」ということでした。本当に悔しかった。自分はいままでスポーツとか、あまりやってこなかった。役者に勝ち負けはありません。これまで負ける悔しさが分からなかったけれど、本当に悔しかった。ロケでは、それをずっと思っていました。
天敵はドローン。どこまでも監督のカットがかからない(笑)
――中村さんは、撮影のために身体を絞ったそうですが。
中村勘九郎(金栗四三役):
マラソン選手の役ということで、体力づくりに励みました。金栗さんは、実際に走っている映像が残っているんですね。それも研究して。でも大河ドラマの撮影だし、そんなに走らないだろうと思っていたんですよ。それが大きな間違いだった。熊本ロケで、みかん畑を走ったんですが、天敵はドローンです。あんなものを開発されたら、どこまでも撮れるもんですから、どこまでも監督のカットがかからない(笑)。でもね、楽しかったです。大変だったけれど、いろんなところを走れたし。
阿部サダヲ(田畑政治役):
アスリートになると、食事も変わるんですか? 一時期、中村さんは痩せて黒くなっていたじゃないですか。
中村勘九郎(金栗四三役):
そうですね、食事も変わりました。あと、金栗さんは身体が弱かったので、よく冷水浴をしていらした。だから1回に最低2回は冷水浴のシーンがあるんです。毎回、すっぽんぽんに脱ぐ必要があり、カメラの前では締まっていない肉体を見せられない。だから身体を絞ることも意識していました。
阿部サダヲ(田畑政治役):
田畑さんは、泳ぐシーンは多くないんです。でも「日本泳法」の撮影シーンがあった。クロールに似ているけど、ちょっと違う。顔を片側だけずっと上げて泳いでいるんですが、個人的に得意な方向があったもんだから、そっちばかり練習していました。でも本番になって、カメラ位置の関係で逆の方向に顔を上げてくださいと言われてしまって(笑)。苦労しました。