インタビュー
2020年1月3日

ハードル界が今アツい!W日本記録保持者に聞いた強さの秘密とは?高山峻野×寺田明日香[新春特別対談](後編) (2/3)

東京五輪に向けて見えてきた課題

—— 次へステップアップするためになにをしていけばいいと考えていますか。

寺田:単純に足を速くしなければいけないというのがひとつと、これは高山くんも一緒だと思うけど、その速さに対応するハードルの跳び方をしなくてはいけないというふたつの大きな柱があるかなと思います。

高山:僕もこれまでとは違う世界のスピードを経験しました。練習でそれを再現するのは難しいけど、やり方はいろいろあって。たとえばハードル間のインターバルを縮めて練習をするとか。調子が上がらない時でもそういう練習はできるので、それをまず試して感覚が完璧に合うまでやって、それが試合で出ればいいなと思います。

寺田:私も同じことをやりますね。ただハードルは週1回跳べば多い方ですけど(笑)。

—— これから東京五輪までを考えれば、高山選手は13秒25まで来たので、その走りを完成させることですか。

高山:そうですね。でもハードルのタイムをあげようというよりは、スプリントタイムをあげることに重きを置いていますね。さらに、僕の場合は、周りに才能のある選手がいっぱいいるし。僕は本当に才能がないから、そういった選手が出てくれば僕なんか抜かれるので、東京までも怖いですね。

寺田:エーッ、高山くんは才能があると思っているけどね。ただ私も以前は、才能あると言われるのが本当に嫌いだったんです。23歳でやめた時に、いろんな人からもったいない、もったいないと言われ続けて本当に嫌だった。でも、才能というよりは感覚を感じ取る力とか、力の見え方みたいなものを、戻ってきたときには明確に使えるようになっていて、体のコントロールがきくようになったんです。それを才能とするんだったら、かなり良かったなという風に思ってて。前の時には無かった感覚なので、いろんな経験を経て「アッ、こういうことができるようになったんだ」というのを感じるようになりました。

高山:僕はそういうのはあんまりないですね。感覚はあまり敏感ではないので、どんなことでもけっこう回数をやらないと体にしみ込んでこない。他の人を例に挙げるなら、金井くんは1回跳んだら「こういう感覚か」という風にすぐにつかんじゃうんですけど、僕はそれを何回も何回もやらないと身にならないので、そこはうらやましいですね。

—— でも、ほかの競技でもそうだけど、そうやって身についたものは簡単に崩れないと言いますね。それも才能のひとつではないですか。

寺田:崩れやすくなるというのはありますね。

高山:でもそれって努力じゃないですか。だから、才能のある選手が努力をしてくると本当に怖いですよ。金井くんがもっとどん欲になり始めたら、本当に怖いなと思うし。

—— 東京五輪へ向けて、どう進化していきたいと考えていますか。

高山:僕は大体、調子がいい次の年って落ちる2年周期なんですよ。だから来年は下向きになっていく年なので、その次の年の世界選手権の方がいいかなと思っているんです。

寺田:ハハハハッ! 確かに日本選手権は2年に1回勝っているもんね。でも、今年よりちょっとだけ落ちるくらいだから大丈夫。私が来年に向けて必要なのは、100mの記録をあげることですね。今年は1回走って11秒63だったけど、たぶんちゃんと走っても11秒5だから、少なくとも11秒3は出さないといけない。ハードルを12秒6で走る人は大体が11秒2~3で、11秒5という人はいない。だから福島千里さんの日本記録、11秒21に迫らないといけなと思います。

高山:僕は大きな目標を立てるとダメになってしまうので、とりあえずは目の前の小さな目標をクリアしていきます。これまでやってきたことを上積みしていけば、たぶん大丈夫だと思うし。ただ、僕の身長と脚の長さを考えれば、9秒98を出した小池裕貴さんに勝つくらいじゃないと12秒台は出ない。日本代表のリレーメンバーに入れるくらいになれば、13秒0くらいで走れるようになると思います。

寺田:じゃあ、次のパリ五輪の頃にはそのくらいになっているね。

高山:110mハードルは技術種目だから30歳くらいでもいいと思うので、まずはケガをしないようにうまくやっていかないと……。その時は寺田さんも一緒に行きましょう。

寺田:エーッ、そこまでやらせるの? 34歳になっちゃうよ(笑)。

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