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トライアスロンの名門・流通経済大学で指揮する田山寛豪が実践する“人生で役に立つ指導法”とは (2/2)

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「全体でのミーティングは必要最低限として、あまり頻繁に行いません。個々を尊重したいので、なにか話がある場合には個別が基本ですね。ときに怒ることもありますが、練習が終われば切り替え、引きづらないようにしています。それでも気まずいとか、なかなか難しいですけどね。そして練習のたび、なるべく全員に声を掛けるようにしています」

 頻繁にコミュニケーションを取りながら、その方法は相手目線で工夫する。部員1人1人を大切にしたいという、田山さんの優しさが感じられます。だからこそ部員と田山さん、そして部員同士の仲はとても良いようです。

「ときどき食事に誘うほか、1年に1回くらいはトライアスロンを完全に離れ、パーッとできるようなイベントを行いたいと思っています。例えば先日は、みんなでディズニーランドへ行きました。しかもサプライズで、1〜3年生にはどこにいくか秘密。撮影だと言って集め、ちょっと私が不機嫌になって見せたんですよ。そして、どうしよう……となっているタイミングで、ミッキーの耳をつけた4年生が登場。最初は何が起きたのか分からない様子でしたが、すぐに理解して歓喜の声が上がりましたね。あれは楽しかったな」

 筆者も大学時代は部活動に取り組んでいましたが、ここまで監督や部員との関わりは深くありませんでした。まるで家族のような関係に、お話を聞いているだけで羨ましく感じてしまいます。こうした関係があればこそ、お互いに信頼関係が生まれるのでしょう。

「田山の下で4年やってきて良かった。そう思ってもらえるようになりたいですね。それは、決して競技だけに限ったことではありません。実際、トライアスロンを辞めた後の方が、人生は長いわけですから。例えば声の掛け方や気の遣い方など、競技以外でも役に立つことをたくさん伝えたいと思っています。実際、いつも私の娘の誕生日になると、部員たちがプレゼントをくれるんですよ。私もみんなにプレゼントを贈っているんですけど、こういう気遣いって本当にうれしいですよね。お礼が徹底できて、自分の思いをちゃんと言葉で伝えられる。そういう、人生で役に立つことを少しでも学んでもらえたらと思います」

 これは、田山さん自身が競技者として引退を決め、その後の人生を目指す身だからこその思いかもしれません。その表情からは、まるで先生あるいは親のような気持ちすら感じ取れました。とはいえ、もちろんトライアスロン競技部の監督として、部員それぞれの選手人生にもしっかり目を向けられています。

「仲間はもちろん大切ですが、やはりコーチや監督との出会いは非常に重要です。そもそも私のように、その人との出会いがなければ、トライアスロンを始めることすらあり得ないことさえあるでしょう。ですから私はトライアスロンで夢を実現させたいとやってくる部員たちに対して、そのための道を照らしてあげたいと思っています。でも、決して手を引いて案内することはありません。道を選ぶのは自分自身。あくまでお月さまのように、真っ暗な中でも道を照らし出し、前へ進む手伝いができれば。そのためには私自身、今後もっと学びにも時間を割いていかなければいけませんね」

 指導の現場ではアクションカメラで水中撮影を行うなど、さまざまな手法を取り入れている田山さん。部員たちの強い思いを受け、それを全力でサポートしようという熱い気持ちが伝わってきました。

 まもなく部活から、初めて卒業生を送り出すとのこと。卒業生は実業団やプロとしての道を選んでおり、今後の活躍が期待されます。そして流通経済大学・トライアスロン競技部もまた、指導に専念する田山さんのもとでどんな成長を果たしていくのか。今後の活動に、ぜひご注目ください。

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[プロフィール]
田山寛豪(たやま・ひろかつ)
1981年生まれ、茨城県出身。流通経済大学卒。流通経済大学 体育指導センター事務局(総務部付)にて勤務。3歳から水泳を始め、高校時代にトライアスロンへ転向。国内外にて数多くの大会へ出場し、2004年アテネから2016年リオまで、4大会連続でのオリンピックの日本代表に選出。2014年から流通経済大学・トライアスロン競技部で監督を務めており、2017年の日本選手権優勝を機に引退を表明。今後は指導の場に専念する。

[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランニングクラブ、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com

<Text & Photo:三河賢文>

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