ランニング
フィットネス
2025年9月17日

ランニングで本当に痩せる?知らないと損する効果と正しい取り入れ方

「ランニング=痩せる」というイメージは根強いですが、実際には「思ったほど体重が減らない」という声も少なくありません。

実はランニングは短期での減量効果は大きくない一方、長期的には代謝や生活リズムを整えることで痩せやすい体づくりに役立ちます。その仕組みと効果的な取り入れ方を、スポーツドクター・樋口 直彦先生監修のもと解説します。

ランニングだけでは痩せにくい理由

ランニングは「痩せる運動」として広く知られていますが、実際の体重減少効果はどの程度あるのでしょうか。ここでは研究やカロリー消費量のデータから現実的な数字を確認します。

ランニングの消費カロリー

体重60kgの人が時速8km(ゆっくりランニング) で30分ランニングすると、消費カロリーはおよそ230kcalです。これはご飯一杯分に相当します。

仮に30分のランニングを毎日続けると、1か月で約6900kcalを消費する計算になります。1kgの脂肪を落とすには約7000kcalの消費が必要なため、1か月ほどで1kg減量できる可能性があると言えます。

毎日走って1kgだけ!?そう感じる方も少なくはないのではと思います。

ランニングの減量効果

ある研究では、肥満女性を対象に週5回45分の有酸素運動を1年間続けた結果、体重は平均で2kg減少(*)しました。

1年間で2kgだけ?と思う方は多いと思います。しかし、劇的な変化ではありませんが、食事制限をしなくても着実に体重を減らせる点は注目できます。

*Adiposity changes after a 1-year aerobic exercise intervention(Nature

痩せない原因:消費カロリーより摂取カロリーが多い

消費カロリーや減量効果を見ると、「毎日走っているのに痩せない」理由は明確です。その大きな理由は、消費カロリー以上に摂取カロリーが増えてしまうことです。

ランニング後は食欲が高まりやすく、甘い飲み物や高カロリーの食事を摂ると、差し引きゼロになってしまいます。

このように、ランニングは「短期間で大きく痩せる」よりも「長期的に体重を管理する」目的に向いていると言えるでしょう。

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それでもランニングがダイエットに向く理由

ランニングは短期の体重減少には限界がありますが、続けることで脂質代謝の改善や生活リズムの安定など、痩せやすい環境を整える効果があります。

脂質代謝能力の向上

ランニングを継続すると、筋肉の中で脂肪をエネルギーとして使う力が高まります。これを「脂質代謝能力」と呼び、習慣的に走ることで燃焼効率が改善します。脂質代謝が向上すれば普段の生活でも脂肪が使われやすくなり、太りにくい体質へと変化していきます。

生活リズムの安定

ランニングを決まった時間に行うと体内時計が整い、睡眠や食欲のリズムも安定します。夜更かしや間食が減り、自然と余分なカロリー摂取を防ぎやすくなります。生活全体が整うことでダイエット効果も高まりやすくなります。

健康習慣の土台づくり

運動習慣を持つと「せっかく走っているのだから食事にも気をつけよう」と意識が変わります。ランニングを続けるうちに食事管理や筋トレなどのプラス行動が積み重なり、総合的に痩せやすい環境が整っていきます。

脳と心への効果も、ダイエットを後押しする

ダイエット目的で走る人が多いですが、ランニングは脳にも良い影響を与えます。血流が増えることで集中力や思考力が高まり、海馬が活性化して記憶力向上や認知症予防につながると報告されています。さらに、セロトニンやエンドルフィンなどの分泌によりストレスが軽減し、睡眠の質も改善しやすくなります。

こうした脳へのプラス効果は、ダイエットの面でも有利に働きます。ストレスによる過食を防ぎ、質の良い睡眠によって代謝が整い、結果的に無理なく体重管理を続けやすくなるのです。

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ランニングより自転車・水泳のほうが痩せる?

ランニング以外にも自転車や水泳は有酸素運動として人気があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。

消費カロリーの比較

体重60kgの人が30分間運動した場合の目安は次の通りです。

種目 消費カロリー(30分) 特徴
ランニング(時速8km) 約230kcal 短時間でも効率よく脂肪燃焼
自転車(時速20km前後) 約230kcal 長時間続けやすく関節への負担が少ない
水泳(クロール) 約300kcal 全身運動で消費量が多いが継続時間は限られる

水泳は1回あたりの消費が大きいですが、継続のしやすさではランニングや自転車に軍配が上がります。総消費カロリーを増やすには、自分のライフスタイルに合わせて続けやすい種目を選ぶことが大切です。

骨や関節への影響

ランニングは着地衝撃があるため骨が強化される一方、膝や足首の故障リスクが高まります。自転車や水泳は関節への負担が少なく、ケガを避けたい人やリハビリ目的の人に向いています。

コストや始めやすさ

ランニングはシューズとウェアがあればすぐに始められます。自転車は車体やメンテナンス費用が必要で、水泳は施設利用の制約があります。コストや手軽さを考えればランニングが最も取り入れやすい運動です。

効率よく痩せるランニングのやり方

ランニングの効果を高めるには、ペースや時間、頻度に工夫が必要です。ここでは基本的な走り方のポイントを整理します。

会話できるペースを意識する

脂肪燃焼を目的とするなら、心拍数が上がりすぎない「会話できるけれど少し息が弾む」ペースが理想です。体重60kgの人が時速8kmで30分走ると約230kcalを消費しますが、この強度なら継続しやすく、脂肪がエネルギーとして使われやすい状態になります。

短時間でも効果あり

理想は30分以上ですが、忙しい日でも10分程度走るだけで代謝が高まり、脂肪が燃えやすい体づくりに役立ちます。細切れの時間でも継続することが、最終的に大きな成果につながります。

頻度の工夫

痩せるためには「どれくらいの頻度で走るか」も重要です。健康維持なら週3〜4回、脂肪を減らしたいなら週4〜5回が目安とされます。毎日走る必要はありませんが、どうしても続けたい場合は軽めの日としっかり走る日を分けるなど、強度にメリハリをつけることがケガ予防と継続のコツです。

空腹時や朝ランの活用

食事前のランニングは体内の糖質が少なく、脂肪がエネルギーとして使われやすい状態です。特に朝食前のランニングは脂肪燃焼効率が高いとされます。ただし空腹でフラつく場合は、バナナやゼリー飲料など軽い補給をしてから走ると安心です。

さらに痩せる効果を高める方法

基本の走り方に慣れたら、強弱をつけた練習やHIITを取り入れることで脂肪燃焼効率をさらに高められます。

強弱をつけて走る

毎回同じスピードで走るのではなく、「ゆっくり走る日」と「少し速めに走る日」を分けると効果的です。普段のジョギングよりやや速いスピードを一定時間続ける走り方を「ペース走」と呼びます。

この方法を取り入れると心肺機能が鍛えられ、同じ時間でも消費カロリーを増やすことができます。強い負荷の日と軽めの日を交互にすることで疲労がたまりにくく、継続しやすいのも利点です。

HIITを取り入れる

短時間で脂肪燃焼を高めたい場合は、高強度インターバルトレーニング(HIIT)が効果的です。まずは 10分程度のジョグで体を温める ことから始めましょう。その後に「1分全力走走でも力を出し切れます。疲労物質を代謝しやすくなるため効率的に脂肪が燃え、安全面でも安心です。慣れてきたら休憩を短くすることで負荷を上げることも可能です。

【立ったままできる】痩せるならHIITトレーニング!8分間の脂肪燃焼メニュー

ランニングに関するよくある質問(Q&A)

Q:毎日30分走ると痩せますか?

A:体重60kgの人が時速8kmで30分走ると約230kcalを消費します。週3〜4回の継続でも十分効果がありますが、毎日続ける場合は疲労や関節への負担に注意が必要です。食事管理と組み合わせることで体脂肪を落としやすくなります。

Q:走る距離は何kmが目安?

A:初心者なら1回3〜5km程度で十分です。慣れてきたら5〜8kmを目安にしましょう。大切なのは距離よりも強度で、「会話できるけれど少し息が弾む」ペースを守ることが効果的です。

Q:外ランとランニングマシン、効果の違いは?

A:どちらも脂肪燃焼に効果があります。ランニングマシンは天候に左右されず、関節への負担も少なめです。一方で外ランは脚力や骨の強化につながり、風景の変化が刺激になりやすいです。ダイエット効果に大きな差はないので、続けやすい方を選ぶのが正解です。

Q:筋トレとランニング、どちらを先にやるべき?

A:腹筋を割る、体を引き締めたいといった目的なら「筋トレ→ランニング」が基本です。筋トレで糖質を使い切ったあとに走ると脂肪が燃えやすくなります。集中力の面でも、先に筋トレを行った方が効果的です。

Q:ウォーキング・ジョギング・ランニング、どれが痩せる?

A:消費カロリーはランニング>ジョギング>ウォーキングの順ですが、続けやすさは逆です。膝や体力に不安があればウォーキング、気軽に続けたいならジョギング、効率重視ならランニングと、自分の体力や目的に合わせて選びましょう。

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監修者プロフィール

なか整形外科京都西院リハビリテーションクリニック
院長 樋口 直彦 先生

なか整形外科樋口 直彦帝京大学医学部卒業後、いくつかの病院で勤務し、院長を経験後、2021年1月に医療法人藍整会 なか整形外科の理事長に就任。バレーボールVリーグ「サントリーサンバーズ」のチームドクターも務める。骨折治療をはじめ関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。

<Edit:編集部>