インタビュー
2018年5月21日

全日本女子バレーボールが導入した究極の練習マシン「ブロックマシン」とは?│デジタルでスポーツの勝利をつかむ #4〈バレーボール×デジタル 前編〉 (2/3)

「試作機で可能性を感じたのは、指とか手のひら、あと腕の素材です。手から腕にかけてが金属だとボールが当たったときの反発が強すぎるんです。それだと実際ブロックされたとき、ボールがどのくらい反発するかわからない。そこで研究室で人間の手の反発係数を計測していただき、係数が同等になる素材(ポリカーボネート、ウレタンゴム等)を1号機で導入できました」

 試作機を経て可動式1号機が完成する。試作機の1体分が横に3体並ぶ迫力あるマシンとなったが、3体となったことで別の問題も見えてきた。

「1号機では、3体同時に横移動してブロックするんですけど移動スピードが追いつかなかったり、重量がありすぎて床に負担をかけてしまったりと、可動させる以外の問題も出てきました」

 3体つながるってどういうこと? と思う人もいるだろう。先に写真を見ていただこう。これが、多くの課題を解決し現在稼働している2号機となる。

▲最新の2号機。横幅はコートの幅(9m)と同じくらい

 写真は、ブロックするべく腕がせりあがっている状態。稼働させるためのモーターは、各ブロックの下側に2つあり左右の動きを再現する。目の前でこのマシンが動くと、とにかく迫力がスゴイ。まさにピューっと移動する。

「横の移動スピードは、(開始から完成まで)最短が1.1秒です。センターのブロッカーが移動する速度は、世界トップレベルである1.1~1.4秒の間で設定できるようになっています。1.1秒の基準となったのは、アメリカ女子チームのブロックの動きです」

 しかもモーター音と金属が擦れる音が重なって大きな音も出る。選手たちは、最初に見たときどんな印象を持ったのだろうか。

「さすがに速度と音に一瞬固まってしまうこともあります。目の前で大きなマシンが、ゴーって動くと怖さも多少ありますよね。でも、すぐに慣れてもらえました」

 ここで、ネットの高さをおさらいしておこう。オリンピックなどの国際大会では、女子が「2m24cm」、男子は「2m43cm」である。ちなみに高校女子は「2m20cm」、高校男子全国大会で「2m43cm」となる。これを踏まえて読んでほしいが、世界レベルの男子のブロック完成時の高さは「約3m20cm」である。

「ブロックの最高到達点は、ブラジルの男子選手が3人そろってジャンプしたときで約3m20㎝です。ネットの外側にアンテナと呼ばれるポールがありますが、一番高いところが3m23cmあります。それと同等ということですね」

 大きなマシンが左右にものすごいスピードで移動し、3m以上の高さまでせり上がりスパイクをブロックする。その迫力を理解してもらえただろうか。

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