インタビュー
2018年5月24日

世界レベルを体感できる「ブロックマシン」。その仕組みと操作方法に迫る│デジタルでスポーツの勝利をつかむ #4〈バレーボール×デジタル 後編〉 (2/2)

 こだわりは、プログラムや操作UIだけでなく、ハード面にもある。前編でもふれたが、ブロックするための手と腕の部分の素材と色だ。反射係数を計算した素材を使用していることと、肌色のテーピングが巻かれていることがわかる。

「当初黒のテーピングでしたが、選手たちが瞬時に判断するとき黒だと目立ち過ぎました。いかに試合と同じ状況を視覚的にも作りだすか検討し、肌色のテーピングになりました。将来的にさらに人間に近づけることも検討しています」

ブロックマシンがもたらした成果と課題

 ブロックマシン導入後、どのような成果がみられたのだろうか。

「当初の目的である高いブロックを経験し、高さに慣れること。そして結果、スパイクの決定率を高めることです。高さへの対応として指先に当ててブロックアウトを狙うのか、意図した方向にボールを跳ね返らせるのか。日常的に世界レベルに触れていることで、選手たちの対応力がつき、高さへの抵抗感が確実に減りました」

 成果も見え始めたブロックマシン。今後どのような開発を進めていくのだろうか。

「今年の目標は2号機を調整し、全日本男子用に対応させます」

 男子は女子よりも世界レベルの練習相手を用意することが難しいそうだ。女子の場合は、日本人の男子を相手にすれば、世界レベルに近づけることができるが、男子相手では実際に世界レベルの選手を連れてこなければいけないためである。

「実は全日本男子の方が、世界レベルの練習が不足しているのが現実です。だから、ブロックマシンを男子でも使えるようにしたいという声は多かったんです。しかし、男子が使うためには、ブロックの到達点を高くしたり、ボールの勢いでマシンが壊れない強度・耐久性を持たせたりと課題が多く、現在もトライ&エラーを繰り返している段階です」

 2010年以降IT化が進んでいるバレーボールだが、今後どのような展開があるのだろうか。

「ブロックマシン以外では、ICTを活用してチームや選手の強化に結び付ける取り組みが始まっています。やはり日本人の体形、パワーは世界からみると劣る部分があるのでメンタル面からもサポートするんです。ブロックマシンで体感した高さ、世界レベルの選手の動きやスピードをヘッドマウントディスプレイを使って日常的に疑似体験できるようにする。何度も失敗したプレーを反復練習したり、世界のスピードを見続けることで慣れることが重要なんです」

 今後は、最先端技術であるAI(Artificial Intelligence/人工知能)、VR(Virtual Reality/拡張現実)、MR(Mixed Reality/複合現実)も積極的に取り入れトライしていくという。

 スポーツの中でもデジタル化をリードしているといわれるバレーボール。試合観戦するときは、ぜひブロックマシンを使った練習風景を思い出し、選手たちの強さの背景に想いをめぐらせてみるのもいいかもしれない。

▼前編はこちら

全日本女子バレーボールが導入した究極の練習マシン「ブロックマシン」とは?│デジタルでスポーツの勝利をつかむ #4〈バレーボール×デジタル 前編〉 | トレーニング×スポーツ『MELOS』

《取材・撮影協力》
◎公益財団法人日本バレーボール協会 https://www.jva.or.jp/
◎味の素ナショナルトレーニングセンター https://www.jpnsport.go.jp/ntc/Default.aspx

<Text:松田政紀(アート・サプライ)/Photo:小島マサヒロ>

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