プロサーファー大村奈央「今日はカッコよかったな。その感覚だけを頼りにしてやってきた」(前編)│サキドリ!ROAD TO 2020
本企画「サキドリ!ROAD TO 2020」では、今後の活躍が期待される注目アスリートにインタビュー。競技の魅力はもちろん、実際に各競技を楽しんでいる人へのヒントになる上達のコツやヒントに迫ります。
第1回に登場するのは、プロサーファーの大村奈央さん。13歳のときにジュニアの日本代表に選ばれてから12年連続で代表の座を守りつつけているだけでなく、世界選手権では5位に輝くなど名実ともに日本トップクラスの実力の持ち主です。そんな大村さんにサーフィンの魅力について伺いました。
海嫌いの少女がサーフィンにハマる!?
——大村さんはサーフィンを始めるまでは海が好きではなかったそうですね。
小さい頃から水泳をやっていたので水に入ること自体は全然問題なかったんですけれど、海って何か得体のしれないものが漂ってそうで(笑)。ゴーグルも基本的につけないからよく見えないし。だから、泳ぐならプールでいいかなって思ってました。
——そんな大村さんがサーフィンをやるようになったきっかけは?
11歳の頃に家族でハワイに旅行に行ったんですけれど、ワイキキビーチでサーフィンのスクールを開いていて、参加してみたらすごく楽しくて。それでやりたいなと思うようになったんです。
——それで帰国してから始めたんですか?
本格的に始めたのはその翌年からですね。うちの家族はみんなサーフィンの経験者じゃなかったので、どうやって始めればいいか誰もわからなかったんです。それでも私はサーフィンがやりたかったので、次の年にもハワイのスクールに参加して、あらためて自分の気持ちを確認して。それで帰国してから近所のサーフショップに行ってどうすればいいか聞いてようやく始めました。
——サーフィンデビューは一人で?
いえ、そのときは小学生だったので、両親のどちらかがいるときだけ海に行って練習する感じでしたね。次第に地元(神奈川県・鵠沼海岸)の人とかが声をかけてくれるようになって、それからは1人で行くようになりましたけれど。
——サーフボードは買ってもらったんですか?
13歳のときに自分専用のボードを作ってもらうまでは中古のものを使っていました。
——自分のボードが手に入ったときは感慨もひとしおだったんではないですか?
私の年代でサーフィンをやってる子って親が経験者のことが多くて、自分用のサーフボードを持ってる人が多かったんです。だから、みんなと同じようにマイボードを持てたのはすごくうれしかったですね。
——それからはずっと自分専用のサーフボードを使ってるんですか?
そうですね。でも、ボードによって調子の良し悪しが全然違うので、一度乗ってみてなんか違うなと思ったらすぐに変えてしまいますね。いいやつも毎日4時間とか乗り続けるのですぐに悪くなっちゃうし。普通なら1年とか1年半くらい使うと思うんですけれど、私は4ヶ月くらいしたら変えていますね。
——ボードを作ってくれている職人さんには特別なオーダーなどはしているのでしょうか?
私はしないですね。というか、よくわからなくて(笑)。大体の長さだけ伝えてあとはお任せしています。それで乗ってみてから、なんか遅いとか、ふわふわするとか、けっこう曖昧な感じで伝えて調整していくことが多いですね。
独学でサーフィンを学び、2年後には日本代表入り
——サーフィンをやり始めた頃はどうやって練習していたんですか?
ほとんど独学ですね。雑誌やDVDを見たり、地元の人の技を参考にしたりして。
——やり始めた頃だと吸収も早いから自分の成長も感じやすかったんじゃないですか?
自分ではそんなにわからなかったです。技の知識もなかったので。波に乗ってみて、今日はちょっとカッコよかったなくらい。その感覚だけでやってました。
——とはいえ、13歳の頃にはジュニアの日本代表入りをしていますよね。約2年でそこまでのレベルにたどり着けるのは驚きです。大会にも早くから出場していたんですか?
11歳の終わりくらいには出ていたと思います。
——最初から成績はよかったんですか?
全然! 最初の試合は1回戦負け。でも、それで火がついたというか。すごく負けず嫌いなので、いろんな大会に出るようになって、夏休みは毎週のように大会に出場していましたね。そのなかでいろんな技術が磨かれていったと思います。
——その後、17歳でプロデビューしていますよね。
もともとプロになるつもりはなかったんですよ。13歳のときに日本代表入りしてからは世界各地の大会に参加していたので。でも、進路を決めるときになって周りの友だちが進学したり就職したりと自分の進む道を決めているのを見て、自分も何かプロ資格を取った方が目標が明確になるかなと思って取得したんです。
——13歳の頃から世界を相手に戦っていますが、日本と世界の差を感じることはありますか?
もちろん日本にもたくさんいい選手はいますが、層の厚さは違うかなと思います。いろんな国からトップレベルの選手が集まってくるので。
——大村さんにとってのいいサーフィンっていうのはどういうものなんですか?
自分はけっこう力強さがあるサーフィンが特徴なので、その力強さをちゃんと発揮できるようになりたいなと思っています。
⇒後編に続く
プロサーファー大村奈央「二度と同じ波は来ないから、いつもワクワクできる」(後編)│サキドリ!ROAD TO 2020
[プロフィール]
大村奈央(おおむら・なお)
1992女子プロサーファーとして世界ツアーを中心に活動中。13歳でジュニア日本代表に選ばれてから12年連続で日本代表に。17歳でプロ試験に合格と同時に、JPSA2010年ルーキーオブザイヤー、年間グランドチャンピオンも獲得。また2013年、2014年の世界選手権では日本人最高位となる5位に入賞、2017年も7位入賞と第一線で活躍を続けている
<Text:村上広大/Photo:今井裕治>