ウェルネスフード
2023年9月2日

ごま油の香り、思った以上にメリットがありそう。脳科学視点の研究で明らかに (1/3)

ごま油好きに朗報です。竹本油脂株式会社とNTTデータ経営研究所は、脳科学的なアプローチに基づき、ごま油の香りが食欲や空腹感、記憶に与える効果を検証する国内初の実験を行いました。

その結果、ごま油の香りが食欲を増進し、記憶形成を促す可能性が示唆されました。

ごま油の健康効果は知られているが……

ごま油の健康効果は、主に抗酸化作用やゴマリグナン類による活性酸素の抑制などが関与していることが分かっています。

しかしながら、ごま油の特徴的な「香り」に関しては、食欲増進などの経験的な言及はあるものの、定量的な研究は行われていませんでした。

このため、今回の研究では「嗅覚」に着目し、ごま油の香りが健康に与える影響を科学的に探求する実験を実施しました。目的は、ごま油の香りに関わる新たな魅力と可能性を明らかにすることでした。

研究の結果、食欲と空腹感が増進する可能性

① ごま油の香りによって食欲と空腹感が増進する可能性が示唆された

香り提示前後で空腹感の変化を比較した結果、ごま油を嗅いだグループでは空腹感がもっとも増加しました。この結果は、ごま油の香りが食欲を増進する効果があることを示唆しています。

最近の研究では、空腹感が戦略的な意思決定のクオリティ向上に寄与する可能性(注1)や、食欲を刺激することで創造性が増進すること(注2)が示唆されています。

これにより、食欲が単なる食事を促す欲求だけでなく、よりポジティブな影響をもたらす可能性が示唆されています。

(注1)[de Ridder, D., Kroese, F., Adriaanse, M., & Evers, C. (2014). Always Gamble on an Empty Stomach: Hunger Is Associated with Advantageous Decision Making. PLoS ONE, 9(10), Article e111081.]
(注2)[Ruan, Z., & Liu, N. (2020). Create in the Snack Mountain:appetite stimulus improves creativity. Current Psychology.]

これらの現象の背後にあるメカニズムは未だに明確ではありませんが、空腹時に食欲が刺激されることで脳全体の代謝が活性化されることが知られており、同様のメカニズムが関与していると考えられます。

脳科学的な研究の進展により、食欲や空腹感の増進がもたらすポジティブな効果はさらに理解が進むと期待されます。

② ごま油の香りが発生中、その間に生じた事象の記憶の定着が促される

ごま油の香りが発生する状況下で、出来事の記憶の定着が促進される可能性が示されました。

香りの漂う空間で他人と共に食事をする際、食事中に他人が話した内容を思い出す「想起実験」を行い、ごま油群ではもっとも多くの情報が記憶されました。

これは、ごま油の香りが食事中の発話内容の記憶を強化する可能性を示唆していると考えられます。

過去の研究では、食品の特性が人間の記憶に影響を与えることが報告されており、この要因の一つとして「グレリン」という食欲制御ホルモンが考えられます。

グレリンは空腹時に胃から放出され、食品と関連づけられた情報を記憶する脳部位である海馬に作用することで、記憶プロセスに影響を与える可能性があります(注3)

注3 [Hsu, T. M., Suarez, A. N., & Kanoski, S. E. (2016). Ghrelin: A lin k between memory and
ingestive behavior. Physiology & Behavior, 162, 10 17.]

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