「ファスティングは意味がない」ってホント?成功の鍵は“回復食”にあり![医師監修]
ダイエット方法や食べすぎリセットとして、行っている人も多い「ファスティング」。本当に瘦せるのか? 自己流で行う危険性などは? 栄養療法専門クリニックであるみぞぐちクリニック院長・溝口徹先生に伺いました。
改めておさらい! ファスティングとは
ファスティング(断食)は、古くから修行の一環として行われてきました。
一定期間、食事を断ちデトックス機能を高めることで美容やダイエット、体質改善などさまざまなメリットがあります。
近年では研究が進み、健康に効果的という論文も増えてきており、健康法や美容法として手軽に取り組まれる方が多くなっています。
ファスティング最大のメリットは「オートファジーのスイッチが入る」こと
最大のメリットは“オートファジー”のスイッチが入り、体内のリサイクル機能が効率よく回るようになることです。
私たちの体は、不要になった細胞を捨て(分解)、新しい細胞を作り直す(合成)作業を毎日行っています。その中で、再利用できるものはリサイクルし、再度体の材料にします。このリサイクルすることを“オートファジー”と言います。
オートファジーが効率よく働くことで、体の回復や修復するスピードを上げることができるのです。
その他にも、胃腸をはじめとする内臓が消化・吸収をお休みするので、デトックスや腸内環境が整い、排便がスムーズに。また集中力が増したり、肌荒れの改善やアンチエイジングが期待できるなど、ファスティングにはメリットが多くあります。
「ファスティングは意味ない」ってホント? あるポイントを押さえないと逆効果になることも!
オートファジーやデトックスなどメリットがあるファスティングですが、やり方を間違えると太りやすくなることも。
また、もともとタンパク質の貯金が少ない人は、免疫に関係するタンパクも下がってしまい風邪を引きやすくなるなど、逆効果になってしまう場合もあります。
ファスティングを成功させるには、ファスティング終了後の回復期の食事内容が成功を左右します。くわしく解説していきます。
ファスティングの効果を落とす“残念なパターン”
前述したようにリサイクル機能が活発になるため、ファスティング後の食事内容が大切なポイントとなってきます。
ファスティング後は、リサイクル機能が活発になっているため、少しの栄養で体が機能する状態になっています。
通常の食事量に戻すとこれまでより栄養が多く入っている状態になり、太りやすくなってしまいます。
とくにオートファジーのスイッチはインスリンが関わっているので、インスリンが必要になる糖質の多い食事をすると太りやすくなり、ファスティングの効果が落ちてしまうのです。
ファスティングの正しいやり方とは。自己流でやっていい?
ファスティングの基本の流れは以下の通り。
- 準備期間
- ファスティング
- 回復期間
- 通常の生活
ファスティングのやり方はさまざまありますが、どの方法もファスティングを行う数日前より準備期間を作ってからファスティングに入り、ファスティング後は回復期間を経て通常の生活に戻っていきます。
長期間でのファスティングは専門の機関で行うか、専門知識を持ったトレーナーの指導のもと、行ってください。
ご自分でされる場合は、数時間のファスティングや1~3日程度の短期間がおすすめです。
ファスティング中の飲み物
ファスティング中は、専用のドリンクを飲む方法や、水だけを飲む方法などがあります。
中にはブラックコーヒーもOKという方法もあるようですが、私の見解としては、できるだけカフェインは避けたほうがよいかと思います。
市販の酵素ドリンクで自己流ファスティングしてもいい?
専用施設でファスティングを行う人は少なく、専用の酵素ドリンクを使用し、ご自分でファスティングに取り組まれる人が多いと思います。
その場合は、先ほど説明したオートファジーの仕組みを見るに、糖質の割合が低い酵素ドリンクがおすすめです。
成功の鍵を握る“ファスティング後の食事” 回復食はなにがおすすめ?
回復期は、糖質に依存していた代謝から、脂質のケトン体で代謝する“ケトン体質”になっている状態なので、血糖値を急激に上げないようにするのがポイントです。
回復食は、重湯やおかゆ、スッキリ大根など消化のいいものから始めましょう。油ものやお肉などは避けます。
脂質は、消化吸収の早いアマニ油やえごま油を少量から足していきましょう。徐々に慣れてきたら出汁やボーンブロスなどもおすすめです。
その後も、血糖値を急激に上げない糖質を控え、良質の脂質を増やす食事を続けると、ケトン体質をキープすることができます。
ファスティングの危険性も知っておこう。考えられるデメリットとは
前述の通り、回復期の食事を間違えると太りやすくなる、免疫が下がり風邪を引きやすくなるなどが考えられます。
また普段から糖質の多い食事の人は、ファスティング中低血糖の症状が出やすくなり体調を崩す可能性があります。
ファスティング効果が出やすいタイプ? 向いているかチェックする方法
一回分の食事を抜いてみて集中力が増す、調子がよくなる人は、ファスティングの効果が出やすい方です。
反対に食事を抜いて具合が悪くなる方は、糖質への依存が強く、ファスティング中に起こる低血糖の状態を防ぐことが難しいので、ファスティングには向いていません。
ファスティングとオートファジー、断食……何が違うの?
どちらも同じ意味として捉えて問題ないと思います。
どちらかというと断食は宗教や信仰のイメージが強く、ファスティングは健康法としてのイメージが強いかと思いますが、どちらも一定期間食事を断つことを指します。
オートファジーは、ファスティングや断食をして得られる効果の結果と考えるとよいでしょう。
著者プロフィール
溝口 徹(みぞぐちクリニック院長)
神奈川県生まれ、1990年 福島県立医科大学卒業。
横浜市立大学医学部付属病院、国立循環器病センター勤務を経て、2003年に日本初となる栄養療法専門クリニック新宿溝口クリニック(現:みぞぐちクリニック)を開設。
精神疾患、発達障害、不妊治療、低血糖症、疲労感、自律神経失調症など栄養不足が関係している悩みに幅広く対応している。現在は医師向けの栄養療法のセミナーなども行っている。通常の血液検査の見方とは異なり、病気の有無はもちろん栄養が不足する事で起こる小さなSOSを見つけ治療していく。薬剤を使用しない為、妊婦さんやお子様にもおすすめ。
みぞぐちクリニックHP https://mizoclinic.tokyo/
<Edit:編集部>