マインドフルネス瞑想とは。どんな効果がある?やり方は?専門家に聞いてみた (2/2)
身体が感じていることに意識を向けて欲しい
――簡単にマインドフルネスを実践するおすすめの方法があれば、紹介していただけますか?
簡単なのは、ただ呼吸に注意を向けるという方法ですね。目を閉じて、楽な姿勢をして、「呼吸の感覚」を認識するんです。一番わかりやすい「呼吸の感覚」はお腹が膨らんだりへこんだりする感覚でしょうか。注意がそれることもありますが、むしろそれは自然なことなので、「ああ今注意がそれたな」ということに“気づいて”意識を呼吸に向け直すというのが重要です。
「三分間呼吸空間法」というプログラムもあります。最初、身体の感覚に意識を向けて、今自分の身体がどんな状態かを感じて、次に自分の感情にどんなことが浮かんでいるかを意識して、最後に自分の思考に何が浮かんでいるかに意識を向ける。これを最初の一分間でやって、次に呼吸に注意を向けて一分間、最後にまた全身に注意を向けて一分間やります。
あとは「葉っぱのエクササイズ」でしょうか。頭の中に川をイメージして、自分の頭に浮かんでくる言葉を川に流れる葉っぱに乗せて、そのまま流していくのを観察するというプログラムです。自分の浮かんでくる思考を葉っぱに乗せて、ただ観察するという練習ですね。詳しくは、早稲田大学の熊野先生のご著書をご覧いただくと良いかと思います。
――「注意を向ける」という感覚を、もう少しわかりやすく説明すると?
僕の場合、よく「身体の感覚を味わってください」と言いますね。今自分が体験している感覚に意識を向ければいいんです。それが「何も感じない」という感覚でもいいですから。
――マインドフルネスのプログラムはどの程度行うといいのでしょうか?
通常のプログラムだと、8週間、ほとんど毎日40分ほどのワークを行うなんていうこともありますが、僕がアスリートに教えるときは、10分とか、長くても15分くらいでやってくださいと言っています。毎日練習した方がいいことはいいのですが、「必ず毎日やらなければならない」と思うと続けづらくなるので、そこは柔軟に対応していいのではと思っています。
ただ、試合直前だけやったりしても、おそらく効果はありません。やはり習得するものであり、継続したトレーニングが必要ですからね。一定期間は専門家の指導が必要だと思いますが、一度習得してしまえば、本人が自分の専門家として、自分だけでできるようになることも、マインドフルネスや瞑想の魅力です。
紹介していただいたマインドフルネス関係の書籍(英語版)
本来持っている実力を発揮したいと思っている人に向いているかも?
マインドフルネスは、雨宮先生のお話しにあった通り、スポーツ分野でも効果が認められているもののようです。漫画のように実力が劇的に向上するかというと、そういうものでもなさそうですが、常に自分の本来の実力を発揮したいという人に向けての可能性を感じました。興味を持った人は、まず紹介していただいた簡単な練習から取り組んでみましょう。
[プロフィール]
雨宮怜(あめみや・れい)
筑波大学体育系・特任助教、臨床心理士。1989年、茨城県生まれ。筑波大学大学院博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員DC2、筑波大学体育系研究員などを経て、筑波大学体育系・特任助教に。専門は「健康と実力発揮のためのマインドフルネス・プログラムの開発と実践」「アスリートのバーンアウトをはじめとしたメンタルヘルスの問題」。筑波大学体育系アスリートメンタルサポートルーム相談員も務める。「スポーツ競技者のパフォーマンス低下を抑制するマインドフルネスの役割」(心理学研究)、「スポーツ競技者のアレキシサイミア傾向とバーンアウトに対する抑制因としてのマインドフルネスの役割」(スポーツ心理学研究)、「マインドフルネス」(体育科教育)など、マインドフルネスに関する学術論文を多数執筆している。
<Text & Photo:大久保徹(H14)>