「ティーバッグのお茶」って栄養あるの?緑茶の効果を期待して愛飲している編集部員の素朴なギモン
この記事で緑茶は脳疲労にイイと聞き、よく飲むようになりました。免疫力アップにも役立つとか、緑茶に含まれるカテキンやテアニンがナントカ、カントカ(忘れました)……、今も緑茶のティーバッグを味わっていますが、ふと思ったんですよね。急須で入れた緑茶と、このお手軽ティーバッグ、同じ栄養が入っているのだろうか、と。
夏の麦茶のときも思いました。ヤカンで煮だした麦茶と、ティーバッグの麦茶だと、栄養的にどれくらい違いがあるのだろうか……。
このギモンを解消するため、大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック院長の田村卓也先生にお話を伺いました。
ティーバッグのお茶って、そのお茶本来の栄養は残っているのでしょうか。急須やポットで入れたお茶のほうが、栄養が残っていますか?
両者の違いを、さまざまな視点から見ていきます。
製法と抽出の面での比較
ティーバッグのお茶は、茶葉をCTC(Cut, Tear, Curl)という方法で細かく粉砕し、均一な大きさに加工した後、専用の紙で包装します。
茶葉が細かく刻まれているため水との接触面積が大きく、短時間でお茶の成分を抽出できます。
一方、茶葉は、お湯により茶葉が徐々に開いていく「葉の開き」という段階があります。この過程で茶葉は本来の形状を保ちながら、成分を緩やかに溶出させていきます。
そして、カテキン類の溶出、アミノ酸類の抽出、そして香り成分が放出されます。この緩やかな過程により、より複雑で豊かな味わいが生まれます。
味の面での比較
ティーバッグでは、速やかな抽出によりカテキン類の濃度が高くなりがちで、時に苦味が強くなる傾向があります。
一方、茶葉からの抽出では、よりバランスの取れた味わいが特徴です。
栄養面での比較
栄養面でも、両者に明確な違いが見られます。
アミノ酸(とくにテアニン)に関しては、茶葉からの抽出のほうが優位です。ティーバッグでは短時間での溶出に留まりますが、茶葉からはたっぷりの量が緩やかに溶出し、より強いリラックス効果が期待できます。
ビタミン類についても、ティーバッグだとどうしても加工時の損失が避けられず、水溶性ビタミンが溶け出してしまいます。しかし茶葉だと栄養価の保持が良好で、とくにビタミンCの保持率が高く、抗酸化成分も豊富です。
香りの面での比較
香り成分においては、茶葉が明らかに優位です。
ティーバッグでは加工時に一部の香り成分が失われ、比較的単調な香りとなりますが、茶葉では複雑な香りの展開を楽しむことができます。
どちらもライフスタイルで使い分けるとよい
ティーバッグは手軽さ、抽出時間の短さ、均一な味わい、携帯性の良さが魅力です。一方、茶葉は豊かな風味、高い栄養価、複数回の淹れ直しが可能という利点があります。
ティーバッグはオフィスでの使用や急いでいるとき、大量に提供する場合に。茶葉は、ゆっくり時間をかけて楽しみたいとき、健康サポートを期待する場合、お茶の風味を十分に堪能したい場合に活用するとよいでしょう。
栄養面では茶葉に優位性が認められますが、現代の忙しい生活スタイルを考えると、ティーバッグの利便性も無視できない価値を持っています。
ちなみに……「麦茶」もティーバッグより煮出したほうが栄養価が期待できる
最後に、麦茶についてもコメントいたします。
麦茶は大麦を煎って作られる日本の伝統的な飲み物で、ビタミンB群、ミネラル類、ポリフェノールを含むノンカフェインドリンクです。
ティーバッグが普及していますが、ヤカンで煮出すと、時間をかけて大麦の成分がたっぷりと抽出されます。デンプンの糊化やアミノ酸、糖類がゆっくりと溶け出し、深い香ばしさとまろやかな味わいが楽しめます。
鉄製のヤカンを使用する場合、調理過程で鉄分がわずかながら溶出し、栄養価が向上する可能性もある点です。
一方、ティーバッグは粉砕された麦を使用するため、短時間での抽出が可能です。すっきりとした味わいと手軽さが特徴ですが、栄養面では煮出し法に比べてやや劣ります。
回答者プロフィール
大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック院長 田村卓也
日本外科学会認定外科専門医
JATEC(日本外傷診療研究機構)コース修了
日本内視鏡外科学会技術認定医(大腸)
<Edit:編集部>