世界と競うこと、日々の暮らしを生きること。杉山愛に学ぶアスリートのメンタル、壁の乗越え方 <Vol.3> (1/2)
テニスプレイヤーとして長年世界のトップを駆け抜けたのちの引退、続く人生でもテニスと関わり続けていくことを選んだ杉山愛さん。母として、指導者として、杉山さんのヴィヴィッドなライフスタイルは世代を越えて注目を集めています。
アスリートとして世界と戦ってきた現役選手時代から、引退後の生活にも通じる「壁」「課題」の乗り越えは同じ社会に生きる私たちにたくさんのヒントをくれました。
《杉山愛さんインタビュー》
・[Vol.1]トップアスリートとして、女性として目一杯に生きる。杉山愛を作ったもの
・[Vol.2]元アスリートの人生設計、礎となった「親子」の関係。杉山愛が描く新たなライフスタイル
日々積み重ね、追求し続ける思い
ーー杉山さんの、スランプや課題を乗り越えていくメンタルの強さは、アスリート以外の人にとってもヒントになることが多いように思います。
私の場合は世界中を転戦することで強い精神性が培われてきた部分があると思います。それでも調子が良いとき悪いときの差は大きく、精神状態というのは心身、環境を写す鏡だと思います。
そういった意味でもメンタルのあり方というのは、自分の受け取り方ひとつで変えることができます。過酷なツアー先であっても、全ては、まさに「気の持ちよう」ひとつということを身をもって実感しました。
また、テニスの試合はトーナメント制ですので、最後に優勝した人だけしか勝って終わることが出来ません。優勝した選手以外は負けて終わるのです。ですがまた翌週には試合がありますので、短時間での気持ちの切り替えがとても重要になります。
ーーハードな世界ですね。
ですので、「忘れる」というすべを身につけるんですね。だんだんと嫌なことは切り捨てることができるようになり、次第にもの忘れも多くなって、まわりからは大丈夫?といわれるくらいになりました(笑)。
でも、人生って普通に生活をしていても思い通りにならないことばかりだと思うんです。だから「忘れる」以外にも、悪いことが起きても、「これはなぜ起こっているのか、これが意味しているものは何なのか」と冷静に考えるようにしています。気持ちのままに思い悩んでいると、自分の周囲まで悪いスパイラルに巻き込んでしまいます。何らかの理由があってこれが起こっているんだ、と考えられれば、有益な角度から問題を捉えられます。
ーー何か具体例はありますか?