
脂肪肝が進行しやすい季節は「秋」。その理由と対策を医師が解説
秋は、「脂肪肝」が知らない間に悪化しやすい季節です。猛暑を乗り越え、涼しく過ごしやすい気候のため、身体は回復に向かうように思えますが、実は代謝の低下や食習慣の変化が進行し、肝臓に負担がかかりやすくなるタイミングでもあるのです。
なぜ秋は脂肪肝が進行しやすい季節なのでしょうか。また対策は。用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニックの菊池真大先生が解説します。
秋になっても運動不足のまま過ごしてしまうと、脂肪肝リスクが高まる
近年の猛暑の長期化により、夏の間は屋外での活動が制限され、室内で過ごす時間が増えました。エアコンの効いた部屋は快適ですが、運動量が減ることで筋力や体力が低下し、基礎代謝も落ちてしまいます。
秋に入り、涼しくなってもそのままの生活スタイルが続いていませんか? 体力は自然に戻るものではなく、意識的に動かすことでしか回復しません。
秋は果物がおいしい季節。食べすぎると脂肪肝リスクに
秋は果物が豊富に出回る季節。ブドウ、カキ、リンゴなど、旬の果物はおいしく、食卓を彩ります。しかし、これらの果物には果糖が多く含まれており、過剰に摂取すると脂肪肝のリスクを高めます。
果糖は肝臓で直接代謝され、過剰なエネルギーが中性脂肪として蓄積されやすいため、注意が必要です。とくに、ジュースや加工品として摂る果糖は吸収が早く、肝臓への負担が大きくなります。
旬の果物を楽しむときは、量や頻度を意識しましょう。
秋に脂肪肝を進行させないためには? 医師が教える対処法
では、脂肪肝対策として行うとよいポイントとは。
「食べる量より動く量」運動を意識しよう
秋は「食欲の秋」とも呼ばれ、つい食べ過ぎてしまう季節でもあります。残暑疲れを癒すために栄養を摂ることは大切ですが、脂肪肝の予防という観点では、食べる量よりも「動く量」を意識することが重要です。
涼しい気候は、ウォーキングや軽い運動をしやすいタイミング。筋肉を使うことでインスリン感受性が改善され、肝臓の脂肪蓄積も抑えられます。
秋うつ対策にも運動が効果的
また、秋は日照時間が徐々に短くなり、気分が沈みがちになる人もいます。気分の低下は活動量の低下につながり、結果として代謝が落ち、脂肪肝の悪化を招くことも。
朝の光を浴びながらの散歩や、自然の中での軽い運動は、心身のリズムを整えるうえでも効果的です。
肝臓は悪くなっても症状が出にくい「沈黙の臓器」
脂肪肝は肝臓の病気です。肝臓は症状が出にくく、沈黙の臓器とも呼ばれる通り、季節の変化とともに悪化していても気づきにくいのが特徴です。
だからこそ、秋という季節は、生活習慣を見直す絶好のチャンス。以下2つの視点が、秋の脂肪肝予防の鍵となります。
- 涼しくなった今こそ、しっかり動く
- 旬の果物は量と頻度を意識する
秋は、身体を整える季節。夏の疲れを癒し、冬に備える準備期間です。肝臓に優しい生活習慣を意識しながら、季節の恵みを楽しむことが、健康への第一歩となるでしょう。
執筆者プロフィール
用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック院長
菊池真大(きくち まさひろ)先生
慶應義塾大学医学部卒業、東海大学医学部客員准教授、米国ペンシルバニア大学消化器内科元博士研究員、日本アルコールアディクション医学会理事。日本総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本内視鏡学会専門医、日本人間ドック健診専門医、日本病態栄養学会専門医、日本抗加齢医学会専門医
2024年秋、メタボとロコモを同時予防管理する未来志向型クリニックを東京・用賀の地に開業。https://www.youga-naika.com/
<Edit:編集部>