ウェルネスフード
2022年1月13日

医師監修:糖質制限ダイエット、基本の「き」。現代人は糖質を摂りすぎ? (1/2)

 健康志向が高まるなか、いろんな情報があふれる糖質制限ダイエット。やった方がいい、やらない方がいいなど、さまざまな論調があります。糖質は脂質、タンパク質と並び、人間に必要な三大栄養素の一つですが、それを制限するのはどうなのでしょうか。

 そこで今回は、ペインクリニック(痛み専門の治療)の医師で、食生活の改善・指導を積極的に治療にとり入れている清水泰行さんに、改めて糖質制限の基本からお話を聞きました。清水さんご自身、かつて食生活の乱れから体の不調に悩まされ、糖質制限ダイエットに取り組んで大幅減量に成功した経験をお持ちです(初出:2020年11月)。

間違った認識も多い?そもそも糖質とは

 ここで糖質を改めておさらいしましょう。糖質とは、人間の生命維持にために必要な3大栄養素の一つで、炭水化物の成分。体内で吸収され、活動するためのエネルギーになります。

 そのうえで、糖質制限(もしくは糖質制限ダイエット)と聞けば、何を思い浮かべるでしょうか。ご飯やパン、麺類の摂取を控える? それとも炭水化物そのものをカット? 巷に情報があふれすぎて、何が正しいのか判断がつきにくいのですが、清水さんは、明確な定義はないと説明します。

「海外では糖質制限という言葉はなく、低炭水化物と呼ばれている。世界的には1日130g以下である程度の合意が得られていますが、論文では低炭水化物の定義がまちまちで混乱しています。その結果が糖質制限に対する間違った認識を生んでいることがあるのです」(清水さん)

 ちなみに茶碗1杯(150g)のご飯に含まれる糖質は55gなので、130g以下は茶碗2杯分に相当します。ただ、論文によっては低炭水化物といっても、糖質200g以上の摂取でもOKとしているものもあり、その基準はかなり幅があって曖昧です。200gの糖質はご飯にすると茶碗4 杯弱に相当します。こうやって見ると、かなり炭水化物をとっていいことになりますが……。

「200gの糖質を摂取したうえで『糖質制限で結果が出ない』という論文を含めて議論されているので、間違った認識が広がってしまうのです。糖質制限の第一人者、内科医の江部康二先生が言われるスーパー糖質制限食では、1回の食事で10〜20g、1日30〜60gを基準としています」(清水さん)

 この場合、1食で口にできる炭水化物の量はご飯で1口か2口。1日に換算しても、ご飯茶碗1杯も食べられない計算になります。

「“スーパー糖質制限食”では、ご飯、パン、麺類といった炭水化物を一切摂らないことを推奨しています」(清水さん)

糖質過多は万病のもと

 私たちの食事はご飯やパン、麺類などの炭水化物が欠かせません。しかし、今の時代は飽食。

「体をさほど動かさずに3食炭水化物を摂り、さらに間食を摂るようでは明らかに糖質過多です。糖質を摂りすぎると肥満につながり、糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まることは知られていますが、そのほかにも多くの病気と関連しています。がんは糖質と深い関係があり、また、認知症も糖質過多によるものだと考えられています」(清水さん)

 ご飯やパン、麺類といった炭水化物から糖質をとると血糖値が上昇します。体は血糖値を下げようと膵臓からインスリンを分泌しますが、血中のインスリン濃度が高くなると脳内のインスリン濃度も高くなり、それの分解に忙しくなり、アルツハイマー病に大きな関連のあるアミロイドβの分解が滞り、脳に蓄積されて、認知症を引き起こすと考えられています。「日本人高齢者の食事パターンと認知症のリスク:久山研究」という日本の研究からも明らかにされているように、糖質の摂りすぎでアルツハイマー型認知症の発症リスクが高まってしまう可能性があるのです。

健康になりたいならまず糖質の摂取量を見直すべき

 糖質を摂ると急激に血中の血糖値が上がってしまい、それを下げようと常にインスリンが分泌されます。インスリンが常に分泌されていると、糖分をエネルギーとして体内に蓄えようとするため、太りやすくなってしまうのです。ダイエット目的で、糖質制限を行う人もいるかと思いますが、清水さんは、多くの現代人に糖質制限は必要だと言います。

「何百万年ある人類の進化の歴史のほとんどは飢餓との戦いでした。糖質を摂るようになったのはここ一万年のことで、米を食べるようになったのも、人類の長い歴史の中では最近のことです。そのため、糖質をたくさんとっても平気なようなメカニズムになっていないので、3食炭水化物を食べ、さらに間食で甘いものを摂ると、体に異変が起こってしまうのです」(清水さん)

 つまり、健康な人でも糖質制限をした方が、健康維持ができるというのです。既出の通り、糖質過多な生活は万病の元になりますが、だるい、突然のめまい、発汗、動悸、疲労感が起きる場合は機能性低血糖を引き起こしている可能性があります。機能性低血糖は、糖質を摂りすぎでインスリンが過剰に分泌され、血糖値が下がりすぎて低血糖になり、さまざまな不調が起きてしまうというものです。機能性低血糖はかかっていても健康診断で異常が見つからない場合もあるので、まずは糖質を摂りすぎていないか、自らの食生活を見直してみましょう。

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