「ビールを毎日飲んでも運動効果は落ちない。筋肉量も減らない」ってホント? (2/2)
どんな研究内容だったか
被験者
72人の健康な若い男女(うち女性は35人、年齢は18歳から40歳まで)
観察期間
10週間
研究方法
被験者はまず、HIITトレーニングを行うグループと、行わないグループに分けられた。トレーニングを行わないグループは、研究のために毎日アルコールを摂取。トレーニングを行うグループは、さらにビールを飲むグループと飲まないグループに分けられた。
期間中は1週間のうち5日、ビールを飲むグループのうち男性は約325mlのビール(アルコール度5.4%のラガー、あるいはウォッカのソーダ水割り)を昼食と夕食時に飲み、女性は同じ量のビールを夕食時だけに飲んだ。
HIITトレーニングは、1回40~65分のかなり激しいメニューを週2回行った。
研究結果
研究期間の前後に、被験者全員の体組成数値(体重、胴囲、ウエスト/ヒップ比、腹部脂肪、骨密度)を測定すると、HIITトレーニングを行ったグループは、ビールを飲むと飲まないにかかわらず数値にネガティブな変化はなかった。
どちらのグループも体脂肪が減り、筋肉量が増大するポジティブな効果が同程度にあった。
この研究から考えられること
「結論として、私たちの実験結果が示すことは、健康な成人は10週間のHIITプログラムによって体脂肪率の減少と筋肉量の増大を含む体組成指数が向上する。そしてそのポジティブな効果は、継続的なビールあるいは代替アルコール飲料の適量摂取による影響は受けない」
ところで、アルコールの適量摂取ってどれくらい?
上記の研究はスペインで行われましたが、彼らの「適量」は、日本人とどれだけ違うのでしょうか。
日本の厚生労働省では、「節度ある適度な飲酒」を以下のように定義しています(*2)。
「通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度である」
アルコール20gとは、大体「ビール中ビン(500ml)1本」にあたるとのこと。
研究で使われたビール(約325ml、5.4%)を計算するとアルコール量は約17.6gになりますので、男性被験者のように昼食と夕食の1日2回飲むと、厚生労働省が定義する適量をやや越えてしまいます。
女性被験者は1日1回の飲酒だったので、摂取アルコール量はそれを下回ります。それでもアルコール代謝に個人差があることを考慮に入れると、誤差の範囲と言ってよいのではないでしょうか。
トレーニング効果を損なわないアルコール量と、健康に害がないとされるアルコール量は、さほどかけ離れてはいないようです。
参考文献:
*1.
Beer or Ethanol Effects on the Body Composition Response to High-Intensity Interval Training.The BEER-HIIT Study
*2.
厚生労働省 e-ヘルスネット 飲酒
筆者プロフィール
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
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<Text:角谷剛>