インタビュー
2017年5月31日

トラブル時の感情も準備しておく!ビジネスにも活きる“本番に強いメンタル”の作り方(後編) (1/3)

 多くのトップアスリートのメンタルトレーナーとして活躍する清水利生さんに“本番に強いメンタル”の作り方を聞く今回のインタビュー。前編では「ポジティブ=メンタルが強いではない」「緊張するのは悪いことではない」など、印象的な言葉がいくつも飛び出しました。

 後編では実戦を想定した具体的なメンタルトレーニングの方法についてさらに掘り下げていきます。トラブル時に備えてどのようにメンタルの準備をすれば良いのか。そしてOKラインメンタルトレーニングとは?

 スポーツの試合はもちろん、ビジネスシーンなどさまざまな場面で訪れる緊張の一瞬。ここぞという場面で普段通りのパフォーマンスを見せたいと思う方にぜひ読んでいただきたい内容です。

前編:ポジティブ=メンタルが強いではない!【ビジネスにも活きる“本番に強いメンタル”の作り方(前編)】

完璧にプレーしようとせず、現実的なOKラインを設定する

――本番に強いメンタルを手に入れるために、「自分の感情と向き合い、その中でも行動を起こせるようにする」以外に注意する点はありますか?

完璧なプレーを求めすぎないことです。プレッシャーの掛かる時ほど、無意識のうちに完璧なプレーを追求しがちになります。例えばサッカーであれば、序盤から主導権を握って、こうやって相手の裏を取って、最後はこういう形で崩してゴールを決める……といった具合に、勝ちたいという気持ちが強い試合ほど理想的なプレーを思い描いていきます。不安を強く感じる時ほど「安心」したくなりこのような考え方になりがちになってしまうことはよくあることです。しかしこのように、試合前に良いイメージばかりを作って臨むのは非常に危険です。

――え、そうなんですか?むしろ試合に向けて良いイメージを作るのはメンタル的に良いことなのかと思っていました。

もちろん、良いイメージを持つのも大事ですが、一方で自分と相手の力を客観的に見比べて、現実的な想定をしておくこともお勧めしています。というのも、頭の中に良いイメージばかりを描いていると、いざ試合に入った時にそのイメージのギャップを生みやすくなってしまうからです。

完璧に近いプレーをイメージして試合に入ると、実際に起こっていることがイメージ通りではなかった場合、理想とは程遠い自分を目の当たりにしながらプレーすることになります。「こんなはずじゃない」と自己否定感が膨らんでしまい、パフォーマンスもどんどん下がってしまいます。

そこでリコレクトでは、今の自分に確実にできる「OKライン」を設定することを提唱しています。OKラインとはうまくいっている・いっていないの境界線のことです。例えば相手の方が実力が上なのであれば、その現実を認めた上で「ではその劣勢な中でも自分たちにできることは何か」を客観的に、且つ正確に把握しておきます。しっかりと現状を把握したなかで「それならこの試合では最低限これができればOK」というOKラインを決めておくんです。

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