インタビュー
2017年5月31日

トラブル時の感情も準備しておく!ビジネスにも活きる“本番に強いメンタル”の作り方(後編) (3/3)

対策として、「最悪の展開になったらどんな気持ちになるか」を事前にできるだけリアルに想定しておくと良いです。「多分頭が真っ白になるな」とか「すごく焦るな」とか「周りの目が気になって緊張するな」という風に具体的にイメージすることで感情の準備までしてしまうんです。そうすることで、いざ本番でそうなったときに「あ、実際頭真っ白になったな」という風に客観視できている自分が作れます。しっかりと感情まで準備しておけば、「アクシデントが起きて、自分は実際にこんな気持ちになった。こういうときはこういう行動をしよう」という風に、アクシデントが起こってからリカバリーする行動に移るまでがすごくスムーズになるんです。

――どんな感情を抱いても行動が起こせる、冒頭のメンタルが強い選手のパターンですね。

実は今日の話の途中で紹介したプレゼンが苦手だったビジネスマンの方には、まさにこの「トラブル時の感情も準備する」方法を実践してもらいました。それまでは「緊張して頭が真っ白にならないようにするにはどうしたら良いか」と、感情を打ち消そうと考えてらっしゃったのですが、もうそれは諦めてもらって(笑)「頭が真っ白になることも想定しておいて、じゃあその中でまずはカンペを見て、もう一度ゆっくり話すことから始めるようにしましょう」という風に、その時の感情も想定した上で、どういう行動を取るかを何度も確認しました。何か起きた時に「完璧に話してリカバーしようとする」のではなく、「カンペを見てゆっくり話す」というところまでOKラインを下げたんです。

――そうすることで自己肯定感を得られるようにしたんですね。

そうです。まず客観的にその状況や自らの感情を受け入れて、その中でやれることを1つ1つ積み重ねて、自己肯定感を得ることで自信を回復していくということですね。そうやってアクシデントが起きた状況から1つずつリカバリーしていく経験を積むことで自信が付いてくるんです。

――正しいメンタルコントロールを覚えればスポーツの場面だけでなくそういったビジネスの場面にも応用が利きそうですね。

はい。スポーツでも仕事でも、あるいはお芝居のような芸事などでも、本番で起こりうる心理状態は似ている部分もあると感じています。普段の感覚じゃなくなってしまって、できることもできなくなってしまうという点などはどんな場面でも起こり得ることだと思います。

今回紹介した「自分の感情と向き合い、その中でも行動を起こせるようにする」「OKラインを設定して、自己肯定感を重ねながら自信を得る」「最悪の展開になったときの感情を具体的にイメージしておくことで想定外を無くす」といった方法は、スポーツに限らずあらゆる分野で応用が利くと思います。本番で自分の力を発揮したい!という人は、ぜひ一度試してみてください。

前編:ポジティブ=メンタルが強いではない!ビジネスにも活きる“本番に強いメンタル”の作り方(前編)】

[プロフィール]
清水利生(しみず・としき)
1985年7月17日生まれ、山梨県出身。強豪・山梨県立韮崎高校サッカー部出身の元プロフットサル選手。現役時代はフウガドールすみだ、デウソン神戸(Fリーグ)でプレー。自身がOKラインメンタルトレーニングを受けていたことをきっかけに、引退後メンタルトレーナーに転身。現在は株式会社43Lab代表取締役として、さまざまなトップアスリートのメンタルトレーナーを務めている
【公式サイト】https://www.recollect.co.jp/

<Text:福田悠/Photo:@kazuend>

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