鶏胸肉100gのタンパク質量は?皮なし、皮つきでカロリーにも差[管理栄養士解説]
筋トレやダイエット中の方におすすめな食材のひとつ「鶏胸肉(鳥むね肉)」。ヘルシーなイメージがある食材ですが、タンパク質含有量や効果的な食べ方など、案外知らないことも多いのではないでしょうか。
鶏胸肉からは、タンパク質以外にも摂取できる栄養素がたくさんあります。それらの知識や、おすすめの組み合わせ食材、おいしく食べるコツなどを管理栄養士が解説します。ササミとの違いもレクチャー!
<このページの内容>
鶏肉の部位別タンパク質ランキング! 鶏胸肉のタンパク質含有量は?
鶏肉にはさまざまな部位があり、部位によってタンパク質の含有量は異なります。部位別のタンパク質含有量のランキングは以下の通りです。
若どり(生)100gあたりのタンパク質ランキング BEST10
|
部位 | タンパク質 (g) |
脂質 (g) |
炭水化物 (g) |
エネルギー (kcal) |
食塩相当量 (g) |
1位 |
ささみ |
23.9 |
0.8 |
0.1 |
98 |
0.1 |
2位 |
むね(皮なし) |
23.3 |
1.9 |
0.1 |
105 |
0.1 |
3位 | むね(皮つき) |
21.3 |
5.9 |
0.1 |
133 |
0.1 |
4位 | もも(皮なし) | 19.0 | 5.0 |
0 |
113 |
0.2 |
5位 | レバー | 18.9 | 3.1 |
0.6 |
100 |
0.2 |
6位 | 砂ぎも | 18.3 | 1.8 |
- |
86 |
0.1 |
7位 | 手羽元 | 18.2 | 12.8 |
0 |
175 |
0.2 |
8位 | 手羽(皮つき) | 17.8 | 14.3 |
0 |
189 |
0.2 |
9位 | 手羽(皮なし) | 17.4 | 16.2 |
0 |
207 |
0.2 |
10位 | もも(皮つき) | 16.6 | 14.2 |
0 |
190 |
0.2 |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
●もっとも高たんぱくなのはササミ、次にむね肉
鶏胸肉のなかでタンパク質含有量が多い上位3部位は、ささみが23.9g、むね肉(皮なし)が23.3g、むね肉(皮つき)が21.3gでした。
そして、意外に思われるかもしれませんが、焼き鳥や炒め物によく使われるレバーが5位で18.9g、砂肝が6位で18.3gと、内臓にもたくさんのタンパク質が含まれています。
ささみや胸肉には、筋肉の合成をサポートするビタミンB6や、疲労回復効果が期待されるイミダゾールジペプチドなど、たくさんの栄養素を一緒に摂取できます。
タンパク質だけじゃない! 鶏胸肉で摂取できる栄養素
鶏胸肉からは、タンパク質以外の栄養素も多く摂取できます。特徴的なものをピックアップしてみましょう。
ビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6、B12など)
鶏胸肉には、ビタミンB1、B2、B6、B12などのビタミンB群が含まれています。ビタミンB群はエネルギー代謝を高める働きをもつ栄養素です。
●エネルギーが不足すると……
私たちのからだは、タンパク質や糖質などの栄養素をもとに、生きるために必要なエネルギーを生み出しています。
ビタミンB群が不足すると十分なエネルギーが生成されず、疲れやすくなります。疲労感を解消して日々を元気に過ごすためには、ビタミンB群が欠かせません。
とくに、ビタミンB6はタンパク質の元となるアミノ酸の代謝に関わる栄養素で、筋肉の合成をサポートする働きがあります。
●抗ストレスビタミン「パントテン酸(ビタミンB5)」も多い
また、鶏胸肉にはエネルギー代謝や脂質の代謝に関わるパントテン酸も多く含まれています。
パントテン酸はストレスを和らげる働きをする副腎皮質ホルモンの合成にも関わり、「抗ストレスビタミン」とも呼ばれる栄養素です。
イミダゾールジペプチド
鶏胸肉に多く含まれているイミダゾールジペプチドは、筋肉中の疲労物質である乳酸の分解を促進し、筋肉疲労の回復をサポートする働きがあります。
筋肉に疲労が溜まった状態が続くと活性酸素が発生・蓄積し、体の老化現象が進みやすくなってしまいます。
イミダゾールジペプチドには活性酸素の発生を抑える働きがあるため、老化の抑制にもつながります。
鶏胸肉とささみの違いは「どちらも鶏の胸部のお肉」
鶏胸肉とささみ、どちらもタンパク質が豊富な部位でトレーニーからの人気も高い部位です。両者の違いをもう少し詳しく見ていきましょう。
どちらも鶏の胸部の肉で、高タンパク低脂質であっさりと淡白な味わいが特徴です。胸肉のなかでも、特定の部位から取れるものがささみと呼ばれます。
鶏の胸骨に沿って左右に1本ずつある小胸筋がささみであり、それ以外の大胸筋が鶏胸肉です。1羽から取れる量は鶏胸肉の方がささみより2倍以上多いため、鶏胸肉はささみよりも安く購入できます。
- 鶏胸肉・・・大胸筋。高タンパク低脂質、あっさりとした味。低価格
- ささみ・・・小胸筋。高タンパク低脂質、あっさりとした味
いつ食べればいい? 鶏胸肉を食べるタイミングは「運動後」と「朝」
鶏胸肉からタンパク質を効果的に摂取するための2つのポイントをご紹介します。
運動後や朝食時に食べる
運動後は筋肉が栄養補給と回復を行うため、筋肉へ送られるアミノ酸の量が増加します。その状態でタンパク質を摂取することで、筋肉の合成を促進できます。
というわけで、鶏胸肉は運動後45分間以内に食べるのがベストです。
ちなみに、食事で摂取したタンパク質は体内で分解されてアミノ酸となり、筋肉や内臓などの体の重要な組織を作ります。
●朝食時にタンパク質を摂ると代謝アップ
水分や栄養が不足している朝食時も、効果的な摂取タイミングです。朝食時にタンパク質を摂取すると、エネルギーに変換するために代謝アップが期待できます。
さらに、タンパク質に含まれるアミノ酸が抗ストレスホルモンのセロトニンや、やる気を引き出すドーパミンなどの分泌を促すため、朝から元気に過ごせるでしょう。
何グラム食べるといい? 鶏胸肉の量と頻度
運動の負荷の大きさや体重により異なりますが、ダイエットや軽い筋トレをしている人であれば、1日あたりのタンパク質摂取量は以下が目安です。
- 体重1kgあたり1.2〜1.5g(60kgの場合、72~90g)
1食あたりのタンパク質量に換算すると、20〜30g。
だいたい鶏胸肉100gです。これを1日3回食べることになりますね。
コンビニなどで見かける一般的なサラダチキンは100g前後ですので、1食あたりサラダチキンほどの鶏胸肉を食べるとよいでしょう。
鶏胸肉は「糖質」「ビタミン」を含む食材と組み合わせよう
いくら筋肉のためといっても、鶏肉ばかり食べるわけにはいきません。鶏肉の豊富なタンパク質を余さず筋肉の栄養とするためには、相乗効果が得られる食材の組み合わせがポイントとなります。
「ささみや胸肉は、タンパク質量がしっかり確保でき、低脂質かつ低価格なので、バルクアップを目指す人には強い味方です。しかし、鶏肉だけを食べていては摂取できる栄養素にも偏りが生じてしまいます」と語るのは、以前MELOSでサラダチキンについて解説してくれた、管理栄養士の深野さん。
では、タンパク質と組み合わせて食べたい栄養素と食材とは?
タンパク質×炭水化物(糖質)
糖質は控えるという人も多いですが、適量を摂ることが望ましいです。
血糖値の上昇によってインスリンが分泌されることで、アミノ酸が細胞へ取り込まれやすくなります。また、体内のグリコーゲンの低下によって筋肉が分解されるため、極端な炭水化物(糖質)の制限は控えたほうが、体づくりにメリットがあります。
●おすすめ食材
主食であるごはん・パン・麺など(雑穀米や麦飯、ライ麦パンなど精製度の低い穀類を選び血糖値を急上昇させないものが望ましい)
タンパク質×ビタミンD
ビタミンDはカルシウムの吸収を促すだけでなく、筋肉の合成を促す作用もあります。
●おすすめ食材
しめじ・しいたけ・まいたけ・エリンギなどのきのこ類
タンパク質×ビタミンB群
タンパク質の代謝をサポート。糖質や脂質のエネルギー代謝にもかかわり、特にB6はタンパク質の合成を促します。
●おすすめ食材
ビタミンB6を比較的多く含むかつお・まぐろ・とりささみ・バナナ・パプリカ・モロヘイヤ・アボカド・ブロッコリーなど
鶏胸肉をおいしく食べるコツは「下処理」か「コーティング」
鶏胸肉は筋トレやダイエットにいい一方で、パサつきが気になる人も多いのではないでしょうか。ここでは、鶏胸肉をおいしく食べる2つのコツをご紹介します。
下処理をしてから茹でる
鶏胸肉を茹でる場合、ブライン液に漬け置きしてから茹でることで柔らかく仕上がります。
●ブレイン液の作り方
鶏胸肉1枚に対して、水100mLに砂糖5gと塩5gを溶かす
最低でも1時間、余裕があれば一晩漬け置きするのがおすすめです。フォークで鶏胸肉に穴を開けると時短できます。
焼く際は片栗粉や薄力粉でコーティングする
鶏胸肉の表面に、片栗粉や薄力粉を満遍なくまぶして焼くことで、ジューシーな仕上がりになります。表面をコーティングすることで水分の蒸発を防ぐことができるためです。
編集部のコメント「これが一番柔らかくプリプリになりました!すぐできますし。雑なのでフライパンに鶏むね肉を置き、そこに片栗粉をまぶして焼いています」
鶏胸肉の効果を台無しにするNGな食べ方
筋トレやダイエットをしているからといって、鶏胸肉をいくらでも食べていいというわけではありません。鶏胸肉でタンパク質を摂取する際の注意点を2つご紹介します。
食べ過ぎるとタンパク質の過剰摂取につながる
鶏胸肉にはプリン体が多く含まれているため、摂取しすぎると腎臓に負担がかかり、尿酸が蓄積されやすくなります。痛風や腎不全などにつながる可能性があるため、食べ過ぎには注意しましょう。
また、腎臓は、血液を濾過して老廃物や余分な塩分を尿として体外へ排出したり、からだに必要なものは再吸収したりする重要な働きがあります。
鶏胸肉の食べ過ぎにより腎臓に負担がかかると、この調整機能がうまく働かず、ミネラルの過剰または欠乏のリスクもあるため注意が必要です。
カロリーが高くなる調理方法は避ける
唐揚げのような油を多く使う揚げ物ばかり摂取していると、カロリーの摂取量が多くなり過ぎる可能性があるため注意が必要です。
鶏ハムやサラダチキンなど、油をあまり使わずヘルシーな調理法を選びましょう。
監修・執筆者プロフィール
あんしん漢方薬剤師
山形 ゆかり
薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ入り、牛角・吉野家他薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信するMedical Health -メディヘルス-Youtubeチャンネルで簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。
<Edit:編集部>