ウェルネスフード
2024年3月26日

タンパク質の摂りすぎが招く「腸内環境の悪化」、すぐできる対策は?【専門家監修】

糖質を抑えてタンパク質を積極的に摂ることはトレーニーの間ではもはや常識になりつつあります。しかし、最近の研究で、タンパク質を摂る際には、同時にもう1つ意識的に摂るべき栄養素があるとわかってきました。それは「食物繊維」。日本食物繊維学会の理事長も務める青江誠一郎先生(大妻女子大学家政学部 教授)に解説頂きます。

タンパク質の摂りすぎで腸内環境が悪化 最新研究でわかったメカニズム

タンパク質は筋肉を作るために欠かせない栄養素です。しかし、特に肉から得られる動物性タンパク質の過剰摂取は、さまざまな健康問題を引き起こすので注意が必要です。

「タンパク質を摂りすぎると、腸内環境を思わぬ形で悪化させるリスクがあることが最近の研究でわかってきました」(青江先生)

実は、タンパク質が分解して生まれる「アミノ酸」が腸内環境に悪影響を及ぼすのです。

「アミノ酸には良いイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、小腸で吸収しきれなかったアミノ酸が大腸内に届いてしまうと悪影響を及ぼすことがあります。腸内細菌の中には、善玉菌悪玉菌のほかに、日和見菌という普段は特に何の働きもしない菌が一定数いますが、この日和見菌が有害な働きをしてしまうリスクがあるのです」(青江先生)

この日和見菌の中には、アミノ酸から毒素を作り出すものがいることが、腸内細菌の研究から分かってきたといいます。

「日和見菌の中には、アミノ酸を食べると“フェノール化合物”という毒素を排出するものが一定数あります。すると、悪玉菌となってしまうのです。その結果、腸内環境のバランスが崩れ、免疫力の低下や炎症の原因となり、思ったようなトレーニング効果が得られなくなってしまいます」(青江先生)

日和見菌を味方につける!タンパク質+食物繊維のすすめ

しかし、青江先生によれば、食事の際に食物繊維を積極的に摂るだけで、日和見菌が悪玉菌になるのを防げるそうです。

「最も意識すべきなのは、タンパク質と食物繊維の比率を考慮することです。動物性たんぱく質を摂る際に良質な食物繊維を多く含む食品も一緒に摂ることが有効な対策になります。

特に、β-グルカンという食物繊維は、善玉菌のエサになるだけでなく、日和見菌のエサにもなります。アミノ酸がエサとなった場合と異なり、β-グルカンがあると腸内環境の正常化に繋がる成分が作られるのでオススメです」(青江先生)

「もち麦」以外にもいろいろ 肉とあわせて摂りたい食物繊維

青江先生が注目するβ-グルカンは、様々な食材に含まれています。

「β-グルカンは、舞茸・しいたけ・エリンギなどのきのこ類、昆布などの海藻類、オートミールの原料になるオーツ麦にも含まれています。例えば、食堂でから揚げ定食を食べるときには、副菜に昆布の和え物を頼んだりしても良いと思います」(青江先生)

なかでも、食物繊維のスペシャリストがおすすめするのは「もち麦」。あえて「もち麦」を薦めるのには理由があります。

「もち麦は、最近、コンビニおにぎりなどでもよく使われていて仕事の合間にも手軽に摂れます。白米に混ぜて手軽に炊いて食べられて、味にもクセがありません。肉、魚どんなおかずとも相性が良いので、無理なく続けられます」(青江先生)

タンパク質の摂取量目安は、筋肉をつけたい人の場合、体重1kgあたり2gが1日の必要摂取量(体重60㎏の人なら120g)とされています。効率よく健康に身体づくりを進めるためにも、β-グルカンなど、良質な食物繊維も同時を意識してみてください。

監修者プロフィール

大妻女子大学家政学部 食物学科 食物学専攻 教授
青江誠一郎先生

日本食物繊維学会理事長。2010年、大麦の食物繊維とメタボリックシンドローム予防に関する研究で同学会賞を受賞。食物繊維のスペシャリストとして、TV・新聞等マスコミで活躍。

<Edit:編集部>